《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》メディの悩み

「ほら、そこにグリーンハーブを過剰にれるといいじの毒が完するわ」

「毒の調合じゃありませんっ!」

メディは薬屋に併設しているアトリエにて、ポーションの調合に勤しんでいた。

リラックスハーブティーを飲みながら沒頭するところだが、メディはっていない。

カノエが遊びにきて橫から口を出してくるというのもわずかな理由ではある。

追い出そうにも、相談役として優秀なのがある意味で質が悪かった。

「ブルーハーブから出される魔力は魔力の水と比べてないけど、代わりに何の分が出できるかわかる?」

「カノエさんが大好きな毒にもなる分です。特殊なやり方をしない限りはまず出されません」

「あららぁ、もうホント素敵ね」

「カノエさんは仕事をしなくていいんですか? アイリーンさんもエルメダさんも、狩人として山にってるんですよ」

カノエはカイナ村でどうやって食べているのか、メディは不思議だった。

たまにふらっとやってきてはお疲れだからと食事の用意はするが、材料はメディ持ちである。ちゃっかり二人分の食費だ。

その代わりと言わんばかりに、絶妙にレアな素材を貰えるのだからメディも無下には扱えなかった。

「私も仕事をしてるわよ。お年寄りの家の掃除をしたりマッサージしたり……。これがまた好評なの」

「そうなんですか!」

「村長はエプロン姿がお気にりみたいね。私が働くところをずーっと見てるの」

「そう、なんですか」

メディにはカノエの行の意図が理解できなかった。しかし仕事容そのものは村の需要を満たしている。

特に高齢者から絶大な支持を集めており、各家庭から引っ張りだこだった。

更にエプロン姿とメイド服のオプションがあり、これは別料金なのだという。

合理の観點からメディは考えるが、何をどうやってもこれには存在意義を見出せなかった。

「メディちゃんも今度やってみる? 案外、けるかもしれないわよ」

「え、私はいいです……」

「アイリーンさんやエルメダちゃんをってみようかしら。どう?」

「私は薬屋が忙しいのでいいです……」

カノエは単にメディの邪魔をしているわけではない。メディの手がたまに止まる。

調合にっていない彼をカノエは気にかけていた。

カノエは今日も勝手に食材を漁ってキッチンを借りて何かを作り始める。

「メディちゃん。まずは栄養をつけてね。それと何か悩んでいるなら私でよければ聞くわよ」

「な、悩んでませんよ」

「いつものスピードと切れがないわ。ねぇ、あなたがそんな狀態だと、助けられる命も助からないわ。わかるでしょ?」

「……そうですよね」

メディはリラックスハーブティーを飲んでから一息つく。

「私がいた治療院の患者さんが気になるんです。ロウメルさんからいただいたカルテを眺めているうちに段々とその思いが強くなって……」

「ひどい濡れを著せた人が院長をやっているところね。それはいけないわね」

「私なんかが気にする事じゃないですけど……」

「ロウメルさんはあなたにそのカルテを託した。あなたはどうしたいの?」

「何とかしたいです」

即答だった。ただし、それが簡単に実現できないのは理解している。一度は解雇されたであり、今はあのイラーザが支配している治療院だ。

自分一人の力で何ができるか。考えたところで何もできないのだ。

助けなければいけない人達がいる事実を認識するほど、メディはが締め付けられるような思いをする。

カノエはそんな健気なメディに寄り添った。

「あなたは本當に馬鹿ね」

「そ、そうですよね……。私なんかが心配する事じゃ……」

「あなたはいつも笑顔でポーションを差し出すけど、自分のには無頓著ね。無理をしていたんでしょ」

「無理なんか……」

メディは涙を堪えていた。

自分が元気でいなければ、とカノエが言うように明るく振る舞っていたのだ。

カノエはメディの薬師としての実力は認めているが、その力は時にに余るかもしれないと考えていた。

大きすぎる才能を持つせいで、すべてを背負いすぎる。持つべき者の宿命でもあり、潰れる者は數知れない。

カノエはメディの肩に手を置いて微笑む。

「もっと周りを頼りなさい。あなたに助けられている人達を軽んじたらダメ。周りを見ればたくさんいるでしょ」

「そ、そう、ですね……」

「ロウメルさんも人が悪いわね。こんなものをメディに託すなんて……」

カノエはカルテを手に取った。そこに書かれている患者の癥狀、治療薬。これだけの果を殘しながら、今の院長はメディを追放した。

カノエもまた滅多に見せないを表に出しつつある。しかし出してしまえば、かつての自分に戻ってしまう。

カノエはメディを認めているからこそ、後悔させたくなかった。

「メディ、この件は村長に相談するわ」

「ど、どうしてですか?」

「これは村が一丸とならなきゃダメなの。アイリーンさんとエルメダちゃんにも聲をかけるわ」

「んん?」

メディの願いを葉える前にカノエは障害を想定した。メディから聞いた報を加味すれば、院長の座についた人では毒事件を隠蔽などできない。

杜撰な狀況下にある治療院の悪評は広まり、そうなれば町長がまともな人であれば捜査が始まる。

追いつめられた人間がどう暴走するか、カノエは予想していた。

「メディちゃん。しだけ待っていてね」

「はい……?」

カノエはこれから起こり得る事態を考えつつ、完した晝食をテーブルに並べた。

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