《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》18.第七王子は容と健康に良い品を作る(偶発的)
ある日のこと。
領主の館にて。
元ゴブリン商人のサブリーナ・エチゴーヤ(男の娘)がやってきた。
「ノア様。実は折りってご相談があるのです」
「んだよぉー……もう勘弁してくれよぉー……」
瘴気が治ったことで一気にカーター領の領土が広がった。
それによりさらに必要となる諸々が増えて、仕事が倍増した次第だ。
「実は先日わたしにくださった、化粧水なのですが、量産できないかと思いまして」
『化粧水……? ああ、ノア様がお土産に持たせたやつっすね。それでゴブリンみたいな見た目が治ったやつ』
「あんなの量産してどうするんだよ?」
「実は全國ののお客様から注文が殺到しているのですよ」
サブリーナ曰く。
元々サブリーナは酷い外見をしていた。
それが治ったことで、顧客からどうやったのか聞かれまくったらしい。
化粧水のことをぽろっともらしたら、是非自分もしい! と注文が殺到しているのだと。
『サブリーナちゃんが綺麗になったことが、なによりの宣伝になってるんすね』
「奧様方はどうして化粧水なんてほしがるんだ?」
『はいつだってしく見えたいものっすよノア様。サブリーナちゃんのあのでこぼこなが綺麗に治った化粧水とくれば、若いを手にれたい奧様達がほしがるのは當然っすね』
何はともあれ、俺が適當に作った化粧水をみんなほしがっているそうだ。
ふむ……なるほど……よし、これを利用しよう。
「仕方ないな……三日くれ。お前にやった化粧水より、さらに質の良いものを作ってやろう」
「本當ですかっ? ありがとうございます! お客様、とても喜ぶと思いますー!」
『うう……眩しいっす……純粋に顧客の要に応えようとする、善良なる商人のカガミっすね……んで、ノア様、その心は?』
『ぜんぜん効かない化粧水をただ同然で作って売りまくって、クレーム來まくって俺の評判を下げるために決まってるでしょ!』
『清々しいほどのブレなさ加減っすね……ま、今回も失敗するでしょーけど』
かくして、俺は新たなる無能ムーヴのため、新作の化粧水を作ることにしたのだった。
★
俺は屋敷近くの森へとやってきた。
白貓のロウリィが肩に乗っている。
「さて作りますかね」
『化粧品って……普通こう、研究所みたいなとこで作るんじゃねーんすか?』
「バッカ。今から作るのは効果のないテキトーな化粧水なんだから、いいんだよ、テキトーで」
『テキトーな化粧水って……どうするんすか? 材料もないのに』
「あん? あるじゃねえか。そこら中に」
俺は亜空間に手を突っ込んで、中から瓶を取り出す。
ポーション瓶。これに化粧水をれる。
『瓶があっても中ないんじゃ意味なくねーっすか?』
「これから作るよ……っと」
俺は片手を空中にかかげる。
すると、俺の手のひらの上に小さな水球ができる。
『水魔法っすか?』
「そう。大気中の水分を集めて水を作り出す。今日日子供でもできる初級魔法【水球(アクア・ボール)】」
『水の球なんて作ってなにするんすか?』
「瓶にいれまーす。はい完でーす」
『いや……さすがに、ちょっと……』
「んだよ文句あるの?」
『大ありっすよ! これだって水つっこんでるだけじゃん! インチキじゃん!』
「ふはは! 言ったろうロウリィ、俺は評判を落としたいんだよ。化粧水と偽ってただの水を売る! 全國からクレーム來まくり! あの悪徳領主をクビにしろ! ってな合に事が進むに違いない!」
『で、でも……販売元のサブリーナちゃんにも迷かけちまうんじゃねーっすか?』
「そこはちゃんと、カーター領印の化粧水って事ででかでかと宣伝してもらうよ。迷掛かるのは俺だけ、サブリーナは被害者、ってやればさらに評判も落ちるだろ?」
『なるほど……さすがノア様。最低さ加減にかけては右にでるものいないっすね』
「うっせえ! さてんじゃ作りますか……そうだな、軽く10萬本くらいでいっかな」
俺は土魔法でれを作り、水魔法で中を作って、化粧水を作る。
次から次へと高速で、偽化粧水が完していく。
そして亜空間に収納されていく。
『あのー……ノア様。あんた……やべーことやってるって自覚あります?』
「くくく……もちろん。悪事とはなんと楽しい事よ……」
『いやあのね……そうじゃなくて……はぁもういいや。ノア様がんばれー』
「ああ、頑張るさ。俺の評判を落とすために。目指せ追放! ふはははは!」
『はーぁ……この人、すげーことやってるって自覚ないんだから……』
★
後日、俺の部屋にて。
「さすがですノア様ッ! やはりあなた様は素晴らしいお方ですー!」
「ど、どうしたサブリーナ……急におしかけてきて……」
元ゴブリン商人サブリーナが笑顔でかけつけてきた。
嫌な予がしてならない……。
「ノア様がお作りになった化粧品、全國で超ヒットしております!」
「はぁ!? ひ、ヒットだぁ~?」
「はいっ! 全國の奧様がたから、嬉しい悲鳴が屆いております!」
サブリーナが持ってきた手紙を俺に渡す。
どうやらカーター印の化粧品を使った奧様からの想のお手紙だそうだ。
『が30年くらい若返ったわ! これを作ったかたは天才ね!』
『にきびだけじゃなくて、火傷も綺麗さっぱり治るなんて! 素晴らしいわ!』
『化粧水間違って飲んじゃったんだけど、その日から毎日超元気! 肩こり腰痛そのほか全部治ったわ! すごすぎるわ!』
……おいどうなってるだよ!?
ただの水だぞ!?
『ノア様ー。言うの忘れたっすけどね。あんたが作った水、ノア様の魔力で作られたもんだったじゃないっすか?』
『ああ、それがどうした?』
『ノア様の魔力によって作られたあの水にも、あなたの魔力が付與されてたんす。だから正確にはただの水じゃなくて、魔法水。だから容にも健康にもよかったんすよ』
『つ、つまり何か……? 俺、ただの水を作ったつもりが、すごい魔法の水を作ってたってこと?』
『そーゆーことっすよ。はいはいさすノアさすノア』
なんてこった……。
俺が適當に作ったですら、ここではすごい扱いされちまうのかよ!
「やはりノア様はすごいです! 瓶も化粧品もお一人で、魔法で作ってしまったなんてすごい!」
「い、いや別にすごくないだろ……?」
「ご謙遜なさらず! だって10萬本分の化粧水を作るなんて、並の魔力量ではできませんよ! 桁外れの魔力量があったからこそできる蕓當……すごいです!」
「え、ええー……普通じゃね?」
「しかも亜空間収納なんて、この世界では誰もできない、失われたいにしえの魔法ですよ! そんな凄い魔法をにつけてるなんて! すごい、さすがノア様ですー!」
……なんてこった。
評判を下げるつもりで、適當にやった行為が裏目に出て……俺が凄い魔法使いだってバレちまったじゃねーか!
「い、いやね……ほんと大したことないんだってば俺って……」
「これだけのすごいことができるのにとても謙虛だなんて! 才能、能力、人格……全てに優れる最高の領主さまですね、ノア様って!」
ああもうなにをしても肯定されてしまうぅうう!
どうしてこうなったんだぁあああ!
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