《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》53.ロウリィとナベリウスの飲み會

第七王子、ノアが帝國でやらかした……その日の夜。

帝都の下町にある、酒場にて。

悪魔ナベリウスと魔神ロウリィは、人の姿となって、席に座っていた。

ナベリウス。普段は黒い犬の姿をしているが、今日は犬耳を生やした黒髪のになっている。

「いいのかロウリィ。主を放っておいて、飲むなんて」

ロウリィ。普段は白貓の姿だが、今日は貓耳白髪のの姿。

「いいんすよ、しばらくはあの人、帝都に留まってサボるつもりなんすから」

先日、闇の組織(ダーク・ユニオン)との戦い(自演)を得て、ノアは大けがを負った……という扱いになっている。

結果的に皇帝たちの歓心を買うはめとなったが……

もっけの幸いとばかりに、彼はケガを治すふりをして、帝城のベッドで惰眠をむさぼっている。

その間ひまなので、こうしてロウリィはナベリウスをって、飲みに來たわけだ。

「らっしゃい」

「あ、わたし生で。ナベちゃんは?」

「ワインで」

そのほかにつまむものを頼む。

ぺこりと頭を下げると、給仕は去って行った。

「そういえばおまえが単獨で何かするのって見ないな。ずっとノアの側にいる気がするぞ」

「そんなこと……………………………………あるっすね」

ごとん、とテーブルにジョッキとグラスが置かれる。

「んじゃかんぱい」

ちんっ……。

「今日は無禮講じゃ! あのバカ王子の部下として、あいつをけちょんけちょんに貶しまくってやろーっす! ね、ナベちゃん!」

「ああ。オレ様もうっぷんが溜まっていたところだ」

ごくごく……。

1分後。

「ふにゃぁ~~~~~~~♡ ノアしゃまぁ~~~~~♡ らいすき~~~~♡」

……顔を真っ赤にしたロウリィが、えへえへと上機嫌に笑いながら、酒を飲んでいた。

ノアしゃまとは、言うまでもなくノアのことだ。

「おまえ……酒弱すぎだろ」

「ふにゃ~♡ よわくないもーん」

といいつつ、ジョッキはまだ3割も飲み終わってない。

だがロウリィのは、腕の先まで真っ赤になっていた。

一方でナベリウスはグラスワインを飲み終わっても平然としている。

「おまえ……あの王子が嫌いなんじゃないのか?」

「ばっかぁ~。ナベちゃん……ひっく……その目は節かっ! 節なんすね~」

ロウリィはナベリウスの肩に尾を回し、うざがらみする。

「悪魔のおめめ目は節アイなんすね~♪ きゃははははっ!」

「うっぜえ……」

「ノアしゃまのおめめも節だけどぉ~そんなところも素敵なんすよぉ~♡ きゃっ♡」

デレデレした表でロウリィが語る。

「でねー、ノアしゃまってばー素敵なんすよー……♡ あれはねー」

ナベリウスはうんざりした表で、ロウリィの愚癡……。

というか、ノアへのノロケ話をしまくる。

あんなことがあって嬉しかった、こんなバカを一緒にして楽しかった……。

そんな思い出を、実にロウリィは楽しそうに語る。

ふと……ナベリウスは疑問を口にする。

「お前、ノア様のこと好きなの?」

「あったりめーだよぉ!」

「それにしては、リスタたちみたいにあんまり態度に出さないよな。過剰にベタベタしないというか」

「そ、それは……」

「それは?」

「は、恥ずかしいじゃん……」

ロウリィはさらに顔を赤くして、ジョッキに顔を隠す。

「な、ナベちゃんはどう思ってるんすか? ノア様のこと」

「敵。いつか泣かす」

「わはは! あの人ひっでーすもんねぇ! やれやれナベちゃんぶっとばせー!」

……しかしナベリウスはさらに疑問を抱く。

「原初の七竜神(ピュア・カラーズ)の一人のくせに、人間に仕え、あまつさえ好きになるって……おかしくないか?」

原初の七竜神。

それは、神が天地創造の際に、作り上げた七柱の最強の竜の魔神達だ。

1匹1匹が強大な力をもつ。

このロウリィも、あらゆる壊れた者を直し、死者すら蘇生するほどの、凄まじい治癒の力を持った白竜である。

そんな存在が、なぜ人間などと言う、彼らからしたら矮小な存在に、そこまで気をかけるのか?

「おかしくないっすよ」

ロウリィはぽつりとつぶやく。

「わたしさ……ずっと獨りぼっちだったんすよ。原初の七竜神なんてご大層な冠がついちゃってるせいで……さ」

ロウリィは語る。

は恐るべき力を持った竜。

それゆえに、人間達から畏怖のを。

魔族達からは……自分たちよりも強い存在として、忌避されていた。

「人間にもなれない、魔族にもなれない。ほかの七竜神たちとも……どうにも折り合いがつかない。ずっと……ずっとわたしは一人だったんすよ。こんな力もっちゃったせいでね」

語り口から、ロウリィは強い力を必要としていないように、ナベリウスにはじられた。

それどころか、自分の力を嫌っている節さえある。

「強すぎるせいで、仲間はずれにされてたんだな」

「そっす……でもね、あの人は違うんす」

どこか遠く、昔を懐かしむような目を向けて……ロウリィは微笑む。

「ノア様、1歳のときだったかな。わたしが書庫に引きこもってたらさ、勝手にってきたの。そんで、退屈だから本を読ませろってさ。相手は七竜神っすよ? それなのに偉そうに命令してきてさ……」

実に嬉しそうに、楽しそうに……いう。

「出て行けって言ったら、ノア様なんていったか知ってる?【調子のんなザコ】だって」

神が生み出した最強の魔神を前に、ザコと言った。

ロウリィは、初めてだった。

自分を怖がらず、まっすぐに、見てくれた人は。

自分を、殺そうとしてこない、力を持った存在は……はじめてだった。

「あのときからかな、わたし……あの人にずっと惹かれてるんすよ。ほら、見ててあきないじゃん? 毎日たのしくってさ……だから……離れたくないのかなぁ」

「……………………おまえ、ノア様のこと、好きすぎるだろ」

ロウリィは顔を上げると、にぃ……と笑って言う。

「ちがうっすよ」

「ちがうのか?」

「ええ。ちょー好き。宇宙一好き。たとえ明日世界が滅びるとしたら、わたし、あの人に好きって言うっす」

……それくらいしないと、自分の思いを言わないということだろうか。

「すぐに言えばいいのに」

「ば、ばかぁ! 茶化されるに決まってるじゃないっすか! いやっすよそんなの、恥ずかしい……」

ぷいっ、とそっぽを向いてロウリィが言う。

「ま、まあ? ノア様がね、土下座して、【ロウリィ様お願いしますぅ、どうかおれと付き合ってください~】ってけなく懇願するならぁ? つきあってやっても、いいっすけどね」

「うわ、このめんどくせー」

「にゃに~」

と、そのときだった。

「お、なんだおまえらこんなとこで飲んでたのか」

「ふぎゃああああああああああああああああ!」

ロウリィが顔から湯気が出るレベルで真っ赤にすると、その場で天井まで飛び上がる。

「ノア様。どうしたんだ?」

「寢てるのもあきたし酒でもって思ってよ……。なんだ、おまえら二人で飲んでたの? 2人でなんてさみしーこった」

「うっさいな」

一方で、ロウリィは顔を赤くした狀態でフリーズしていた。

「どうしたろりえもん?」

「あ、あ、あんた……ど、どどど、どこから!? どこから聞いてたっすか!?」

ロウリィは、ノアへの恥ずかしい告白を、ノア本人に聞かれてないか気にしているのだ。

「どこからも何も、なんもきいてないけど……どした?」

「な、なんでもないっすよ! アホ王子が今日も無能でアホですねって、ナベちゃんと愚癡ってただけっす! ふたりで嫌味言いまくってた……そうだよね!?」

……いや、ロウリィのノロケが10割だったのだが……。

「はいはいそうだな」

言わないであげておいた。

一応この白貓は同僚ということもある。

あんなこっぱずかしいことを他人の口から証されたら、それはいやだろうから。

「ま、いーや。おい飲むぞ。今日はおごりな。ロウリィが」

「なんでだよ! もうっ、ほんとあんた、さいてーのクズなんすから~」

ナベリウスはこっそりと、ロウリィの表を覗う。

ノアを罵倒しているときの顔は、とてもとても生き生きとしている。

(ああ、なるほど……)

ようするに、この白い貓は、ノアのことが大好きで、彼の起こす騒に付き合うことを、まったく嫌だとじていない。

だから、恐るべき力を持った魔神は、彼にずっと付き従っているのだと……。

ナベリウスはこの日、初めて、気づいたのだった。

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