《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》33.第七王子は婚約者の親と熱く拳で語り合う(かみ合わない)

ある日のカーター領、俺の部屋にて。

老執事セバスチャンと、そして婚約者のサラディアスが部屋を訪れていた。

「ノア様、実は二つほど問題がございます」

「ふぇ~ん……二つもかよぉ……んだよぉ~……」

まずはセバスチャンが言う。

「実は現在、我が領地は深刻な人手不足を迎えております」

「は? 人手不足だぁ? なんでだよ」

「このカーター領を訪れる人が増えているのです。理由は、マダム・エリシオンの娼館があるからです」

どうやらマダムはこの業界でナンバーワンの人だったらしい。

その人が経営する、しかももの凄い揃いの娼館がある、ってことで有名になったそうだ。

結果、娼館目當てで領地を訪れる男客が増えているらしい。

「なるほど……客が増えると、宿屋や食堂が必要になる。けど現狀だと、客に対して十分な設備や人手が足りんってことだな」

「その通りでございます。領民だけでは手が回りませぬ」

「つっても人を呼んで雇用しようにもなぁ。コネもツテもないし。貴族でも後ろ盾になってくれりゃ、ま、別だろうけどよ」

とは言え當てがないわけではない。

婚約者のサラディアス。

はグラハム公爵家のご令嬢だ。

こいつの家が後ろ盾になってくれりゃ問題は解決だろう。

だが……サラは現在、家出中のなのだ。

俺を追い掛けて家を出奔してきたのである。

『こんな王子を追い掛けて家を捨ててやってくるなんて、けなげな子っすね。あれ? でも家出したってなれば、お父さんとか心配しないんすかね?』

白貓ロウリィが、機の上で首をかしげる。

「ノア様。実は二つ目の問題とは祖父のことなのです」

「祖父?」

「ええ。祖父にわたくし、見つかってしまって……戻ってこいと……」

『なんでお爺さんが出てくるんすか? こーゆーときお父さんとかお母さんがクルンじゃないの?』

『サラの両親は死んでるんだよ。現グラハム家はサラのじいちゃんが回してるの』

『はえー……ますます苦労人じゃないっすか。ノア様もっとサラ様だいじにしましょーよ。なに娼館で遊びしてるんすか……ぐええええ』

余計なことを言う白貓の腹を手で押しつぶしつつ言う。

「グラハム公爵が帰ってこいって言うなら、帰った方がいいんじゃねーの?」

「いいえ……わたくし、ノア様にも心も捧げた! ここを離れる気は頭ございません!」

と、そのときだった。

『ロウリィ。避けた方が良いぞ』

『ふぇ?』

俺は殺気をじて、バッ、と座っていた機から離れる。

その瞬間……執務機が一刀両斷された。

『ふんぎゃぁああああああああ!』

ロウリィは間一髪でそれを回避した。

『なんすか!? なんすかいまのぉ!?』

「ノア・カーターぁあああああああ!」

部屋の壁がずり下がり、そこから現れたのは……。

「お、お爺さま!」

『サラ様のお爺さん!?』

の老人が、壁の向こうにいた。

その手には剣が握られている。

怒りの表を浮かべて、壁の切れをまたいで部屋の中にってくる。

『壁向こうから部屋の中のノア様を斬り殺そうとしたっすか!? やべえ! なんすかこいつぅ!』

「お爺さま! 酷いです! ノア様が死んでしまったらどうするのですかっ!」

サラがってきたグラハム公爵に注意する。

グラハム公爵はサラにデレデレした表を浮かべたと思ったら、すぐ表を引き締める。

しのサラ! こんなところにいたらおまえは駄目になる! 帰るぞ!」

『グラハム公爵は孫を溺してるみたいっすね。で、こんなクズ王子に大事な孫はやらん……ってことっすかね……あ、やめて、お腹そんなふうにしちゃらめぇ……!』

まーた厄介ごとが舞い込んできたよ……。

ま、でもこれでグラハム公爵がサラを連れて行ってくれたらいっか。

「いやですわ! わたくし……ノア様をしているのですから! 死ぬまでノア様のおそばを離れる気はございませんわ!」

サラは公爵の手を払い、俺の隣までやってきて、ギュッと抱きしめる。

いやいや、いいからそういうの。

早く帰ってよ……。

「ノアぁあああああああ! 貴様ぁああああああ!」

公爵は俺の前までやってくると、持っていた剣を俺に向ける。

「わしと、決闘しろ! わしが勝ったら孫は連れて帰る!」

うわー……めんどーい……。

ん? いや……待てよ……これは利用できるかもしれない!

俺は立ち上がり、真っ直ぐグラハム公爵を見て言う。

「いいでしょう! その勝負……けて立ちます! するサラのため、必ず勝って見せます!」

「はぁああああん♡ ノア様ぁあん♡」

そのやりとりを見ていたロウリィが、呆れたようにため息をつく。

『で、無能ムーヴ?』

『いえす、無能ムーヴ』

俺がやってきたのは、領主の館の裏庭。

上半の、グラハム公爵。

相対するのは俺。

『ノア様ー。なにするつもりっすか?』

ロウリィがサラの肩の上に乗って、思念で會話してくる。

『【グラハム公爵を徹底的にボコボコにして、こんなひ弱な老人に容赦ないノア様さいてー】作戦』

『うわぁ……まじさいてーじゃないっすか! 相手は婚約者のご家族なんすよ!?』

『うるへー。サラもこれで俺を嫌いになってくれりゃ、一石二鳥よ』

『まあこんな最低王子の呪縛から解放されるとなれば、サラ様にとってメリットあるかもっすけど……』

おいこら白貓。

後で憶えてろよ。

「じゃ始めようぜじいさん。言っとくが……手加減しないぜ? 俺は……負けるわけにはいかないからな」

「ああ……! ノア様……そこまでわたくしのことを……ああ! 素敵!」

『サラ様、目ぇ覚まして。そこにいるのは人の皮かぶったクズっすよー』

一方でグラハム公爵は、やる気満々のご様子。

「可い孫娘をこんなクズには譲らん! サラというものがありながら、娼館で遊びほうけただと? ……ぶち殺す!」

『確かに最低っすね。よし、やっちゃえ公爵ぅ!』

こうして俺とグラハム公爵との一騎打ちがはじまる。

公爵は手に真剣を握っている。

「いくぞ! ぬぅうん!」

公爵のから黃金のオーラが放出される。

ドンッ……! と地面を蹴ると、音の速さで突っ込んできた。

『ちょっ……!? はや……!』

「死ねぇええええええええ!」

ブンッ……!

すかっ……!

「おっと」

「ぐぬっ! 避けよって!」

ブンッ! ブンッ!

すかっ! すかっ!

『あのじいさんもやべーっすけど……それを全部紙一重でわすノア様やべえっすな……』

「この! ちょこまかと!」

グラハム公爵が大上段に構えて、俺に剣を振り下ろす。

俺はその刃を、指でつまんで止めた。

ずんっ、と俺の周囲の地面が沈む。

『なんつー重い一撃!』

「それを止めるなんて……すごいですわ、ノア様!」

「おうおうどうしたじいさん? これくらいじゃ俺は倒せないぜ?」

「ぐっ! この……! う、かん! なんだ……このパワーは!」

公爵は必死になって剣を抜こうとする。

「ほい、デコピン」

「うぎゃぁああああああああああ!」

グラハム公爵は吹っ飛ばされると、空中で何回転もして、地面に倒れる。

「おじいさまっ!」

『サラ様! あぶないっすよ! 近づいちゃ!』

倒れ臥すグラハム公爵に、サラが駆け寄る。

「ノア様! もう勝負は決しました!」

「いーや、駄目だね」

「どうして!?」

もっといたぶって、サラに嫌われないといけないからな。

「こんなもんじゃないだろ、じいさん……なぁ?」

するとグラハム公爵は、にやり……と不敵に笑う。

「そうか貴様……【見抜いて】おったのだな」

「え? ……あ、ああ! もちろん!」

何のことか知らんけど、知らんと知られてしまったら恥ずかしいので、知ってる振りをする。

「サラ……可い我が孫よ。下がっておれ」

「しかしお爺さま!」

「この男は……わしの全全霊を持って倒す価値のある益荒男(ますらお)よ」

ふらりと公爵が立ち上がる。

「ぬぅううううううん!」

『う、うわああ! お爺さんの筋が倍に膨れ上がって、なんか屈強な戦士みたいになってるっすぅううううう!』

ごおお! と先ほどよりも強烈なオーラを放出する。

『なんすかこのじいさん! ただ者じゃないっすよぉ!』

「いくぞノアぁ!」

「來い、じいさん!」

「「うぉおおおおおおおおおお!」」

翌日。

「さすがですわ、ノア様!」

「ふぁっ!?」

婚約者サラディアスと、その祖父であるグラハム公爵が、俺の前にいる。

公爵は包帯グルグル巻きだ。

俺が完なきまでにボコったからな。

これでサラに嫌われる……って思ったんだが……。

「見事だ、ノア。よくぞ、元剣聖であるわしを打ち倒した」

「も、元、剣聖ぃ!? あんたが!?」

「そうですわ。お爺さまは2代前の剣聖なのですわ」

あ、あれ? そうだったの!?

あんな弱っちいのに!?

「ふっ……ノア。貴様は見抜いておったのだな。わしが元剣聖で、あの程度では死なぬことを。だから手加減しなかった。そうだろう?」

いや単純にボコボコにして、サラに嫌われようって思ってたんだけど……。

「そして……フッ……伝わってきたぞ、おぬしの剣から、サラへのが」

「ノア様……♡ 好き……♡ 好き……♡」

サラは目を♡にして、俺の腕に抱きつく。

え、ええ~……なんで好あげされてるの?

する婚約者を取られまいと、元剣聖に果敢に挑んだ、カッコいいナイト様みたいじゃあないっすか』

そういうことかぁあああああ!

「ノアよ。わしは貴様を認めよう。サラとの婚約を許し、さらにグラハム公爵家はカーター領を全面的にバックアップを約束しようじゃないか」

『おー、これで人手不足も解消じゃないっすか。良かったねノア様』

良くねぇええええええええ!

「さすがですわノア様! 二つの問題を同時に解決してみせるなんて……はぁ……♡ やはりわたくしの目に狂いはなかった。あなた様は、最高の領主さまで……わたくしの最高の旦那様ですわぁ♡」

どうしてこうなったぁああああああ!

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