《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》43.第七王子はファッション革命を起こす(の王様)

ある日のカーター領、俺の部屋にて。

商人のサブリーナが、俺の元へとやってきた。

「あん? 新しい服のデザインだぁ?」

俺は機の前に座っている。

膝の上には白貓がとぐろ巻いて座っている。

と見まがうサブリーナ年が、そんな話を持ちかけてきた。

「はい。そろそろ寒くなってきますので、新しいお洋服のデザインを考えているのですが、なかなか思い浮かばなくて。そこで、世界最高の頭脳をお持ちのノア様に、ご助言いただけないかと思いまして!」

白貓ロウリィが、俺の膝の上で言う。

『サブリーナ様、やめといたほうがいいっすよ。この人強いけどバカなので……ふぎゃー!』

俺は尾をぎゅーっと雑巾絞るようにして言う。

「おいおい俺は領主だぞ……。服のデザインなんて……」

……ん?

服……服……なるほど!

「このノア・カーターに任せるが良い!」

「いいんですかっ?」

「ああ。し時間をくれ。最高の洋服を用意しておくからよ」

『どこぞのグルメ漫畫の人っすかあんたは……』

ペコペコ、と頭を下げてサブリーナが出て行く。

あとには俺とロウリィが殘される。

『で、ノア様。何するの?』

「洋服を使った無能ムーヴさ!」

『どうせ失敗するのに……ノア様って1日経つと記憶がリセットされる呪いにでもかかってるんすか……あ、あ、やめてっ。逆さ宙づりはやめてぇ!』

ロウリィの尾を摑んで持ち上げる。

『頭にが上るぅ~』

「りぴーとあふたーみー。ノア様は賢いです。はい?」

『の、ノア様は世界一賢いですぅ~』

俺はロウリィを下ろす。

ぴょんっ、と俺を警戒して距離を取る。

『でも服を使った無能ムーヴなんて、的に何するんすか?』

「ロクデモナイものを、高くサブリーナに売りつける」

『わーほんとロクデモナイ作戦ー』

俺はパチン、と指を鳴らす。

うむ。

「よし、完

『は……? の、ノア様……? なにが完したんすか?』

「だから、サブリーナに売りつける服だよ、服」

『……ノア様。病院、いこ?』

ぴょんっ、とロウリィが俺の肩の上に乗っかる。

前足を俺の額に、ぴたりと載せる。

『領民たちからのストレスで、ついに頭がおかしくなっちまったんすね。だから服なんてどこにもないのに、あるとか言っちゃう……』

「じゃかーしー! 頭は正常だよ!」

『正常ならそれはそれはアウトのような……ふぎゃー!』

ややあって。

「ロウリィくん。これは、俺が開発した【バカには見えない服】だ」

尾をちょうちょう結びされたロウリィが、はて、と首をかしげる。

『ば、バカには見えない服……?』

「あれれぇ~? ロウリィちゃん、見えないの~? この服が見えないってことは~。お馬鹿さんってことですけどぉ~?」

『むかっ! ……み、見えてますけどぉ!』

くく、無理しちゃってからに。

本當は見えてないくせに。

「このノア様特製【バカには見えない服】を大量に売りつける。そうすれば、こんなロクデモナイ服を売りつけた、詐欺師の領主ってことで評判が落ちるだろ?」

『まあ……ありもしないものを高値で売るって詐欺っすもんね。実ないわけですし……』

「あんれぇ~? ろりえもーん、見えてるんじゃなかったの~?」

『み、見えてるわい!』

くくく……ではさっそくこの服を、領民達に売りつけにいこうじゃあないか!

俺とサブリーナ、そしてロウリィは、カーター領にある、アインの村へとやってきた。

「ノア様だ!」「領主さまー!」

村人があっという間に集まってくる。

みな、今日も元気そうに笑ってやがる。

『その目は曇ってるんすけどね……』

「ごきげんよう諸君! 今日は俺が作った、まったく新しい服を持ってきた!」

「「「おおー!」」」

村人達が歓聲を上げる。

「ノア様のお作りになられた服!」「是非とも來てみたいわ!」「ノア様、早く見せてください!」

くくく……期待値が上がってるぞぉ。

「おいサブリーナ。見せてやれ」

「は、はい……」

サブリーナが困している。

手押し車(カート)を、領民達の前に、持ってくる。

「これがノア様のお作りなられた、お洋服……です」

「「「え……?」」」

カートの上の服を見て、みなが困していた。

「ど、どこに……?」「洋服なんて見當たらないぞ……?」

くくく、そうだろうそうだろう。

そういう反応になるよなぁ。

「これは俺が作った、【バカには見えない服】だ」

「「「な、なるほど……?」」」

『す、すげえ……。あのノア様至上主義がたたき込まれた訓練された領民ですら、困してるっす……これは大事件っすよ』

たらり、とロウリィが汗をかきながら言う。

「今ならたったの1萬ゴールドだ。おまえら、買うよな? ん?」

『うわーさいてー。存在しないものを1萬で売るなんて』

「え、ロウリィ~? 見えないのこれがぁ~? おばかちゃんってことですかぁ?」

『くっ……! いちいち腹立つぅううう!』

俺は領民達を見る。

俺がイエスと言えばイエス、右と言えば右を見るような連中だ。

俺が買えと言えば當然……。

「「「か、買います……!」」」

くくく……! 大功!

「の、ノア様ぁ……いいのですか? これは……詐欺のような……」

サブリーナが恐る恐る聞いてくる。

こいつも見えない側だったもんな。

「詐欺なものか。俺は【バカには見えない服】という実在するものを売りつけてるじゃあないか」

「で、でもぉ~……」

「この服、量産してあるから、全國に売って來いよサブリーナぁ?」

『うわー……さいてー。純粋無垢なサブリーナちゃんくんを、悪事に巻き込むなんて……』

これで俺の悪行が広がればの字よ。

くくく……!

かくして、俺の作った服は領民達、そして全國に売られることになったのだ。

いやぁ、俺の評判が落ちるの、楽しみだなぁ……!

後日。

「さすがです、ノア様ー!」

「ふぁ……!? な、なに!?」

サブリーナが笑顔で、俺の元を訪れる。

この間の困り顔から一転、すごい笑顔だ。

「やはりノア様はすごいお方です!」

『ど、どうしたんすかサブリーナちゃんくん。ノア様に詐欺の片棒を擔がれてたのに……?』

「いいえ、詐欺ではありません! ノア様のお作りなった畫期的なお洋服が、全國で売れしてるんです」

「『な、なんだってー!?』」

そんなバカな……!

あり得ない……!

『なんでっすか!? だって……バカには見えない服って、ようするに噓ついて、何もない服を売りつけて金を巻き上げるっていう、詐欺だったんすよね?』

「ロウリィさん。それが違うんです! ノア様は、本當に、【裝著すると特定の人には見えなくなるお洋服】を作ってたんですよ」

『んなっ……!? ど、どゆことー!?』

あれ、ロウリィ、もしかして気づいてなかったのか……?

「ノア様のお洋服、アレはにつけると姿が消えるお洋服だったんですよ」

『あれ噓じゃなかったすか!? で、でもわたしも含めて、カーター領の人たちみんな見えてなかった……ハッ! ま、まさか!』

ロウリィが、戦慄の表を浮かべる。

『カーター領の人、バカしかいないから、ノア様の服が見えてなかっただけ!? 実は最初からあったってこと!?』

「その通りです! ロウリィ様!」

『まじっすか……なんすかこの無駄な技力……!』

「え、俺ちゃんと言ったじゃん。バカには見えない服って。ちゃんと作るに決まってるじゃん」

『いやでも、だって普通考えないっすよ……元ネタのあの話でも、実在しない服だったし……』

「あ? 話ってなんだよ。俺は最初からちゃんと言ってましたしー」

『いやでもそれを実現させるなんて思わないじゃん! すげえなあんた、逆に……!』

……まあ、何はともあれだ。

「え、なんで売れたの? あんなゴミが」

「ゴミなものですか! 軍部からは、偵察用にってバカ売れしてますし、そうでなくても、ノア様の服のデザインは最先端で素晴らしいってことで、若い層からお年寄りまで売れまくってますよ!」

『で、でも……バカからは見えなくなるんすよね?』

「見えなくなる人の條件を設定できるんですこれ!」

『なるほど……條件を【バカ】以外に設定できるんすか。たとえば男とかにすれば、男からは見えなくなる服になると……す、すげえ、無駄にすげえ……』

「しかも條件のところに、ファッションテーマをれると、フォルムも自在に変わるんですよ! さらにさらに、犯罪者が悪用できないようにって、悪事を働こうとすると高圧電流が流れるので安心安全に使えます」

『すっっっっっっっっっげえぇ無駄に凝ってるっすね!』

「これは革命です! 誰しもが自由に、自分の思うお洋服をデザインできるんですよ? すごいです!」

キラキラキラ、とまるで銀河のような目を俺に向けるサブリーナ。

ああこれ、またか?

またしてもか……?

「ノア様のおかげで、今この服がバカ売れして、うちの商會は大もうけです! ありがとうございます、ノア様!」

「あああもぉおおおおお! どうしてこうなるんだよぉおおおおおお!」

……と、ここまでの一連の様子を、黒犬ことナベリウスは、ずっと黙ってみていた。

そして、ナベリウスが、一言。

『なんだこの、バカの集まりは……?』

『ねぇ、ナベちゃんも、そー思うっすよね』

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