《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》14.第七王子は魔族を罠にはめる(飛び込んできた)

俺の引きこもり生活も、1ヶ月が経過しようとしてきた、ある日のこと。

ベッドでパジャマ姿でコミックスを読んでいると……。

「ロウリィ。著替えを用意しろ。客だ」

『ほえ? 客? なんでわかるんすか?』

「は? 魔力のじでわかるだろ。いま100キロ先にいるな」

『100キロ先の魔力なんて知できねーっすよ!』

「駄目だなぁロウリィ。魔神のくせにそんなのできないの?」

『あんたがバケモンなんだよ! いい加減気づけよ!』

ややあって。

俺の部屋に、眼鏡をかけた白髪の男がやってきた。

「お初にお目に掛かります。私は【アウトサイド】と申します」

『なんか切れ者ってじするっすね。ちょっぴりイケメン』

「んで? 魔族がなんのよう?」

「『は……?』」

ロウリィも、そしてアウトサイドもなぜか目を丸くしていた。

え、なに驚いているんだこいつ?

「ば、バカな……神話級の古代魔道(アーティファクト)による、隠蔽を、見やぶるだと……!?」

『魔神であるわたしにすらづかせない、すげえ隠蔽を、どうやって見破ったんすか!?』

「え、わかるでしょ。空気で」

「『わからねえよ!』」

こほん……とアウトサイドが吐息をつく。

「ま、まあいいでしょう。領主殿……あなたのいうように、私は魔族です。もっとも、特級魔族ですがね」

「へー」

「な、なぜ怯えないのです?」

「いや知らんし特級とか言われても。んで、なんのよう? 俺……忙しいんだけど?」

『1ヶ月ニートしてたくせにこいつ……』

やかましい。

俺は引きこもるのに忙しいんだ。

「で、では手短に參りましょう。領主殿、カーター領と魔族側とで、手を組みたい」

「ほー……。同盟ってことか?」

「左様でございます」

アウトサイド曰く。

魔族側はずっと人間界の侵略を考えていた。

その足がかりとなる拠點をしていた。

今まではいにしえの勇者の魔族避け結界があるせいで、自由に出りできなかった(一部除く)

しかし……。

「先日なぜか結界がきえましてね。これは好機と考え……ここに來た次第です」

『こいついにしえの勇者の強力な結界を、やぶったのがノア様だって気付いてねーっすね』

ロウリィが思念で會話してくる。

ははーん、なるほどバカなのねこいつ。

しかしふむ……魔族との同盟か。

くく……思いついたぞ!

『まーーーーーた無能ムーブやるんすか。こりないっすねあんた……』

『やかましい! 今度こそ……いや、これでフィナーレだ!』

『最後? どゆこと?』

『いいか、作戦はこうだ。魔族と手を組むだろう? で、この領地が魔族に支配されるわけだ。となると、この領地のトップはどうなる?』

『そりゃ……魔族側になる?』

『そう! めでたく俺は領主を引退。あとは転移魔法かなんかでスタコラサッサとおさらばするだけよ。ひとりだけ逃げたとなりゃ、捕虜となった領民達は呆れて俺を追い掛けることもねーだろ?』

『いやまあ……え、領民みんな魔族側にわたすんすか? 良心は痛くないの?』

『捕虜になるんだから殺されないだろ。頃合いを見て転移で逃がしてやるさ』

よし、作戦は決まったぞ!

あとはこの白髪魔族と渉するだけだ。

「隨分と長く考え込まれておりましたね」

「え、まあな。さて……アウトサイドくん。君たちは俺の領地がしいと」

「ええ。人間界進出への足がかりとしてね」

「そうかそうか……で?」

「で……? とは?」

「そっち側の見返りだよ。こっちが領地を差し出してやるんだ。あんたらは何を俺に貢(みつ)いでくれるのかなぁ?」

アウトサイドはポカン……としていた。

一方でロウリィはドン引きしてる。

『あ、あんた……魔族相手に渉って……しかも相手、特級っすよ特級』

『だからしらねーよ。だって渉である以上、お互いWIN-WINであるべきだろ?』

く、くく……とアウトサイドがを震わせる。

その額に……なぜか管が浮いていた。

え、なに怒ってるのこいつ?

こわ。

「人間の分際で……この特級魔族を相手に……要求するなんてね。はじめてですよ、こんなふうに馬鹿にされたのは」

「え、バカになんてしてねーよ」

だって渉って、お互いにメリットがあって當然なんじゃないの?

こいつなに、一人だけ利益をむさぼろうとしているの?

え、なに自分だけ味しい思いしようとしているわけ?

ひょっとしてこいつ渉素人か?

ったく、しょうがねえなぁ。

「帰れ。てめえにゃ、この領地はわたさん」

一度帰らそう。

上司を連れて再度こっちにきてもらい、改めて渉の場を用意しよう。

って、意味で言ったんだけど……。

「……どうやらご自分の立場が理解できてない様子ですねぇ」

「え、何切れてるの? カルシウムたりてないの?」

「教えてあげましょう! 今……あなたの領地の村は、私の部下が占拠しています!」

「へー。占拠?」

「特級の私が連れてきた、上級魔族、合計10000! この広大な領地に點在する村、すべてに配置済みなのですよぉ!」

走った目でアウトサイドが言う。

プールにでもったのか?

『い、10000の大軍!? の、ノア様やべーっすよ! 渉なんて噓なんすよ! 本當は最初から制圧するつもりだったんですよ!』

「ほーん……で?」

部下を何人連れてこようが意味がない。

渉だぞ渉。

こいつ理解してなさ過ぎだろ。

俺は上司連れてこいっつってるのにさぁ。

はーあ、ダメダメだなぁこいつ。

アウトサイドの上司も苦労してるんだろうなぁ。

「くっ……! こいつ……自分の可い領民が人質に取られているのに、まるで余裕を崩さない! なぜだ!? なぜそこまで余裕なのだ!」

「いやまぁ……ね」

別に可くないし。

領民、怖いし……。

と、そのときだった。

「「ノア様!」」

部屋にってきたのは、騎士のディーヴァ、そして魔道士ライザだ。

「ノア様! 魔族どもを制圧完了いたしました!」

「くくく……やつら10000、闇に沈めてやったわ……」

「ば、ば、バカなぁあああああああ!?」

どしゃ、とアウトサイドがその場にへたり込む。

一方でディーヴァとライザが、俺の前に立ち、武を構える。

「う、噓だ!? 1萬の魔族だぞ!? 人間ごときが、倒せるわけがない!?」

「くくく……ならば領主の館に配備していた魔族が、なぜ駆けつけてこないのだ、愚かなる魔族よ?」

「くっ……! た、確かに……じゃ、じゃあ……」

「うむ! 私たち騎士団、魔道士団、そして領民が協力し、魔族の軍勢を追い払ったのだ!」

え、え?

えぇーーーーーーーーー!?

いや、まあ、ディーヴァとライザはわかるよ?

でも、騎士団も魔道士団も數はすくなかった。

1萬の敵を倒せるわけがない。

「ば、バカ言うなよ! そんなこと……できるわけないだろ!」

『ノア様完全に敵サイドと同じこと言ってるっすよ?』

ディーヴァはを張って説明する。

自分たちが領民を鍛え上げたのだという。

魔族と張り合えるほどにまで、強く育てたと……。

得意げに、こいつら語っているけど……。

怖いよ! なんだよ魔族と戦える領民って!

しかも育ててた?

初耳だよ!

『わたし言いましたけどね』

「くそ……! ノア・カーター! そういうことか!」

アウトサイドが立ち上がって、敵意丸出しで俺をにらんでくる。

「すべては……貴様の罠だったのだな!?」

「え? いや」

「「そのとおり!」」

ライザとディーヴァが、それぞれどや顔で、カッコつけたポーズを取る。

「すべては無害なフリをして魔族をおびき出すための、ノア様の策謀だ!」

「そしてまんまと罠にはまった間抜けが貴様と言うことよ……!」

「なんということだ! くそ! ノア・カーターぁあああああああ!」

パニック起こしたのか、アウトサイドが突っ込んでくる。

いやパニック起きてるの俺の方なんだけど!

ま、まあいい……。

とりあえず、お互い誤解してるようだ。

そう、そうだよ。

まだ渉の余地はある!

まだうちの領民(バカ)が魔族を制圧しただけ!

殺してない! そう、殺してないんだから渉の余地はある!

「死ねぇええええ!」

「ま、まあまあ落ち著けって、な?」

襲い來るアウトサイドの背後に回って、その肩をポン……と軽く叩く。

どがぁあああああん! と大きな音を立てて、やつが地面に落ちていった。

「え? な、なんで!?」

『ノア様そのスピードで肩ポンすりゃ、こーなるっすよ。1階に落ちてったすよそいつ……』

地面に人間サイズのが開いている。

から中を見ると、1階にアウトサイドがボロ雑巾のように転がっていた。

「特級魔族を……上回る、パワーとスピード……ノア・カーター……ばけもの、め……」

がくん! とアウトサイドが気を失う。

『死にましたねえ』

「「さすがですノア様ぁ!」」

愕然とする俺の背後で、ライザとディーヴァが歓聲を上げる。

アウトサイドが持っていた魔道から、大歓聲が聞こえてきた。

『領主様がボスを倒したらしいぞ!』

『すげえ! さすがノア様だ!』

『我らの最強領主さまぁあああああ!』

……えっと。

ええーっと、これ……どういう狀況。

『敵の魔族の謀を見抜き、敵を罠にはめ、見事討伐して見せた……すげえ領主、じゃないっすか?』

「なんだよそれ! すっげー有能領主みたいじゃんか!」

『みたいじゃなくて、そー思われてるっすよ。ほら、あいつらの目、見てくださいっす』

「くっそ! きらきらした目を向けやがって!」

ライザとディーヴァは、俺の前にひざまづく。

「ノア様! あなた様のご指示どおり、領民達は今や、魔族を凌駕する屈強な兵士へと進化しております!」

「くくく……わが眷屬よ。準備は……整っているぞ?」

「指示!? 準備!? なんのだよ!」

「「え? 魔王と戦爭するための、でしょう?」」

「言ってねぇえええええええええええええええ!」

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