《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》山の中へ薬を屆けます!
「メディ。至急、薬を頼む」
「何かあったんですか?」
アイリーンの隣には先日、彼に絡んだ男達の中にいた者がいる。細い型の男は息を切らして涙目だ。
男の話によれば、仲間の二人が怪我をして山から出られなくなっていた。軽で小回りが利く細の男が山を下りて助けを求めに來た。
「なんかやべぇ魔がいてよ! 二人はけないし、早く薬を頼む!」
「あなたも怪我をされてますね。これをどうぞ」
「オレよりもあいつらを!」
「まずはあなたですよ! お薬、出します!」
ピシャリと言い切ったメディが塗り薬を渡す。渋々、男は指定された箇所に塗っていくと自のを確認し始めた。
鈍く響く腕や足の痛みが引いていったのだ。その痛みを我慢して下山した男だったが、痛みが引いてようやく自の危うい狀態を再認識した。
「す、すげぇ……何の痛みもない」
「この村で狩人をやっていた人にも処方した薬です。お二人が取り殘された場所はどこです?」
「待て、メディ。まさかお前も行くのか?」
「當たり前ですよ、アイリーンさん。あの二人の質や怪我の合いによって処方する薬も変わります。現地で調合しますよ」
メディは手際よく支度を始めた。アイリーンの許可など求めていない。
呆れたアイリーンはメディに対して危機を持った。山を甘く見ると、男の仲間の二の舞だ。
メディは魔の事など考えずに、そこに怪我人がいれば向かおうとする。そういう子だとわかっていても呆れた。
「山には魔がいる。危険だからここで待っていろ。薬は私が持っていく」
「嫌です。アイリーンさんが止めても、私一人で行きます」
「お前を守らないと言ってもか?」
「はい」
一瞬の躊躇もないメディの返事だった。アイリーンはメディが自分を當てにしているのではないかと邪推したのだ。
メディの同行を認めていて、そのつもりだったが彼としては試したかった。何か策があるのか、それともただの無謀か。
支度を整えたメディが男を催促して走り出す。
「待て、メディ。私も當然、同行する」
「謝です!」
「まったく……」
驚異的な手際で支度をしたメディの姿を見て、アイリーンには疑問があった。
薬師は戦闘職とは言い難く、冒険者も間違いなく選択しない職業だ。もっぱら治癒師が歓迎されるため、アイリーンとしては不安がある。
* * *
「日が落ちる前になんとかするぞ。おい、男。名前は?」
「お、オレはアンデだ。仲間の二人はポントとウタン」
男の案により、スムーズに歩が進む。アイリーンはちらりとメディを見たが、驚くほど軽快な足運びだった。
とても山歩きが初めてのきではない。アイリーンやアンデに後れを取ることなくついてきている。
ここで足手まといになるようであれば、アイリーンは本気で帰すつもりだった。
「メディ。この村に來る時は護衛を雇ったのか?」
「いえ、そんなお金もありませんし一人ですよ」
「魔はどうした?」
「逃げたり隠れたり、どうしてもダメなら武がありますから」
アイリーンの中でよくない好奇心が頭をもたげる。メディをもっと知りたくなったのだ。
薬師は昔であれば冒険者パーティにいたと聞いている。しかし、戦闘においてどのように貢獻していたかまではわからない。
もしメディがパーティの薬師としてのきを見せてくれるのなら、と魔の出現を期待していた。
「すまねぇ、二人とも……」
「ん?」
「アイリーン、あんたに絡んじまったよな。悪かったよ」
「気にするなとは言わないし、私もお前達にいい印象は持ってない」
「そ、そうか」
それとこれとは別だとアイリーンは切り分けて考えている。必死に助けを求めるアンデを信じてみたくなったのだ。
暴なチンピラと思っていたが、仲間を思う気持ちがある。それならばまだ人間ではないか、と。
「オレ達、冒険者になったのにあまり果を上げられなくてさ。いっそ何もかも忘れて旅に出ようってんで、こんなところに來ちまったんだ」
「私もだ」
「あ、あんたも?」
「私もなんです!」
メディが手をあげる。アイリーンは可笑しくなった。なぜ同じ場所に似たものが流れ著いてしまったのか。
この偶然が必然だったりするのかと、アイリーンは拠もないことを考えてしまった。その底にあるのはメディの存在だ。
この小さなにめられた薬の知識と技は、こんな辺境で持て余すべきではないとすら思わせてくれたのだから。
「む、何か來るな」
アイリーンがじ取ったのは魔の気配だ。アンデは震いするも、武を構える。
メディはバッグの中から、とあるアイテムを取り出していた。
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