《【WEB版】灼熱の魔様の楽しい溫泉領地経営 ~追放された公爵令嬢、災厄級のあたためスキルで世界最強の溫泉帝國を築きます~【書籍化+コミカライズ】》40.C級冒険者ハンスの難:ハンスは魔様をこんな調子でナメるに至ったのだ

俺の名はハンス。

ザスーラ國ではちったぁ名のしれた冒険者パーティのリーダーだ。

俺は今、斷の大地に向かっている。

まぁ、言うまでもないが斷の大地とは、足を踏みれてはいけない場所だと言われている。

魔王領にほど近いその土地にはたくさんの強モンスターが現れる。

先日もはぐれの陸ドラゴンがサジタリアスに現れたが、騎士団総出で退治していた。

強力な爪と尾を持つ、その化けは近隣の村々にたくさんの被害を出したと言う。

斷の大地にはそんな化けがうじゃうじゃいると話に聞いている。

早い話が人間など簡単に躙されてしまう土地。

そんな場所に向かうバカは冒険者にもいないと言っていいだろう。

しかし、繰り返すが今回、俺達はその斷の大地に向かっている。

その理由はサジタリアスで貓人族の商人があまりにもうまい話をぶら下げてきたからだ。

斷の大地に村ができて、冒険者を探していること。

・素材回収や地図作りをやってくれれば、かなりの金になること。

・モンスターを倒せば特上クラスの魔石が得られること

などなど。

そいつは俺たちに手のひらサイズの魔石を見せてきて、

「どや? すごいですやろ? こんなん家とか建ちますわ」

などと、こずるい顔をする。

特上品の魔石など、隣國のリース王國のラインハルト家や上位の冒険者パーティでもなければ扱える品ではない。

一介の商人が護衛もつけずに持っていて良いものではない。

ひょっとするとこれは罠か?

あるいは詐欺か?

「クエイクさんよぉ、威勢がいいのはいいが、本當にその村があるんだろうな? こちとら斷の大地に行くんだぜ。詐欺や騙りだったら、ただじゃすまないぜ?」

そう思った俺はその商人に圧をかけてみる。

噓をついているなら、気圧されてボロがでるだろう。

「ふふふ、うちも絶対に詐欺やって思ったんやけどなぁ。それがちゃうねん。まぁ、うちを信じて來たってぇな。絶対に悪いようにはせぇへんから」

やつはそんな風にひらりと俺の圧力を逃がす。

會話をしながら、練のリーダーである俺はその貓耳娘の顔を念に観察する。

しかし、やつの笑顔は天真爛漫そのもので、噓を言っている素振りはない。

と、なれば、彼の言っている、

斷の大地に村ができて、その村の領主が有能でどんどん発展している』

というのは本當である可能がある。

俺はごくりとつばを飲む。

これは一攫千金のチャンスだと。

そんなわけで俺は檄を飛ばして斷の大地へと旅立つことにしたのだ。

「ひぃいいい、殺されますぅぅうう!」

「な、なんじゃ、こいつはぁあああ!」

しかし、気合をれたのもつかの間、サジタリアスの外に現れたのは巨大な白い狼だった。

おそらくはホワイトウルフ、もしくはシルバーウルフだろうか。

それにしても巨大で神々しくさえ思えるをしていた。

「みんな、構えろ! こいつは全員一気に行かないと仕留めきれんぞ!」

俺達はこういうのを狩るのが仕事だ。

當然俺たちは當然、武をもって構える。

……腕の一本ぐらいは持っていかれるかもしれない。

パーティメンバーを守るために、俺はそう覚悟を決めた。

「にゃはは! 大丈夫やって、この子はめっちゃ人に馴れてるさかい! ほれ、シュガーショック、朝ごはんやで!」

しかし、その張は一気にほぐれてしまう。

なんとこの白い狼は商人になついているではないか。

話を聞くに、斷の大地の村の領主がテイムしたものだと言うではないか。

「ふふふ、これから行く村の領主さまがさくっと手なずけてもうてんねん。道中に説明するけど、この子がいれば道中はめっちゃ安全やで。モンスターよってこぉへんから」

「こんな化けをテイムするってどういうやつだよ、その領主さまは……」

どうやらその斷の大地の領主は優秀なテイマーらしい。

なるほど、モンスターどもの扱いを知っているから、斷の大地でもやっていけるというわけか。

俺たちは気合をれ直して、斷の大地へと向かうのだった。

『こんな小娘が斷の大地の領主なのか?』

何事もなく斷の大地に到著し、俺はさらに拍子抜けする。

掘っ立て小屋ばかりだろうと思っていた村は思った以上に整備されており、村人のなりもいい。

そして、歓待の場に現れたのがこの地域の領主を名乗る黒髪のだ。

名前をユオというらしい。

強大な魔獣を手懐けたというのでどんな猛者かと思ったら、まだまだ年端も行かないだった。

俺は正直、拍子抜けしてしまう。

は一言でいえばだった。

この地域では珍しい黒々とした髪のしく、真っ白なのあるに細

や聲の質からいっても栄養狀態はいいのだろう。

「こんな田舎に來ていただいて、こちらこそ嬉しい限りです」

は満面の笑みでハンスを迎える。

どこからどうみても、苦労していない貴族の子そのものに見える。

立ち居振る舞いに優雅さをじさせる。

こんな辺境にいるのは、おおかた放が過ぎて親元から勘當されてしまったのだろう。

斷の大地と聞いていたが、大したことはなかったのかもしれんな』

『あぁ、飯はうまいし、ここでならやっていけそうだ』

『楽勝だな』

仲間たちは食事中、そんなことを言っている。

村人たちは平和を謳歌しており、どう見ても強モンスターに脅かされている様子はない。

つまり、斷の大地などただの噂話やほら話のたぐいで、実際は大したことはないということだ。

地獄の三丁目などと多くの人間から恐れられているが、蓋を開けてみればこんなものかもしれない。

どこからどう見ても、ただの辺鄙な田舎でしかないのだ。

道中でモンスターに出くわすこともなかったし、おそらくサジタリアスに現れた陸ドラゴンは非常に珍しいのだろう。

領主の隣にいるメイドは彼の補佐らしく、俺たちに仕事の容を伝えてくる。

いわく、まずは様子を見るために薬草採集をしてくれとのこと。

この村の近辺にはたくさんの野草が生えているから、とのことだ。

俺はし、カチンと來てしまう。

「おうおう、俺たちはこう見えても歴戦のCランクパーティだぜ? 薬草集めやキノコ採りなら、他の奴らに頼んでくれねぇか? まずは近場のモンスターでも狩らせてくれよ」

しかし、俺はその依頼を鼻で笑ってしまう。

俺たちがこんな辺鄙な場所まで來たのは薬草をつむためじゃない。

俺たちはモンスターを狩りにきたのだ。

そして、上級品の魔石をいただく。

それが俺たちの目的なのだ。

とはいえ、領主としても俺たちの腕を知りたいだろう。

俺は領主たちに自分たちの腕前を見せつけるべく、森の中へと向かうと宣言したのだった。

途中、貓耳娘の姉がなんだかんだ言っていた気がするが、まぁ、うるさいので無視した。

俺たちの実力を見せつけてやるぜ!

ハンス様の伝説が始まるところを、よく拝んでおいてくれよ!

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「ハンス、お前、やめとけよ……」

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