《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》カイナ湯の完

「メディの姉! 皆さん! おはようございますっ!」

「本日はカイナ湯完の公開記念式典にお越しいただきありがとうございます!」

「では村長! ご挨拶を!」

アンデ、ポンド、ウタンの三人が早朝から張り切って村人を集めて挨拶する。

盛大な拍手と共に村長がのっそりと壇上に立った。

「えー、皆の者。晴天下の中、この日を迎えられたことを嬉しく思う。厳しい環境下において、カイナ村は……」

長かった。かれこれ三十分は経過している。メディとしては建を見學したくて仕方ない。

冷靜なアイリーンもこれにはさすがに苛立つ。エルメダは大あくびをして、カノエは雲の數を數えていた。

果てには村の歴史まで語り始めたところで、大工のオーラスが耳打ちする。しかし、率直に伝えるのではない。

「村長、一度に話しちまったらもったいないだろ?」

「む、それもそうか。ではカイナ湯のお披目といこうかの」

誰もがオーラスに謝した。ここからは何人かに分けて、建を見る事になる。

アイリーン、エルメダ、メディは功労者ということで先発メンバーとして選ばれた。

この決定に誰も不満はない。むしろ村人の中には期待できる想を聞かせてくれよとエールを送る者もいた。

「さぁ! メディの姉!」

「どうぞ! ご堪能くだされ!」

「ここにメディの姉浴剤が加わりゃドラゴンにブレスですぜ!」

「……はい?」

よくわからない例えにメディはハテナマークを浮かべるが、すぐにどうでもよくなる。

いよいよ広い口をくぐり、建へとった。アンデ達、三人が最初に案したのは大きな付の間だ。

ここでもくつろげるように、大きなソファーが置かれている。

カイナ村では手にらない綿と布で作ったソファーは、村人達の手作りだった。

「たくさん客が來ても、この広くゆったりした空間で待ってもらえりゃ怪我人にポーションですぜ!」

「はぁ……」

「しかもあっちに休憩所と仮眠室があります!」

「仮眠室?」

「風呂上がりで眠くなったらあそこで眠れるんですわ!」

この構造のコンセプトは村長の案だ。元國王であれば他の地域や他國で取りれているものを提案できる。

これ以外にも、國ではかなり珍しいスペースや設備を整えていた。

「次は湯っすね! 見たらおったまげますぜ!」

「薬師の目からレスの葉ですぜ!」

「レスの葉ですかぁ!」

「その例えは共するんだ……」

目から鱗のことか、とエルメダは思ったが黙っておいた。すべてがちぐはぐである。

所も広く作られており、大浴場を開くとメディは息を飲んだ。そこに広がる空間は想像もしてなかったのだ。

手足をばしても余りある浴槽に溫かな湯が張ってある。

「こ、こんなに大きなお風呂が……!」

「気持ちよさそうだねー。これいつれるの?」

「開店準備もあるんでもうし先ですが、後で特別に三人だけ……ということで」

「おぉー! 太っ腹!」

三人はしてやったりとばかりにニヤリと笑う。それから案されたのは蒸し暑い部屋だった。

って間もなく、三人は汗をかく。

「こ、こ、この部屋は?」

「村長の話ではサウナってやつらしいですぜ。前にアイリーンさんが採ってきた火魔石を使わせてもらってますわ」

「需要あるのぉ!? あっつぅ!」

「うむ、気にった」

アイリーンが服を著たまま座り込んだ。さすがに居座られてはまずいので、三人は言葉巧みに説得して出てもらう。

メディもさすがにサウナだけは理解できなかった。ただし汗をかくという観點で考えれば、すぐに閃く。

流を促して、汗を流せば健康にもつながる……なるほど!」

「そーなの!?」

「そうだぞ、エルメダ。サウナはいい」

「アイリーンさんは絶対わかってなかったでしょ……。あれ、もう一つだけ小さな浴槽があるね」

サウナに隣接した浴槽に目を向けたエルメダが手を突っ込む。

「ちべたぁっ! これ、み、水じゃん!」

「サウナで溫まって水風呂にってまたサウナにる。これでが整うらしいんですぜ」

「誰が言ってたの! あの村長か!」

「ふむ、しぬるいな」

「アイリーンさんは黙ってて!」

メディも手をれてみたが、これには浸かれる気がしない。

これも村長の提案だとしたら、國王とはどれだけの知見があるのか。カイナ湯にもっとも貢獻しているのは間違いなく村長だ。

彼がいなければこれほど充実した設備が整う事もなかった。なぜ國王ほどの人がこんな田舎で暮らしているのか。

メディにとってはありがたいが、気にならない事もなかった。

「後で村長さんにお禮を言いましょう。これがカイナ村発展のきっかけになるなら尚更です」

「そうだね。でもさ、人がたくさん來るなら宿も必要じゃない?」

「宿ですか?」

「外から來た人が溫泉だけった後、帰るってのも場所的に不便でしょ」

「ですよねぇ……」

カイナ村に訪れる者はあまりいない。現狀、泊まる際はどこかの民家に宿泊させてもらわなければいけなかった。

外に出て村長と話し合ったところ、宿の建築も検討してくれた。カイナ湯と宿のセットがあれば、客を迎えるには十分である。

まだ見ぬ村の発展にメディはの高鳴りが止まらない。それに伴って、薬の開発も忙しくなる。

やがて運ばれてくるレスの苗木に伴って、メディの中には新たな薬のレシピが無限に広がっていた。

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