《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》思わぬ再會
カイナ村の最寄りの町にて、三人が肩を並べて歩いていた。
ここから一日ほど歩けばカイナ村であるが、夕暮れ時ということもあって宿へ一泊する事にしている。
「ねぇ、メディちゃん。私にポーションを作るとしたら、どんなものになる?」
「カノエさんは毒の抗がすごいですね。それならし刺激的なポーションでも大丈夫です」
「そんなことまでわかるんだっ!」
クレセインからカイナ村への道中、エルメダは悩んでいた。行きと帰りでは決定的に違うことがある。
今はメディと理的に距離をめて迫るがいるのだ。抱き寄せてメディの薬について、矢継ぎ早に質問する。何故、こうなったのか。
「エルメダちゃん。メディちゃんがグリーンハーブだけで魔を殺したって本當?」
「はぁー……。口をらすんじゃなかった」
カノエの毒自慢に何故かエルメダが熱くなり、メディにもその類の薬は作れると喋ってしまったのだ。
それからというもの、カノエのメディへの好奇は留まるところを知らない。
當のメディは毒については消極的になるため、これもカノエに迫られる要因となっていた。
「もう日も落ちるし、早く宿をとろう」
「そうね。あら……あれ、何かしら?」
カノエが指した先には四人の男達がいた。彼らの一人が倉を摑んでいる相手は初老の男だ。
髪もボサボサで服も汚れがひどく、所々がり切れている。男は弱々しい聲で抵抗していた。
「か、勘弁してくれ……金なんてない……」
「そんなわけないだろー。おじさん、オレ達と目が合った時にとっさに何か隠したよね?」
「これは違う……」
「違うかどうかはオレ達が判定するからさ。見せてみな?」
どちらに非があるかは明確ではないが、真っ先にいたのはエルメダだ。
「コラッ! そこの暴漢ども! 酒代くらい自分で稼ぎなさい!」
「あ? なんだ、ガキか……」
「殘念! あんた達がオギャオギャ言ってた時には生まれてましたー!」
「はぁ?」
メディが近づくと思わず息を飲んだ。絡まれている男はなりこそみすぼらしいが、確実に知っている人間だった。
エルメダと男達の間を通り抜けて駆け寄る。
「ロ、ロウメル院長!?」
「き、き、君は……まさかメディ君か?」
「お久しぶりです! お薬、出します!」
メディがポーションを取り出してロウメルに差し出した。ロウメルはなかなかけ取らず、思わぬ再會に戸っている。
メディは自分を恨んでいるはずだ。普通、助けようなどと思わない。毆られてもおかしくない。
しかしこの狀況で何よりも優先して薬を出すメディに、ロウメルは改めて自の愚かさを悔やんだ。
「君は……私を恨んでいるだろう……」
「いいから早く!」
メディに促されてロウメルはポーションを飲む。の隅々まで何かが浸して、疲労や怪我がフェードアウトするように消えていく。
ロウメルは軽くなったとすら思える自のに驚いて腰が抜けた。今、自分は何を飲まされたのか。
それはかつてメディを採用した時に味わったものだ。実力を計るためにメディに作らせたポーションの味だが、一年前とは比較にならない。
當時よりも更に飲みやすくなっており、効果が高まっていた。
「これが……君のポーション……」
「お元気になられて何よりです!」
「おーい。なんかの再會のところ悪いんだけどさぁ」
今は男達に囲まれている。無視されて明らかに機嫌が悪い男の一人がメディに手をばして倉を摑んだ。
が、同時にメディもバッグから何かを取り出す。
「今はそういう……ぎゃぁッ!」
「ロウメル院長! 離れましょう!」
メディはスプレーを男の顔面に噴した。間もなく男が顔を両手で押さえて倒れ込む。
痙攣した男はき一つ取れずにいていた。
「あが、あ、か、、うごか、ない……」
「こ、このガキ! 何しやがった!」
仲間の男達がメディに襲いかかろうとした時、足元の地面が砕かれた。
「それはこっちのセリフだよ。メディにれたら次は當てるよ」
「こいつ魔導士……ていうかエルフじゃねえか!」
「今更?」
「エルフにゃケンカは売るなってじいちゃんに教えられた! お前ら、ずらかるぞ!」
けない仲間を放置して、殘りの男達が逃げ始める。しかし一人のがぐらりと揺れて倒れた。
男達の前でカノエが微笑む。彼らはの気が引いた。まるで亡霊のように姿を現したのだから、男達に逃走の意はない。
「あなたとあなた、一人ずつ仲間を運んでもらえる? 警備隊の詰め所に案してほしいの」
「す、すみません……。あ、あ、謝るから、どうか、見逃して……あ、あぎゃあぁぁーーーーっ!」
男の指があらぬ方向へ曲がっていた。
「言葉って相手に伝える為のコミュニケーション手段なの。言葉が通じないなら魔と同じだし……」
「すみません大人しくします助けてぇぇ!」
「次は指一本じゃ済まないわよ」
指を折られた男が涙を流して命乞いをする。その際の作もエルメダにはまったく視認できなかった。
男達に回り込んだ時も、まるで消えたかのようだ。何も見せずに敵を制圧する。エルメダはどこか引っかかった。
「さ、面倒だけどこの人達を警備隊に押し付けましょ」
「そうだね……」
カノエが笑顔で歩いた時、彼の三日月の耳飾りが揺れた。夕暮れの背景と合わさって、あまりに不吉な月のシンボルとしてエルメダの目に映る。
この時、エルメダは邪推した。しかし荒唐無稽な妄想であるため、すぐに頭から払拭する。
「エルメダちゃん。どうしたの?」
「いや、カノエさんもなかなかやるね」
「でしょ?」
踵を返したカノエのポニーテールが揺れて、それもまた三日月のような形を作った。
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