《お薬、出します!~濡れを著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】》月下の鮮
闇を彷彿とさせる裝束を著込んだカノエが、処刑人に微笑みかける。
処刑人は手を止めた。こちら側の人間だと認識しただけではない。
今までこうも簡単に接近を許した事があったか。何よりまみれの慘劇の舞臺において、これほど似合うもいない。
処刑人は目を細くして、カノエを目の保養としている。
「ここだと邪魔がるから場所を変えましょう」
相手がカノエでなければ、処刑人もそのような提案はけれない。
瞬殺して立ち去ればいいからだ。それが不可能と判斷した上に、処刑人はカノエに興味を抱いている。
これほどまでにしい闇の住人がいるとは、などと人並みのはあった。
やがて二人は町の塀を軽々と越えていく。町から大きく外れた雑木林の中にて、闇の者達は改めて顔を合わせる。
「あなた、賞金首の処刑人でしょう? ずいぶんと名前を売ってるみたいね。これまでに四百人以上を殺していて、しかも基準は不明。老若男、お構いなし。ただのサイコかと思えば一級冒険者、王國騎士、魔道士団を一通り返り討ちにしている実力者ね」
「……気にった」
「あら、エスコート?」
「処刑の保留を考えさせたはお前が初めてだ」
処刑人は両手を広げて、カノエを迎えれようとポーズを取っている。
カノエは処刑人と呼ばれる男を観察した。自分の見當が正しければ、彼こそが目星をつけていた人だ。
自分が生み出してしまったモンスターとなれば、駆除するしかない。それが彼の過去に対する清算だった。
「私は死刑を待たされる囚人というわけね。あなた、モテないでしょ」
「この処刑人だぞ……」
「なに?」
「この私が、処刑人が保留にしてやるとッ! 言っているのだぞッ! お前はァァァァッ!」
処刑人が武を抜いた。金屬であり、鞭のようにしなる刃がカノエを襲う。
いつもの処刑人ではない。本來であれば痛めつけてけなくした後、お決まりのセリフを叩きつけるのだ。
それこそが彼の娯楽だが、今は怒りしかない。自分は処刑人という絶対的な立場であり、誰もが畏怖するのが當然だ。
処刑執行前に処刑人を嘲る者などほとんどいない。処刑人にとってカノエは死刑囚だ。
死刑囚であれば処刑人である自分のけを喜んでけれるべきだと本気で考えていた。
蛇のように刃が軌道を変えて、辺りを切り刻む。逃げ場などない。逃れた者などかつて一人もいない。これで決まったと油斷した時だ。
「ふぅん、変わった武ね。素材はナルメル鉄かしら。でも、よく見たら継ぎ目があるわね」
「むぅん!?」
「面白い聲を出して振り向かないでよ。笑っちゃうでしょ」
処刑人の武の一部が割れた。カノエが持つのは三日月型の短刀であり、それが今ここにあるすべてだ。
蛇のような軌道をカノエは見切って、短刀で弾いてかわしていた。
処刑人も理解したからこそ、まったくがかない。あり得ない。どうして。ありきたりの心境だった。
「昔ね。一人のがとある國同士の戦爭に巻き込まれて両親を亡くしたの。その戦爭は長年、続いて犠牲者を出し続けた」
カノエが語り出す。処刑人はカノエが人間とは思えず、そのシルエットが歪んで見えた。
人にあらず。人だとしても、人だったものだ。彼自、一度として遭遇した事のない異界の何か。
処刑人はカノエの言葉を耳に通すのみだ。
「は嘆いたわ。自分の無力さ、そして大切な両親を奪った戦爭を……國を憎んだ。過酷な世界を一人で生きて、ずっと腕を磨き続けた。そのうちにね、その筋の世界で認められて方々からいがあったわ。私は生きる為に殺し続けた。お母さんがいつもに著けていた三日月の耳飾りだけを拠り所にしてね」
処刑人はそこにいる何かが何なのか、ようやく理解した。
すでに討伐されたという事実すら否定できる。表向きの報を信じる闇の者などいない。
やはりそうだ。生きていた。処刑人の目にはカノエの耳飾りだけがくっきりと浮かび上がっている。
「は長して、戦爭に介した。両軍の兵隊を片っ端から殺して回った。だけどいくら殺しても何も満たされなかった。國王を暗殺しようが、関わっていた國の重鎮を殺そうが何もね」
「デイデスタ、グロシアの……二十年戦爭……」
「そう、おそらく片方があなたの出國ね」
「……ッ!?」
自分がよろける様など処刑人は誰にも見せた事などない。
そこにいる何かの正など聞かずともわかる。かつてたった一人で戦爭を終わらせた闇世界のカリスマ。
生き殘った者達はなぜか一様にとある言葉を囁く。
「バッド、ムーン……!」
「グロシアの公開処刑は各國から問題視されていたわ。やがて起こる連続殺人事件もきっと國が生み出した怪が犯人……」
「ハハ、ハハハハハハッ! バッドムーン! あなたを待っていた!」
「當時の私は考えもしなかった。自分が誰にどんな影響を與えているか。後にろくでなしが続いて悪さをしたとなればも痛む。だからね……」
処刑人の手首が斬り落とされた。見えるはずがない。対応できるはずがない。
膝をついて首を垂れるのみだ。処刑人は尚も笑った。更に呼吸が困難となり、全が激しく痙攣する。
「せめて今からでも、まともに生きるって。そう決心させてくれる人が現れたの。大きな手で私の手を取ってくれた」
「バッド……ムーン……。ぜぇ……ぜぇ……」
「私が今でも人間でいられるとしたら、あの人のおかげよ」
「闇世界の……星……私は……待っ」
処刑人の言葉は途切れた。カノエは手早く手首を回収して、頭を切斷する。
「グロシアや私があなたを生んだなら、賞金は未來へ投資する。人を生かしたがる子にね」
処刑人という悪魔を殺した事で、カノエはわずかにでも償いの気持ちが芽生えない事もない。
それで塗られた過去が消えてなくなるはずもなく、死んだ人間は生き返らない。そうとわかっていても、償いなどという自己満足にカノエは嫌悪する。
そんなもので消せるほど自分の罪は軽くないと、カノエは自嘲して立ち去った。
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