《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》38.第七王子は埋もれた才能を見出す(うっかり)
ある日のこと。
俺はロウリィと供に、カーター領にある湖まで、釣りにきていた。
「はぁ……やっと一段落ついたわ」
『ダークノワール・ブラックシュバルツ団との戦いの事後処理で大変だったっすからね』
「お前その名前次口にしたら湖に沈めるからな。しかし……ふぅ、毎度毎度大騒ぎで、俺は疲れたよ」
釣り糸を垂らして數秒。
魚が釣れる。俺は無造作に、白貓ロウリィに魚を放り投げる。
『自業自得じゃないっすか』
ロウリィは魚を頭から丸かじりする。
その間にも俺はぽいぽい、と魚を釣り上げる。
「記憶リセットも領民達に通じないし、どうやったら俺の評判を下げられるんだろうなぁ……」
『ノア様の悪事って基本裏目にでるっすからね……けぷっ』
ロウリィは大量の魚を食べ終えると、仰向けになって寢る。
ぷくぷくに太った白いお腹をスリスリとなでる。気持ちええ……。
『ん? ノア様、あれなんすかね? 湖に……変な棒が2本?』
「ん? ああ……人の足だろ。水自殺じゃね?」
俺は気にせず釣り糸を垂らす。
『あー……そっかー犬神家かぁ……って! 自殺!? ちょっ! 助けてあげましょーよ!』
「えー、でも死のうとしてるんだから、その意思は尊重してあげようぜ」
『それっぽいこと言ってるけど、濡れるの嫌なんでしょ! わかってるんすからね!』
チッ……めざとい貓だ。
まあ俺の目の前で死なれても寢覚めが悪いしな。
俺は重力魔法を使って、水自殺しようとしているやつを、湖から引き上げる。
陸地に引き上げる。
長の高いだ。
長い髪に不健康そうな顔つき、そして極東の【ユカタ】と言われる特殊な服をにつけている。
彼は、どうやら仮死狀態であった。
仕方ないので治癒魔法を施してやる。
『なんだかんだ人助けしちゃうノア様、わたし好きっすよ』
「よ、よせよロウリィ……俺も突っ込みれつつ俺に付き添ってくれる、おまえが好きだぜ」
そんな風にふざけていると、自殺未遂が目を覚ます。
「……ここは?」
『大丈夫っすか? あんた、湖で死にかけてたんすよ?』
「……私はまた、死ねなかったか」
実に殘念そうにがつぶやく。
「ほらな、ロウリィ。死にたがりさんじゃないか。なに、あんた死にたいの?」
「……ああ。もう生きるのが辛くてな。死にたい」
『そ、そんな駄目っすよ! 若いの子が、まだまだ未來があるじゃないっすか!』
「おいおい適當なこと言ってやるなよ。こいつにも死にたくなるような理由があったんだろうからさ。無責任なこと言うなって」
は目をパチクリさせる。
「……あなたは、私を止めないのですか?」
「あんたが決めたことなら、止める権利は俺にはない。だが死ぬなら俺の領地の外で死んでくれ」
しばしは何かを考え込むようなそぶりをすると、俺に言う。
「……領主殿とお見けできる。実はあなた様に、ご相談がありまする」
急にが相談を持ちかけてきた。
うわ、めんどうだ……。
「……私、ダザイと申します。作家業を営んでおります」
『はえー……作家。ん? ダザイ……
小説家……? んんっ? でもだし……』
ロウリィがよくわからんことをつぶやいている。
「作家のあんたがなんで自殺なんてしようとしてるんだよ。結構儲かるんだろ、ああいうのって」
「……いえ、それがさっぱりでして。出す本出す本売れず……正直、辛いのです」
『本が売れなくて辛いんすね。わかるわー』
「はぁ? 意味わからん。なんで売れないと辛いんだよ」
『ノア様の黒歴史である妄想ノートだって、誰かに読んでもらいたくって書いたんでしょ? それが手に取ってもらえなかったら辛くない……あ、あ、やめて! 湖に突っ込もうとしないでゲボゴボボボボボ……!』
俺はロウリィを湖に沈めつつ言う。
「まああんたが辛いのはわかった。けど売れないなら売れる本作りゃいいだけだろ?」
「……それがわかれば苦労はしません。この世界の人たちに屆く語が、私には理解できないのです」
『ぷはっ! なるほど……スランプ作家さんなんすね。何を書けばいいのかって言われても……』
……ん?
これは……利用できるかも知れない!
「ダザイよ。俺がアドバイスしてやろう」
『あ、これノア様が無能ムーヴ思いついたときの顔っす』
「何を書けば良いのかわからない? なら……この俺を書け!」
ダザイが戸いながら首をかしげる。
「ようするに、俺の自伝だ。実在する人のほうが、みんな関心もってくれるかもしれないだろ?」
「……ノア様の自伝。しかし、本にしてくれる人がいるでしょうか?」
「取材には協力するし、本の製作はこっちに任せろ。知り合いの商人に頼めば製本から流通までやってくれるだろう。おまえは、ただ本を書けば良い。もちろん原稿料も払う」
ぽかん……としながら、ダザイが言う。
「……ど、どうしてそこまでしてくださるのです?」
「フッ……そりゃもちろん、困っている人が居たらほっとけないからさ」
『自殺してる人見捨てようとしてたひとが、なーに言ってるンすかね……あ、あ、やめ、釣り糸にしっぽ結びつけないでぁああああああ!』
どぽんっ!
「……ノア様! ありがとうございます!」
ガシッ、とダザイが俺に抱きつく。
「ふっ、気にするな。俺にはわかるんだ。おまえには才能がある。とびっきりのやつがな。その才能を腐らせるのは世界の損失だ」
「……ぐす……私、一生懸命、あなたの自伝を執筆いたします!」
ロウリィが湖から這い出てくる。
ぶるぶる、と水を切りながら俺に尋ねてくる。
『んで、今回はどういう無能ムーヴなんすか?』
ロウリィが思念で語りかけてくる。
この白貓にはもはや、俺の行(むのうむーぶ)が筒抜けのようだ。
俺は溫風を魔法で出し、貓を乾かしながら會話する。
『今回は自伝を使った無能ムーヴだ』
『ダザイさんにノア様の自伝を書かせることと、どう無能に結びつけるんすか?』
『俺が今まで行ってきた無能ムーヴの數々、そしてその失敗を、こいつに書かせて出版するんだよ』
『はぁ……普通、自伝って功験書くもんじゃあないんすか?』
『まあ容はどうでも良いんだ。領民たちが、自分たちの稅金を、こんなしょうもない本の出版に使われていたって知ったら、さすがに好度さがるだろ?』
『んー……まあ……ううーん……でもなぁ。ノア様それ多分逆効果だと思うけどなぁ~』
『それに売れない本を大量に刷って、無駄金を使うバカ領主って、思われたら領民だけじゃなくて書店で本を見かけたやつらからの評価も落ちるだろ?』
『もしこれで本が売れちゃったらどうするんすか?』
『ありえんありえん。だってこの作家、売れない作家なんだろ? なら売れるわけがない』
俺はダザイを見て言う。
「さぁ屋敷へ帰ろうダザイ。じっくり聞かせてやるよ……俺の伝説を!」
「……はい、よろしくお願いします」
かくして、俺はダザイに、自伝を書かせた。
くくく……これで領民どもからの評価も下落することだろう……!
★
それかしばらくの後。
「どうしてこうなった……」
俺は領主の館、俺の部屋で頭を抱えていた。
部屋の中、機の上に、大量の俺の自伝が積まれている。
『良かったじゃないっすかノア様。み通り、本が売れなくて大量の在庫かかえたんすよね? 何落ち込んでるんです?』
ロウリィが本の山の上で言う。
「バッキャロウ! 在庫じゃねえ! これは、重版分だ!」
『じゅーはん?』
「大売れしちゃって、増刷したってことだよ! チクショウ!」
あの後、ダザイはもの凄い速さで本を完させた。
サブリーナがめちゃ頑張って本を作り、そして流通させた。
……結果、その日のうちに本は売り切れ。
増刷することになった。
しかもサイン本まで作るらしい……。
『あー……やっぱりこーなったっすか』
「んだよロウリィ! こうなるって予想できてたのかよ!」
『そー言ったじゃないっすか……まったく、ノア様は人の話聞かないんだから~』
そこへ、ダザイとサブリーナがってくる。
「ノア様! サイン終わりましたかっ?」
「い、いや……これから……な、なあサブリーナ。マジで本、売れちゃったの?」
「はい! それはもう、空前絶後の大ヒットです!」
「マジかよ……なんでそんな売れたの?」
「それは、ノア様がとても魅力的な人であること! と、ダザイ様の天才的な文章力に他なりません!」
「ええっ!? ダザイって、そんなすげえ作家だったの!?」
売れない作家だっていってたくせに!
『売れてないことと才能がないことはイコールじゃねーってことっすね』
「……ノア殿。ありがとうございます。おかげで、自信が持てました」
ダザイの目が、キラキラ輝いていた。
『はい大文豪もノア教にご信~』
「ノアさまさすがです! ダザイ様のめたる可能を見抜き、こうして大させてしまうなんて! しかも……これ見てください!」
サブリーナが部下に命令する。
もの凄い巨大な箱が、いくつも運ばれてきた。
中には手紙がってる。
「こ、これはなにかなサブリーナ?」
「ノア様へのファンレターです!」
「お、俺ぇ!? 書いたのダザイだろ!」
「ダザイ様の手によって、ノア様の魅力が余すところなく描寫されたおかげで、こうしてたくさんのファンがついたんですよ! すごいノア様!」
ロウリィは本をぺらっ、と前足でめくりながら中を見る。
『ノア様やべーっす……この本の中のノア様、だいぶ腳されてるっす。なんかもう瞬き一つでドラゴン倒してるっす』
「え、できるけど?」
『いやできるんかーい!』
問題なのはそこじゃねえ!
「え、じゃあなにか? ダザイという、実は天才作家のめた才能を見抜いた、ノア様すげーって思われたってこと?」
「「そのとおり、さすがノア様!」」
……しかも自伝のせいで、領民以外の信者(ファン)もできちまったし……!
「ああんもぉ……! どうしてこうなるんだよぉおおおおおお!」
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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