《じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出の魔導士、通訳兼相棒の新米回復士と一緒ずてツートな無詠唱魔で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】》マンツコグ・ビガビガジ・ホシコサ(眩しく輝く星に)
翻訳された文面を復唱する自分の聲が、震えた。
待って、いくらなんでもそんなバカな。
この呪文には見覚えがある、この詠唱は、この言葉の連なりは――!
「ミジコバエトガマニナリ、ズカンハムガシゴトガラサキサバカッツギ、ソステアズマスグネマル。エパダダシャベゴトバフデコニヨッテカガサリ、ジャッパサナッテツカラバシメスベシ」
【水は一瞬に過ぎ去り、時は古より未來に追いつき、そして安寧に鎮座する。不可思議なる言葉はペンによって筆記され、欠片となりて力を示すべし】――。
どくん、どくんとレジーナの心臓が鼓した。
この魔法は、魔法を齧る人間ならば誰でも聞いたことがある大魔法。
誰もがその名を追い、究(もと)め、そして心ならずも挫折することになるだろう――偉大なる叡智の欠片――。
この詠唱、この魔法は――!
レジーナが目を瞠ったのと、オーリンが言葉を発したのは同時だった。
「【暗夜終焉(オヴァン・デス)】――!」
これは――歴史に名高い闇の呪魔法――!?
その瞬間、レジーナは自分の目にしたものが信じられなかった。
必死に遁走するヴァロンの足元にゆらりと立ち上った黒い影が、まるで渦を巻くように足首に絡みつき、ヴァロンはもんどり打ってその場に転倒した。
それと同時にオーリンの立っている場所を中心として同心円狀の影が地面に広がり、そこからわらわらと亡者のような人の形をした影が湧き出し始めた。
気がれたような悲鳴とともに、寄りすがる影を蹴りつけようと足をばたつかせるヴァロンの抵抗虛しく、影は次々と人の形をし、手をばし腕をばしてヴァロンの周りに殺到し始める。
「あぁ……あああああああ―――――――ッッ!!」
臓そのものを振り搾るような悲鳴を発して、ヴァロンのがずぷりと影に飲み込まれた。
助けて、助けてくれ――! と涙さえ流しながら藻掻くヴァロンは、抵抗虛しく影の亡者に頭を摑まれ、地面に空いた漆黒の中へ引きずりこまれていく。
これが呪の力――通常の魔導士ならば、その習得はおろか、その真理の一端さえ垣間見ることもかなわないであろう、強大な魔法の姿。
この風采の上がらない青年が、最高位の魔導士ですら會得することが困難な「呪」の名を冠する魔法を行使してみせたことも驚きなら――Sランク冒険者を相手に満足に抵抗を許すことなく、いとも簡単に飲み込むその威力の禍々しさも、レジーナを戦慄に立ち盡くさせるには十分なものだった。
ヤバい、このままじゃ殺しちゃう――! レジーナは、闇に飲み込まれていくヴァロンを兇相のまま睨みつけているオーリンに言った。
「せっ、先輩! ヴァロンを――ヴァロンを殺す気なんですか!?」
オーリンは答えない。
返答がないことに苛立ったレジーナは立ち上がり、その背中を思い切りどついた。
「だっ、ダメですよ! ギルドの人間がギルドの人間を殺すなんて! ちょっと、聞いてるんですか!?」
それでも――オーリンは何も口にしようとしない。
レジーナの言葉が屆いているのかいないのかすら、その表からは全く読み取れなかった。
今やかろうじて頭だけ影の上に出ているヴァロンとオーリンを互に見遣り、レジーナはオーリンのローブを摑んで揺さぶった。
「先輩、オーリン先輩! お願いです、やめてください! 先輩はこんなことをしに王都に出てきたんですか!? こんなすごい魔法が使えるのに、誰だって助けられる魔法を使えるのに、その魔法で人を殺すんですか!」
レジーナは半ば涙ながらにオーリンのローブを摑み、腹の底からの聲で懇願した。
「落ち著いてって言ってるじゃないですか! 先輩、故郷のお父さんやお母さんに誓ったんでしょう!? いつか眩しく輝く星になってアオモリに戻ってくるって! だったらここで人殺しなんかになっちゃダメですよ! お願いです、どうか――どうかヴァロンを許してやってくださいッ!」
その一言に、フン、とオーリンが鼻を鳴らし、右手を降ろした。
途端に、ヴァロンを飲み込みかけていた影はゆっくりと消えてゆき――數秒後には、白目を剝いて失神したヴァロンだけが、えぐれた大地にぽつんと忘れ去られた。
ふわ……と、ヴァロンの一撃によって抉り取られた大地に、夜風が吹いた。
その夜風は、今まで死神であるように超然としていたオーリンの殺気を吹き散らしたようにじた。
「最初(しょで)から殺す気なんてねぇよ。――剣もねぐなった、自信もねぐなった。もうあいづは冒険者などできねぇべ。その方がいい」
それは確かに――レジーナはヴァロンを見た。
ヴァロンは白目をひん剝き、びくんびくんと痙攣しながら泡を吹いて失神していた。
よく見ればズボンの間にもなにかの染みがあって――間もなくここに駆けつけるだろう衛兵たちにそれを見られれば、まず王都に居続けることなどできはしまい。
凄い。本當にS級冒険者に勝っちゃった……。
レジーナは呆然とオーリンを見た。
普通の冒険者でも、ひとつ上のランクの冒険者を力づくで倒すのは並大抵のことではない。
そうだと言うのに、ひとつ上どころか數段上の、しかもS級冒険者相手に。
國でも名聲を馳せる魔剣士相手に満足な抵抗を許すこともなく、無傷で完勝してしまうなんて。
無詠唱魔法だけではなく、この世に使える人間がひとりいるかどうかの呪さえ簡単にってしまう魔導士――。
一度発見されれば大騒ぎになるであろうそんな人間が、誰からの注目を浴びることもなく、國でくすぶっていたという事実。
この樸訥な男の顔の下に隠されていた圧倒的な魔法の才覚、これをマティルダは見抜いていたのか――。
まだ半分理解の追いついていない狀態で、レジーナは飽くこともなくオーリンの背中を眺め続けた。
ふう、とオーリンは空に輝く星を見上げた。
そして、きらきらと瞬く星空を見上げて、ぽつりと言った。
「わの親や友達(きゃぐ)がらも、あの星コが見えでればいいなえ……」
その一言に、レジーナも思わず星空を見上げた。
月も出ていない日の夜空は格別にしく、何だかいつもより澄んで見えた。
「ツガルもんは誰でも強(じょっぱり)――そうだ、そうであったな。わも、なれるんだがな。あの星コみでぇに、きらきらまんつこぐ輝く魔導士さ――」
オーリンが獨り言のように言った。
レジーナはその背中に、遠慮がちに聲をかけた。
「先輩、あの……」
「ああ、わがっでる」
オーリンは靜かに振り返り、レジーナの顔を見た。
「王都でもう(ま)し頑張って(けっぱって)みねぇが、どいう話だべ? わがったって。お前(な)が思い出させてくれだんだど。なりだい自分さなる――お前の言葉はその通りださな。あの眩しく(まんつこぐ)輝くアオモリの星コさなれるまで……あどし(ぺっこ)、意地張って(じょっぱって)意地張って(じょっぱって)、王都で冒険者やってみるがなぁ――」
その一言に、わぁ、とレジーナは快哉をんだ。
「やっとその気になってくれたんですね! よかった! オーリン先輩、明日から私と二人、再出発ですね! よろしく!」
「ああ、俺(わ)の方からもお願いするびょん。えーと……レズーナだったが。よろすぐな」
レジーナの差し出した右手を、オーリンがガッチリと握った。
レズーナ、か。相変わらず凄く訛ってはいたけれど、初めて呼んでくれた私の名前。
それがなんだか気恥ずかしくて、レジーナはオーリンの顔から視線をそらした。
「へば(そうと決まれば)、さっさ(ちゃっちゃ)と帰らねばまいね。明日からは事務所探しだな。忙しくなるど――」
気恥ずかしかったのはオーリンも一緒であるらしい。
さっと踵を返して、オーリンは王都の中心の方へ歩き出した。
その後に続きながら、レジーナはずっと抱いていた疑問をぶつけることにした。
「ところで先輩、さっきの魔法ですけど――あんな大魔法、どうやって覚えたんですか?」
「何が?」
「だからさっきの呪魔法ですよ! あんなのこの國に使える人間が一何人いるか……凄いじゃないですか。一誰に教わったんです?」
「呪? 何喋ってるんだ、あれはアオモリでばリンゴ収獲用の魔法だね」
「は――?」
レジーナは目を點にしてオーリンを見た。
何がそんなに気になるんだろう、というような表で、オーリンが言う。
「リンゴもぎは人手が無ぇばまねがらな。あの魔法でいっぺんにもいですまうのへ。戦闘で使うのは確かに初めてであったども――あれはアオモリだばそごらの爺様(じさま)でも使える魔法だど」
「えっ、ええ――!?」
「他にもニンニク手れした(ちょすた)り、とうもろこし(キミ)植えだり、牛(ベゴ)集めたり――アオモリの人(ふと)が使う魔法でばそすた魔法ばっかりだ。こんなもんでいちいちたまげでだらアオモリではアホ(ホジナシ)って馬鹿にされんど、お前」
「な、何言ってるんですか!?」
どうもアオモリという場所は、我々の常識など全く通用しない土地であるらしい。
アオモリとは、そしてツガルとは、一いかなる魔境であるのだろう――。
こうして、ズーズー弁丸出しの魔導士、そしてクズスキル【通訳】を持つ新米冒険者、たった二人だけの冒険者パーティが、王都の片隅にひっそりと誕生した。
こごまで読んでもらって本當に迷ですた。
ここから短編の先の方さなります。
「おもしぇ」
「続きば気になる」
「まっとまっと読ましぇ」
そう思らさっていただげるんだば、下方の星コ(★★★★★)がら評価お願いするでばす。
まんつよろすぐお願いするす。
【WEB版】王都の外れの錬金術師 ~ハズレ職業だったので、のんびりお店経営します~【書籍化、コミカライズ】
【カドカワBOOKS様から4巻まで発売中。コミックスは2巻まで発売中です】 私はデイジー・フォン・プレスラリア。優秀な魔導師を輩出する子爵家生まれなのに、家族の中で唯一、不遇職とされる「錬金術師」の職業を與えられてしまった。 こうなったら、コツコツ勉強して立派に錬金術師として獨り立ちしてみせましょう! そう決心した五歳の少女が、試行錯誤して作りはじめたポーションは、密かに持っていた【鑑定】スキルのおかげで、不遇どころか、他にはない高品質なものに仕上がるのだった……! 薬草栽培したり、研究に耽ったり、採取をしに行ったり、お店を開いたり。 色んな人(人以外も)に助けられながら、ひとりの錬金術師がのんびりたまに激しく生きていく物語です。 【追記】タイトル通り、アトリエも開店しました!広い世界にも飛び出します!新たな仲間も加わって、ますます盛り上がっていきます!応援よろしくお願いします! ✳︎本編完結済み✳︎ © 2020 yocco ※無斷転載・無斷翻訳を禁止します。 The author, yocco, reserves all rights, both national and international. The translation, publication or distribution of any work or partial work is expressly prohibited without the written consent of the author.
8 119【第二部完結】隠れ星は心を繋いで~婚約を解消した後の、美味しいご飯と戀のお話~【書籍化・コミカライズ】
Kラノベブックスf様より書籍化します*° コミカライズが『どこでもヤングチャンピオン11月號』で連載開始しました*° 7/20 コミックス1巻が発売します! (作畫もりのもみじ先生) 王家御用達の商品も取り扱い、近隣諸國とも取引を行う『ブルーム商會』、その末娘であるアリシアは、子爵家令息と婚約を結んでいた。 婚姻まであと半年と迫ったところで、婚約者はとある男爵家令嬢との間に真実の愛を見つけたとして、アリシアに対して婚約破棄を突きつける。 身分差はあれどこの婚約は様々な條件の元に、対等に結ばれた契約だった。それを反故にされ、平民であると蔑まれたアリシア。しかしそれを予感していたアリシアは怒りを隠した笑顔で婚約解消を受け入れる。 傷心(?)のアリシアが向かったのは行きつけの食事処。 ここで美味しいものを沢山食べて、お酒を飲んで、飲み友達に愚癡ったらすっきりする……はずなのに。 婚約解消をしてからというもの、飲み友達や騎士様との距離は近くなるし、更には元婚約者まで復縁を要請してくる事態に。 そんな中でもアリシアを癒してくれるのは、美味しい食事に甘いお菓子、たっぷりのお酒。 この美味しい時間を靜かに過ごせたら幸せなアリシアだったが、ひとつの戀心を自覚して── 異世界戀愛ランキング日間1位、総合ランキング日間1位になる事が出來ました。皆様のお陰です! 本當にありがとうございます*° *カクヨムにも掲載しています。 *2022/7/3 第二部完結しました!
8 145Skill・Chain Online 《スキル・チェイン オンライン》
Skill Chain Online(スキルチェイン・オンライン)『世界初のVRMMORPG遂に登場』 2123年、FD(フルダイブ)を可能にするVRギアが開発されてからニ年。 物語の様な世界に期待し、いつか來ると思い続けてきた日本のゲーマー達は、そのニュースを見た瞬間に震撼した。 主人公・テルもその一人だった。 さらにそこから、ゲリラで開催された僅か千人であるβテストの募集を、瞬殺されながらもなんとかその資格を勝ち取ったテルは、早速テスターとしてゲームに參加し、すぐにその魅力にはまってしまう。 體験したSCOの世界はあまりにも、今までの『殘念ソフト』と言われていたVRゲームと比べて、全てにおいて一線を害していたのだ。 來る日も來る日もβテスターとしてSCOの世界にログインする。 SCOの正式オープンを向かえていよいよゲームが始まるその日。SCO専用の付屬部品を頭のVRギアに取り付けて仮想世界へとログインした。 ログインしてすぐ、始まりの街で言い渡されるデスゲーム開始の合図。 SCOを購入する際についてきた付屬部品は解除不可能の小型爆弾だったのだ。 『ルールは簡単! このゲームをクリアすること!』 初回販売を手に入れた、主人公を含む約千人のβテスターと約九千人の非βテスター約一萬人のゲーマー達は、その日、デスゲームに囚われたのだった。
8 51クリフエッジシリーズ第三部:「砲艦戦隊出撃せよ」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 銀河系ペルセウス腕にあるアルビオン王國は宿敵ゾンファ共和國により謀略を仕掛けられた。 新任の中尉であったクリフォードは敵の謀略により孤立した戦闘指揮所で見事に指揮を執り、二倍近い戦力の敵艦隊を撃破する。 この功績により殊勲十字勲章を受勲し、僅か六ヶ月で大尉に昇進した。 公私ともに充実した毎日を過ごしていたが、彼の知らぬところで様々な陰謀、謀略が行われようとしていた…… 平穏な時を過ごし、彼は少佐に昇進後、初めての指揮艦を手に入れた。それは“浮き砲臺”と揶揄される砲艦レディバード125號だった…… ゾンファは自由星系國家連合のヤシマに侵攻を開始した。 アルビオン王國はゾンファの野望を打ち砕くべく、艦隊を進発させる。その中にレディバードの姿もあった。 アルビオンとゾンファは覇権を競うべく、激しい艦隊戦を繰り広げる…… 登場人物(年齢はSE4517年7月1日時點) ・クリフォード・C・コリングウッド少佐:砲艦レディバード125號の艦長、23歳 ・バートラム・オーウェル大尉:同副長、31歳 ・マリカ・ヒュアード中尉:同戦術士兼情報士、25歳 ・ラッセル・ダルトン機関少尉:同機関長、48歳 ・ハワード・リンドグレーン大將:第3艦隊司令官、50歳 ・エルマー・マイヤーズ中佐:第4砲艦戦隊司令、33歳 ・グレン・サクストン大將:キャメロット防衛艦隊司令長官、53歳 ・アデル・ハース中將:同総參謀長、46歳 ・ジークフリード・エルフィンストーン大將:第9艦隊司令官、51歳 ・ウーサー・ノースブルック伯爵:財務卿、50歳 ・ヴィヴィアン:クリフォードの妻、21歳 ・リチャード・ジョン・コリングウッド男爵:クリフォードの父、46歳 (ゾンファ共和國) ・マオ・チーガイ上將:ジュンツェン方面軍司令長官、52歳 ・ティン・ユアン上將:ヤシマ方面軍司令長官、53歳 ・ティエン・シャオクアン:國家統一黨書記長、49歳 ・フー・シャオガン上將:元ジュンツェン方面軍司令長官、58歳 ・ホアン・ゴングゥル上將:ヤシマ解放艦隊司令官、53歳 ・フェイ・ツーロン準將:ジュンツェン防衛艦隊分艦隊司令 45歳 (ヤシマ) ・カズタダ・キムラ:キョクジツグループ會長、58歳 ・タロウ・サイトウ少將:ヤシマ防衛艦隊第二艦隊副司令官、45歳
8 118悪役令嬢のままでいなさい!
日本有數の財閥に生まれた月之宮八重は、先祖代々伝わる月之宮家の陰陽師後継者。 人には言えない秘密を抱えた彼女は、高校の入學をきっかけにとある前世の記憶が蘇る。 それは、この世界が乙女ゲームであり、自分はヒロインである主人公を妨害する役目を擔った悪役令嬢であるという不幸な真実だった。 この學校にいる攻略対象者は五名。そのどれもが美しい容姿を持つ人外のアヤカシであったのだ。 ヒロインとアヤカシの戀模様を邪魔すれば自分の命がないことを悟った八重は、その死亡フラグを折ることに専念しつつ、陰陽師の役目を放棄して高みの見物を決め込み、平和に學園生活を送ることを決意するのだが……。 そう易々とは問屋が卸さない! 和風學園戦闘系悪役令嬢風ファンタジー、開幕! ※最終章突入しました! ※この素敵な表紙は作者が個人的に依頼して描いていただきました!
8 99內気なメイドさんはヒミツだらけ
平凡な男子高校生がメイドと二人暮らしを始めることに!? 家事は問題ないが、コミュニケーションが取りづらいし、無駄に腕相撲強いし、勝手に押し入れに住んでるし、何だこのメイド! と、とにかく、平凡な男子高校生と謎メイドの青春ラブコメ(?)、今、開幕!
8 66