《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》15.魔様、冒険商人に謝される
「それじゃ命の大恩人様に改めて自己紹介させてもらうで。うちは貓鈴商會の商人、メテオ・ビビッドや。メテオって呼んでぇな」
私は助けた商人のの子を屋敷へと案することにした。
フードをいだ彼の頭部には獣人族特有の耳!
すなわち、貓人(キャットピープル)の一族であることがわかる。
長は150センチ臺前半で小柄。
大きくて、つぶらな瞳がらしい。
右頬に赤いやけどか何かの跡があるのはちょっと痛々しいじでもある。
ふぅむ、がもったいない。
さっきのスライムに襲われたんだろうか。
「こう見えても、うち、商會主なんやで。冒険商人いうて、珍しいものを商うんがモットーなんや」
彼の貓鈴商會というのは彼と妹たちとでやっている商會だとのこと。
かわいい外見なのに、商會のリーダーだなんて優秀な人なのだろうか。
「よろしく! 私の村に來てくれて嬉しいよ!」
私は彼の手をとって、ぶんぶんっと振るのだった。
それから私が魔でないこと、ただの『人一倍暴力の嫌いな普通のの子』であることをしっかりと言い聞かせる。
もちろん、灼熱の魔でもない。
これははっきり言って超・優先事項なのだ。
村人だけならともかく、旅人にまで勘違いされちゃ困る。
「あの村には自稱・灼熱の魔がいるぞ」なんて痛い噂を立てられたら、恥ずかしくて生きていけない。
「にゃはは! そかそか、そんなら領主様は辺境に追放されただけで魔ではないっちゅうわけやな。いやぁ、あの化けをやっつけたのは驚いたで!」
商人のの子はニコニコと笑って事を理解してくれる。
城喰いスライムを蒸発させたから勘違いされるかと思ったけど、どうにかこうにか説得されてくれた。
「それにしても、ここの村の料理はおいしいなぁ! 塩がしっかりきいてるやん! 辺境の村でこんなに豪華な食事ができるとは、ユオ様は本當に優秀な領主様なんやな」
彼はお腹が減っていたらしく、出された料理をぱくぱくと平らげていく。
食たるや凄まじく、小さなにどんどん食べがおさまっていくのは圧巻だった。
「ほんまに旅をしたかいがあったちゅうやつやん!」
話を聞いていくと、彼は新たな商圏を求めてはるばる辺境まで旅しに來たとのことだ。
私と同じぐらいの年齢に見えるのになんて勇気のある子なんだろう。
「そういえば、何かいい商品とかもってない?」
商人っていうんだから何か面白いものを持っていないか尋ねてみる。
「にひひ、それがあのクソでかスライムに全部飲み込まれてしもうてん。期待させて悪いけど、うち、ほとんど何も持ってないんや。でもまぁ、生きてる限り丸儲けって言うやろ?」
「同です……、いいこと言いますね、メテオさん」
「せやろ? うちの家訓やねん!」
メテオのやたらとポジティブな言いにララがうんうんと頷く。
気が合うのは結構なことなのだが、私はがっくりと肩を落とすのだった。
だって、商品がないんじゃ々換もできないわけである。
このままじゃ、うちの倉庫に山と積まれたモンスターの皮や爪の行き場がなくなったってことだもの。
私の思などなんのその。
メテオは顔を上気させたまま、興気味に話し始める。
「それにしても驚いたで! まさか斷の大地に村がいまだにあったなんて。もうとっくに崩壊したと思ってたわ」
「なにその斷の大地って」
「うちの國ではここいらをそう呼んでんねん」
「まじで?」
「ほんまやで? わけのわからんモンスターがざっくざく現れるやろ? その危険度は魔王領に続いて第2位、るな危険。るの止、ったらあかんて言われてんねん」
「……」
「ほら、地図にも書かれてんで?」
絶句する我々をよそに、メテオは懐から地図を取り出して、現在地を教えてくれる。
私の持っている地図よりも詳細で、私の知らない報も載っているようだ。
「それにしても、この村の住人は化けなんかな?」
「ば、化けって誰のこと?」
「いや、あのスライム以外にも巨人みたいなのがおったんやけど、じいさんとの子が平然と一刀両斷してんねん」
「あぁ、あの二人ね、うーむ」
「あの金髪のの子は笑いながら戦うとか特にやばいで。最初はあっちもモンスターかと思ってん。めっちゃ楽しそうに切り刻むからな」
「それはそのぉ、えーと……。あの二人は特殊っていうかね」
ちょっとだけ言葉につまってしまう私なのである。
とてもじゃないが溫泉のせいで、ぷるぷるじいさんが剣聖として復活したとは言えないし。
さらには溫泉のせいでが狂戦士として開花したともいえない。
「メテオ様、あの老人は剣聖のサンライズです。そして、の子はその孫娘で、私達の領地の一級戦士です」
どう説明していいか、考えていたら、ララが即座に回答してしまう。
「け、剣聖のサンライズ!? 生きとったんかい、あれぇ!? え、あの金髪娘が剣聖の孫!?」
當然、メテオは目を白黒させて、非常に驚く。
お年寄りに『生きとったんかい』はさすがに失禮すぎると思うけど。
「まぁ、一番の化けはユオ様やけどなぁ。うちがもうアカン、死んだっていうタイミングで颯爽と現れてくれたんやもん。ほんまにかっこよかったで!」
彼は助けてもらったことを未だに謝しているらしく、私の手をもってぶんぶんっと振る。
貓人らしい大きな瞳がなんともらしいのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「生きとったんかい、サンライズ……!」
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