《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》50.第七王子は弟子り志願者をテストする

ある日のカーター領、俺の部屋にて。

「ノア殿! ご相談があるぞ!」

騎士団長の騎士、ディーヴァが、部屋にってきた。

「後にしろ、俺は今……忙しいんだ」

『ふにゃーん♡ にゃーん♡』

俺はロウリィのブラッシングをしている。

寒くなってきたからか、こいつ冬が生えてきたのだ。

整えてやらないとすぐにもこもこになるのである。

『ノアしゃまぁ~♡ おなかのほうも~♡』

「ったく、めんどうだなぁおい」

『ふにゃぁああああああん♡』

の処理しておかないと、部屋中が貓のだらけになるから、仕方なくやってるのだ。めんどくせえ。

「魔法でつるっぱげにしようかな」

『鬼っすかあんた!』

処理を終えた俺は、ディーヴァに向かい合う。

「んで、なんだよ」

「うむ! 実はカーター領に、大量の剣士が來たのだ!」

「はぁ? 剣士だぁ? 何しに來やがったんだ」

「みな白金の剣聖である、ノア様に弟子り志願だそうだ!」

白金の剣聖とは、前々世の俺のことだ。

前々世での活躍が、コミックスに載った結果、ひょんなことから、世間に広まってしまったのである。

『漫畫を読んで自分も剣聖みたいになりたいって、思ったんすかね』

「ミーハーな奴らめ」

『で、どうするんすか? 弟子、取るんすか? まあどうせそんな面倒なこと、するとは思えないっすけど』

ロウリィの言うとおり、俺はそんなめんどっちいことなんてしたくない。

さて…………よし。

「ディーヴァ。弟子り志願者をこの屋敷に連れてこい」

「む! 何をするのだ、ノア様!」

「テストだよ、テスト。弟子りしたいってんなら実力を示してもらわないとなぁ」

「なるほど! 了解した! では志願者3000人を集めてくるぞ!」

さ、3000人もいるのかよ……マジか……世の中ミーハーなヤツ多すぎない?

ディーヴァが部屋から出て行ったあと、ロウリィが俺に言う。

『弟子なんて取る気ないでしょ?』

「ったりめえだろ」

『んじゃなんでテストなんて……あ、無能ムーヴ?』

「いえす無能ムーヴ」

『あんたもこりないっすねぇ……』

やれやれ、とロウリィがため息をついて、俺の前に座り込む。

尾でブラシを持ち上げて、ぐいぐい、と押しつけてきた。

こいつまたブラッシングしてしいのか。

ったくしかたねえな。

俺はブラシをけ取る。

ロウリィは膝の上にお座りする。

をブラシですきながら會話する。

「弟子り志願者を使った無能ムーヴだ」

『ふにゃ……♡ 的に何するんすか……?』

「志願者達を……いびりたおす! 無理難題を押しつけて、全員不合格にしてやる!」

『そんなこと……ふにゃ♡ して何か意味……にゃふん♡ あるんすかねぇ……ふにゃぁあん♡』

「俺を慕ってやってきた弟子り志願者に対して、いびりまくる。すると、【なんだあいつひでえヤツだ】って評判を落とすことになる。という無能ムーヴだ。わかったか?」

『ふにゃ~~~~~~~~ん♡』

わかったのかそうでないのか、さっぱりわからんな……。

「しかしおまえ……の量やばいな。やっぱつるっぱげにするか?」

『それやったらノア様つるっぱげにしてやるっすからね』

「冗談だよ。さて……いくか。くくく……新人どもをいびり倒してやるぜぇ!」

カーター領の裏庭にて。

集まった弟子り志願者は3000人。

『こんなクズ王子に弟子りしたいなんて、目が節なんすかねみんな……ふぎゃー! 雑巾絞りやめてぇ!』

俺はロウリィのを雑巾のように絞りながら、志願者にいう。

「諸君! 俺がうわさのノア・カーターだ! よく集まったな!」

志願者達の注目が俺に集まる。

ロウリィは俺の手からすり抜けると、肩の上にのる。

「弟子りのテストをこれから行う……お題はこれだ」

ぱちん、と俺は指を鳴らす。

すると、志願者の手に、1振りの木刀が出現した。

『創造魔法っすか……無詠唱で、こんな高度な魔法を、しかも3000人分するなんて、相変わらず規格外に無駄にすごいっすね……』

「テスト容はシンプル、ずばり、素振りだ」

「「「「す、素振り……?」」」」

みな、肩すかし食らったような表になる。

さぞ難しい試験だと思っていたのだろう。

くくく、甘い奴らめ。

「ただし! 俺が辭めろ、というまで素振りを続けろ」

志願者達は困する。

「あ、あのぉ……それに何の意味が……?」

意味などない。

単なるいびりだ。

「弟子になったら教えてやろう」

「は、はぁ……」

『教えるも何も意味のないただの新人いびりなのに……』

ロウリィは小さくと息をつく。

「そんじゃはじめろ。辭めたくなったどうぞご勝手に。俺は去る者は追わないよ」

俺は指を鳴らして、魔法でソファとパラソルを出現させる。

優雅にソファに座って、飲みをちゅーちゅーと吸う。

志願者達は、木刀片手に困していた。

「ど、どうする……?」

「と、とにかく素振りしようぜ」

ぶんっ! ぶんっ! ぶんっ!

『あの人らまじめっすね。素振りはじめましたよ』

「くくく……バカな奴らめ。奴らの努力などまったくの無意味だと知らずになぁ……くかかかかか!」

『ノア様の言って基本的に悪役(ヒール)っすよね』

俺はソファに寢そべり、コミックを広げ、飲みをのみつつ、ロウリィの繕いをする。

「くくく……こうしてなめた態度をとるのも、無能ムーヴの一環だ。決して、サボってるんじゃあないぞ?」

『めっちゃサボってますやん。まあ……こんなふざけた態度とってれば、弟子りなんてやめたってなりますよね』

1時間くらいすると。

ちらほらと、木刀を投げ出して、帰ってく奴らが増えてきた。

2時間、3時間と経過すると……もっとなくなっていく。

「ぜぇ……ぜぇ……」

「はぁ……はぁ……」

『まだやってる人いるっす……なんだか可哀想っすよ』

「いーんだよ。あいつらは自分の意思で、好きでやってるんだからよ」

やがて、日が暮れてきた。

6割くらいが帰ったな。

「頃合いかな」

俺はソファから立ち上がって、殘りの面子を見渡す。

「あー諸君。そのままで耳をこちらに傾けたまえ」

汗だくの志願者達が、俺を見上げる。

「や、やっと終わりか……」

「長かったぁ~……」

くくく、バカめ……!

今から貴様らを、絶の淵にたたき込んでやるっていうのによぉ!

『まじあんたなんで主人公やってるんすかね』

「日も暮れてきたし、俺は今から屋敷に帰る。だが、お前達はまだ素振りを続けろ。俺が寢ている間も、ずっとな」

志願者の一人が、肩をふるわせる。

「ふ、ふ、ふざけんなぁ!」

持っていた木刀を、俺に向かって投げ飛ばす。

俺はそれを避けない。

バシッ、と木刀が空中でたたき落とされる。

「い、今のは何を……?」

「は? 見えなかったのおまえ?」

『の、ノア様の手に、いつの間にか木刀が……?』

「木刀でたたき落としただけだ。なんだ、俺の剣も見えなかったのか。だいぶ手を抜いたのだがなぁ」

嫌みったらしく、俺は言う。

「おまえ、才能ないよ。もないし。この程度で音(ね)を上げるような腑抜けは、帰った方が良いぜぇ~?」

『うわぁ……この人、殘った4割の志願者を、ふるい落とそうとしてるっす』

ぶるぶる、と男は肩を怒りで震わせると、木刀を投げ飛ばす。

「やってられっか! くそっ!」

彼と同じように、途中で投げ出す奴らが続出した。

ぞろぞろと立ち去っていく。

「弟子りすれば楽に強くなれるって思ったのによ、くそ!」

「ふざけたことしやがって!」

「周りに言いふらしてやる、ホワイトノアは弟子り志願者に冷たい、ひでえヤツだってな」

計畫通り……!

『おー、珍しく功してるじゃあないっすかノア様』

「でしょ~? うははは! ノアちゃん大勝利!」

後日。

「さすがだぞ、ノア様!」

「ふぁ……!? な、なんだよぉ……!」

俺の部屋に、騎士団長ディーヴァがやってきた。

しかも笑顔だし……え、嫌な予しかしないんだけど。

「ノア様のおかげで、優秀な剣士が我が領地の騎士団に増えたぞ!」

「ゆ、優秀な剣士……?」

「うむ! 先日の弟子り志願者たちだ。殘ったのは100人! 彼らはみな、超一流の剣士だったのだ!」

「なっ、なんだって!?」

『あの場に居たのって、全員がミーハーなやつらじゃなかったんすね』

くそ……!

一般人にプロが紛れ込んでいたのか!

ディーヴァは心したようにうなずく。

「さすがノア様。一見何の意味もないようなことをして、やる気のない輩をふるいにかけていたのだな! そして、本當に殘った、超一流の剣士を、自らの目で見極めた……ということなのだな!?」

『「深読みしすぎだろ……!」』

俺とロウリィのつっこみも、ディーヴァの耳には屆いていない。

「殘った100人の超一流の剣士たちは、どれも英雄レベルの強さを持っている。ノア様のおかげで騎士団のレベルが格段に上昇したぞ! やはりノア様はすごい!」

「あ、いや……その……」

「しかも出て行った2900人も、あとからぞくぞくと騎士団にってきた。みな悔しくなって、基礎から學び直しているのだ。あえて発破をかけ、彼らの忘れていた剣への熱まで引き出すなんて、なんてすごい人なのだ!」

うわぁああああああああん!

深読みしすぎだよぉおおおおお!

『深読みって言うか、妄想のレベルっすねもう』

「どうしてこうなるんだよぉおおおおお!」

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