《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》35.第七王子は闇の教団を潰す(マッチポンプ)

ある日のカーター領。

第七王子ノアの部屋に、騎士団長のディーヴァがやってきた。

「ノア様! 大変だ! こんな怪しげなビラが領にばらまかれていた!」

「あん? 怪しげなビラだと?」

ディーヴァが機の上に置いたのは、真っ黒な羊皮紙だ。

のような赤いインクで、文字が書かれている。

白貓ロウリィがちょこちょこと近づいてきて、文面を読み上げる。

『えー、なになに……「世界を闇に染めよ 我らが邪神をたたえよ 刻は來たれり 集え 同士よ 【ダークノワール・ブラックシュバルツ団】へ」ぷっ、なんすかこのセンスの欠片のないアホみたいな名前?』

「…………」

『ぷっ……しかも……くく……ダークノワール・ブラックシュバルツって、黒、黒、黒、黒って意味じゃん。意味がかぶりすぎっすよ! アホだなぁ! ねえノア様? ノア様?』

一方で、第七王子ノアの顔が……怒りで染まっていた。

『ど、どうしたんすかノア様?』

「この……ダークノワール・ブラックシュバルツ団……とか言うやつらは、どこでこのビラ、配ってやがった……?」

ノアのから立ち上るのは、尋常ではない怒りのオーラと、莫大な魔力。

ディーヴァも、そして魔神であるロウリィも、この男がここまで怒りを見せたところを、見たことがない。

……いや、一度だけあった。

ノアの兄ダーヴァが、闇の大賢者ノアールとやらが作った闇のアイテムによって、暴走したとき。

あのときとノアは、【同じ表】をしていた。

まるで……【仇敵】への憎悪を募らせるような、そんな表だ。

「あ、アインの村で、真っ黒いフードをかぶったあやしげな一団を見かけたそうだぞ……」

「そうか。わかった」

ノアは立ち上がると、赤いマントを肩にかけ、部屋を出て行く。

「ど、どこへ行かれるのだッ?」

「……その教団とやら、ぶっ潰す」

「さすがノア殿! 邪教徒から領民をお守りくださるというのですね! 我ら騎士団もお供を……」

「駄目だぁああああああああああ!」

ノアは聲を荒らげる。

「おまえらは來るな。いいか! 絶対に來るんじゃねえぞ!」

ノアは鬼気迫る表でディーヴァに言う。

いつも穏やかな領主が、あんなにも怖い顔をしているなんて。

それほどまでに……相手は恐ろしい組織なのだろう。

「ノア様……そのダークノワール・ブラックシュバルツ団は……そんなにヤバい組織なのですか……?」

「ああ……ヤバいなんてもんじゃねえ……下手したら……死ぬ……」

「! やはり!」

「あ? やはり……?」

『ん~。なんすかね、この微妙にかみ合ってない……ん? ダークノワールブラックシュバルツ……闇? ノワール……え、まさか……』

ロウリィだけは何かに、なんとなく気付いたような表になる。

だがディーヴァは完全に勘違いしていた。

「ノア様! 危険です! 我らもついてまいります! 我ら騎士団、ノア様と心中する覚悟はできております!」

ディーヴァはこう勘違いしている。

敵は、ノアが死ぬ覚悟でなければ倒せないほど、強大かつ兇悪な組織である……と。

「バカヤロウ!」

だが、ノアは一喝する。

「俺を殺す気か!」

「ッ……!?」

ディーヴァは、ぐっ……と歯がみする。

俺を殺す気か。

つまり……ディーヴァ達がついていけば、逆に、足手まといになってしまう。

ノアですらギリギリで勝てるかどうかわからぬような敵。

そこに、自分たちのような、脆弱なる存在がついていけば……足を引っ張り、ノアを殺してしまう。

「おまえらは大人しくここで待ってろ。いいな?」

ノアから下されたのは、戦力外通告。

いまの自分たちでは、全く歯が立たないということ。

たとえディーヴァが、古竜を易々と倒せるほどの強さを持っていようと、足手まといになってしまう。

それほどまでに強いのだろう。

その、ダークノワール・ブラックシュバルツ団は……。

「……わかり、ました……」

ディーヴァは悔しくて悔しくて、をかみきり……を流すほどである。

一方でロウリィは『え……こわ……』とディーヴァの悔しがる姿にドン引きしていた。

……この時點で、ロウリィには、ノアが過剰に憤る理由、そしてダークノワール・ブラックシュバルツ団の正に、なんとなく察しがついていたのだ。

「行ってくる。留守は任せる」

「はい! わかりました!」

ノアはうなずくと、さっそうと立ち去る。

殘されたディーヴァは、だんっ! と館の壁を叩いた。

壁にが開いて、向こう側が見える。

「……鍛えねば、ならん! ダークノワール・ブラックシュバルツ団に、立ち向かえるほどに! われら騎士団を!」

ダッ……とディーヴァもまたその場を後にする。

「みなに知らせねば! 闇の教団が、どれほど恐ろしい存在なのかを!」

奈落の森にひっそりと、いつの間にか真っ黒な【塔】が建造されていた。

黒塔(ダーク・タワー)。

それは、闇の教団ダークノワールブラックシュバルツ団の、シンボルとなる建だ。

……しかしその黒塔は、現在、壊滅していた。

中にいた邪教徒達はみな、失神している。

「はぁ……はぁ……化けめ……」

邪教徒のリーダーである男が、忌々しそうに【彼】を見やる。

「貴様がノア・カーター……我らの最大の敵。これほどまでに強いとはな……」

男は先ほどまでのことを思い出す。

リーダーは邪教徒たちを集め、集會を行っていた。

『我らダークノワールブラックシュバルツ団は! 闇の大賢者さまを始祖として設立された異教徒の集まり! 我らの目的はただ一つ! 2000年前にお亡くなりなられた、闇の大賢者ノアール様の復活……!』

『おらぁあああああ! カチコミじゃぁあああああああ!』

……そこから、ノアは大暴れした。

黒塔を魔法で破壊し、立ち向かう敵を全員気絶させた。

「よもやここまで強いとはな……ふっ。誇って良いぞノア・カーター。我らはこの2000年、ノアール様の復活のため、息を潛め、力を蓄え続けた。そんな我らとまともに相手できるなんて……それこそ、闇の大賢者さまでなきゃ不可能なこと」

「あぁあああああ! その名前で呼ぶなぁああああああああああ!」

だがリーダーはニヤリ、と笑う。

「隙あり! いでよ、闇狼(シャドウ……ウルフ)よ!」

リーダーは懐から闇の結晶を取り出すと、放り投げる。

地面にぶつかるとそこから黒い煙が湧き上がり、煙は狼の形へと変貌する。

1匹、2匹どころではない。

闇の狼は、凄まじい數がその場に出現した。

「これは闇の大賢者の【福音書】の記載を元に作された闇狼! その強さはなんと……」

「知っとるわぁあああああああああ!」

ノアはパンッ……! と柏手を打つと、頭上に両手を広げる。

上空に現れたのは、黒いだった。

ノアは魔法でブラックホールを生したのだ。

そこへ、尋常でない數の闇狼たちが吸い込まれていった。

あとにはノアとリーダー、そして邪教徒たちが殘される。

「し、しんじられん……」

どさっ、とリーダーが腰を抜かす。

「なんだ……いまの魔法は……まるで、まるで……あ、あなたは……まさか!」

リーダーは察しがついたのだ。

そう、ここにおわすお方が……。

「それ以上はいけない!」

ノアはリーダーの頭をがしっと鷲づかみにする。

「貴様の記憶を消去させてもらおう……」

……その姿を見て、リーダーは歓喜の涙を流す。

「おお! 喜べ同志諸君! ノアール様だ! 闇の大賢者ノアール様は、【福音書】の予言通り、2000年後に復活なさったのだ!」

「やめろぉおおおおおおお!」

ノアがぶと同時に、作系の魔法を発させる。

リーダーの男から、ダークノワールブラックシュバルツ団の記憶を、一切合切消去する。

殘りの邪教徒たちにもまた、同じ魔法を施し……。

ノアは、その場を去って行ったのだった。

ノアは全てを終えて、自宅へと帰ってきた。

彼はベッドにうつ伏せになると、じたばたと手足をかす。

「うがぁああああ! どうしてこうなるんだよぉおおおおおおお!」

わめき散らすノアを、呆れた表でロウリィが見ている。

『で、ノア様? あのダークノワールブラックシュバルツ団ってだせえ名前の教団、もしかしてノア様が作ったの?』

『う、う、うるへー! 當時はかっこいいって思ってたんだよ!』

……そう、あの教団があがめていたのは、前世のノア、つまり大賢者ノアールだった。

『闇の組織なんて作るなんて、悪いひとっすね』

「そんなもん俺作ってないもん! あいつらが、勝手に組織を作ってたんだよ!」

『どーゆーこと? 組織を立ち上げたのはノア様じゃないの?』

「んなことすっかよ! あれは、元々は俺の一人遊びだったんだよ。これ見ろ!」

ノアは教団のリーダーが持っていた、1冊の黒い、分厚い本を放り投げる。

『ダークノワールブラックシュバルツ団 福音書……なんすかこれ?』

「當時の俺が作った妄想日記だよ」

『も、妄想……?』

「ああ。もしも俺が闇の世界の覇王だったら、って元に書かれた自作小説だよ」

『うわぁ……』

「なんだようわぁ……! って! ああそうだよ痛々しいよこんちくしょう! でもいいだろ! 妄想小説くらい書いても!」

ロウリィはため息をつく。

『つまりなんすか? あの教団はノア様が立ち上げたんじゃなくて、ノア様の殘したこの福音書という名の妄想日記を読んで、共したやべえ奴らが作った教団ってことなんすか?』

「そうだよチクショウ! この間の闇の超人薬といい、どうしていまになって黒歴史が俺を殺そうとしてくるんだよ……!」

ノアにとって闇の大賢者時代は、忘れ去りたい過去であった。

『しかしこの妄想日記もさることながら、これを本気で信じる邪教徒たちもやべーっすよね……』

「ほんとだよ! ……ま、まあいいさ。闇の教団はぶっ潰したんだ。もう大丈夫だろ、絶対……」

と、そのときである。

「ノア様! ご無事でしたかっ!」

「お、おお……ディーヴァ」

騎士団長ディーヴァは涙を流しながら、ノアに抱きつく。

「よくぞ……よくぞ死地より帰ってこられました!」

「しち……?」

ディーヴァは、ノアが凄まじい敵と尋常でないバトルを繰り広げ、ギリギリで勝利して帰ってきた……と思っている。

実際にはノアの圧勝であった。

「ノア様、次こそは我らをお連れくだされ!」

「いや……え、ちょっと待て、次ってなんだ?」

ノアが青い顔をして尋ねる。

懐から取り出したのは、件の黒い羊皮紙だ。

そこには……。

「ノア殿! 敵はまだ、殘っておりまする!」

ダークノワールブラックシュバルツ団の勧ポスターだった。

思った以上に信者がいたのだ、そう……

あの場にいなかっただけで……

ノアは頭を抱えると、いつものようにこうぶ。

「どうしてこんなことになってるんだよぉおおおおおおおおお!」

    人が読んでいる<【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください