《【書籍化】左遷された無能王子は実力を隠したい~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから…》56.悪魔、領民の様子を見に行って驚愕する

第七王子ノアは、帝國での自墮落な日々を送っていた。

ある日の事。

悪魔ナベリウスは、主人であるノアのもとへいく。

「『ひゃっほーい! プールさいこー!』」

ナベリウスは、帝城の裏手にある庭。

そこはかつて、騎士たちの訓練場があった場所。

しかし今は……プールになっていた。

『どういうこと!?』

『あ、ナベちゃんちーっす』

「おう、ナベ。お前もプールりに來たのかー?」

ノア、そしてロウリィは、眼前に広がるトロピカルなじのプールにいた。

ベッドタイプの浮きに、サングラスをかけたノアが寢そべっている。

そのおなかの上で、これまたサングラスをかけて寢そべっている。

『お前ら何やってんだよ……』

「『プールでバカンス』」

ノアが魔法でトロピカルジュースを取り出し、ちゅーちゅーと吸う。

プールでジュースを飲んで寢そべっている、確かにバカンスだ。

『プールなんてなかったぞ? どうしたのだ?』

「皇帝におねだりしたら、すーぐ作ってくれた」

『おまえ……仮にも一國の王子なのに、別の國の王にたかるような真似して、王族としてのプライドはないのか?』

「微塵もありません★橫ピース」

『ナベちゃん無駄っすよ。この人王族とか微塵も興味ないんで』

『なぜこんなやつが王子やってるんだ……?』

それは、謎である。

はぁ、とナベリウスがため息をつく。

『ナベちゃんプールはいろーよー』

『斷る』

プールサイドに、黒犬ナベリウスがお座りする。

『あ、皮濡れるのきにしてるんすか? だいじょーぶ、ノア様の作ったペット用の水著は、なんと完全防水なのに、水のは味わえるというすごい水著なんすよ!』

『おまえ自分でペットって言ってて悲しくならないか? 魔神のくせに……オレ様はいらん』

ふい、っとそっぽを向くナベリウス。

にやりとノアが笑う。

「はっはーん、もしかしておまえ……泳げないな」

ぎくり。

『な、なにを馬鹿なことを! お、オレ様は泣く子も黙る悪魔だぞ! 水が怖いわけがないだろ!』

「『ほー……』」

にやり、とノアとロウリィが邪悪に笑う。

「ほんとは怖いんだろぉ? そうなんだろぉ?」

『ふん。オレ様はそんな子供っぽい挑発に乗らんぞ』

「いまだ! やれロウリィ」

『ボールを相手のゴールに、しゅぅうううううと!』

いつの間にか、ナベリウスの背後にいたロウリィ。

勢いをつけて、バックドロップをかます。

どっぽーん!

『あっぷ、あっぷ、わふ、わふ! お、おぼれるぅ~』

ナベリウスは水面から顔を出して、必死で呼吸しようとする。

ノアの予想通り、この悪魔は泳げないのだ。

「いいぞロウリィ、ナイスシュート!」

『ノア様ないすアシスト!』

『いいから助けろバカコンビぃいいいいいい!』

ややあって。

ノアたちはプールサイドにいた。

『ナベちゃんごめんって、ほんのジョークじゃないっすか。許してくださいっスよ』

『サンオイル塗りながら謝っても誠意が全くじられんバカモノが』

レジャーシートに寢そべるノアに、ロウリィがサンオイルをぬってあげている。

『しかしノア様、いいのか、領地を放り出して、こんなにのんびりしてて』

ナベリウスがふと疑問を口にすると、ロウリィもまた同調する。

『あー、確かに。ノア様が領地でてもう半月っすからねー。気にならないんすか?』

「ぜーんぜん。いーんだよ。ほっとけば」

『なぜこんなやつが、領主やってるんだろうか?』

それもまた、謎である。

ノアはを反転させる。

ロウリィは尾でサンオイルをぬっていく。

『でも、ノア様。サラさまは結構心配してるんじゃないっすか? 仮にもあなたの婚約者っすし』

「……しゃーねー。おいパシリ犬」

『誰がパシリ犬だ無能王子』

ぱちんとノアが指を鳴らすと、一瞬でナベリウスが、プールの中に転移される。

どぽーん!

『わふ! わふ! た、たすけて……!』

『あーもー、ノア様だめじゃないっすか、泳げない人をプールに叩き込んじゃ』

『さっき! てめえも! 同じこと! しただろうが!』

『あーあー、きこえなーい』

ロウリィは尾をばすと、ナベリウスのをくるんと巻いて、そのまま陸地に引っ張り出す。

「ちょっと領地いって、様子見てこい。あとサラに、俺は元気です、あと1年くらいこっちにいますって言って來い」

『自分で言えばいいだろうが!』

「見てのとおり俺は忙しい」

『プールでバカンスしてるしてるだろ! お使いならロウリィにやらせろよ!』

『いやー、自分ノア様とプールで遊ぶのに忙しいっすから』

『今お前、遊ぶって言ったぞ! くそ! あほ王子にあほ貓、お似合いのあほコンビだな!』

「『いやぁ、それほどでも~』」

『1ミリたりともほめてねええええええ!』

結局、ナベリウスだけが、カーター領に様子を見に行く羽目になったのだった。

ナベリウスは影を使う悪魔だ。

自分の影を自在に変えることはもちろん、影から影へと転移するを使える。

それを使って、ナベリウスは帝國からノアの治めるカーター領へと、一瞬で転移したのだが……。

『どうなってる? 領民が、いないだと……?』

カーター領のアインの村には、人っ子一人いなかった。

そのほかの村を見て回っても、領民の姿はない。

『い、いったい何が起きてる……? とにかく、報を集めないと』

ナベリウスが向かったのは領主の館。

「ナベリウス!」

『セバスチャンか。おい、これはどうなってる? なぜ誰もいないんだ?』

セバスチャンは相を変えて、ナベリウスに抱き著く。

『ぐぇええええ』

「ノア様は! ノア様はご無事なのですか!?」

ナベリウスをがくがくと激しくゆするセバスチャン。

どう見ても異常だ。

『お、落ち著け! いったん落ち著けって!』

ほどなくして。

『はぁ!? 領民が、帝國に戦をふっかけに行っただとぉおおおおおお!?』

ナベリウスは驚愕の表で聲を張り上げる。

『なんで!? 帝國とたたかう必要があるんだよ!?』

「【悪の帝國】にとらわれている、ノア様をお助けするためでございます」

『あ、悪の帝國!? とらわれてる!? どゆこと!?』

セバスチャンは、ノア不在の2週間を語る……。

ノアがいない最初の1日くらいは、みんな何とか我慢していた。

だが3日目になると、領民たちの調が悪くなった。

5日になると幻覚を見だす者が増えた。

一週間になるとノア様を求めて、領民同士で爭いが起きた。

『薬中毒か何かか!?』

「そうです。みな、ノア様欠乏癥になっているのです」

『なんだそのあほ極まる病気は! それと帝國に攻めることに、どうつながるんだ?』

セバスチャン曰く……。

10日目に、サラがみんなに、こういったらしい。

【ノア様が10日も、われら大事なカーターの民を放置するわけがないですわ。これは……何かあったに違いありませんわ!】

『貓といちゃついてたぞ、領民の事なんて頭からすっぽり抜け落ちてたな』

【帝國から帰ってこない……は! まさか、ノア様が捕らわれてるのかも!】

『悠々自適な生活を手放したくないから、帰らないだけだな』

【そのとおりです、サラ様! きっと帝國が、ノア様をとらえて、家に帰してくれないのです!】

【リスタ様もそう思いますか!】

『ああやべえやつが絡んできたぞ!』

【戦いましょう、悪の帝國の手から、大事なノア様を取り戻すために!】

『だいたいの騒のきっかけ、この狂信者のだよなぁ!?』

以上、セバスチャンの回想に対する、ナベリウスのツッコミであった。

「サラ様は、武裝したリスタ様たち全領民を率いて、帝國へと數日前に出発しました」

『す、數日前って……ま、まずい! もうそろそろ帝國につくじゃねえか! おい方角と位置わかるか!?』

ナベリウスはセバスから聞いた報をもとに、領民たちのもとへと急行する。

ナベリウスは自分のを変形させ、翼をはやす。

この悪魔は自分のすらもでできているので、そういうことも可能なのだ。

空を恐るべきスピードで駆け抜けると……。

『なん、じゃこりゃぁああああああああああああああ!?』

眼下に広がるのは、武裝したカーター領の領民たちの姿、だけじゃない。

領民のなかにまじって、明らかにモンスターの姿もあった。

トロール、人狼(ウェアウルフ)、飛竜(ワイバーン)などなど……。

『これ領民軍っていうより、ただの魔王軍じゃねえか!』

ナベリウスはぎゅーん、と先頭に立つ、馬に乗ったサラの前に著地。

『おいサラ! しっかりしろ!』

「……ナベリウス様」

サラの顔を見て、ナベリウスは絶句する。

その目は、深い悲しみと絶に沈んでいた。

……おそらく、ノアの不在を、本気で心配していたのだろう。

まともに寢ていないのだろうことが、目の下の濃い隈から察せられた。

別にあのバカ王子をかばう気は一切ない。

だが、馬鹿のせいでこの子がつらい目に合うのはおかしいし、ほっとけない。

『ノア様からの伝言だ。元気でやってるって』

「……わかりましたわ」

『そ、そうか。よかった。そのうち帰るから引き返しても問題』

「全軍! 速度を挙げなさい! 今日中に帝國に乗り込みますわよ!」

「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」」」

『なんでじゃああああああああああああああ!?』

どどどど! と領民たち、そして魔たちが、帝國に向けてばく進する。

『さ、サラ! 落ち著け! ノアは無事だ!』

「ノア様は、わたくしたちを心配させまいと、あえて大丈夫だと噓をついているのですわ!」

『深読みしすぎだって!』

その後ろから、馬にまたがるリスタの姿が。

「サラさま急ぎましょう。使いの者を出したということは、恐らく今最大のピンチを迎えているのです! これは、ノア様の無言のSOS!」

『火に油ぶっかけるのやめろ! なんなの、大火事にするのが趣味なのかおまえ!?』

「ノア様ぁあああああああ!」

「「「うぉおおおお! ノア様ぁあああああああああ!」」」

やばいやつらの大群が、帝國に押し寄せようとしている。

『こ、これはなんとかしないと! ノア様に報告だ!』

ナベリウスは一瞬で帝國に転移する。

『ノア様! 大変だ!』

「『ひゃっほーい! プールさいこー!』」

『のんきにプールなんかってんじゃねえぞバカコンビぃいいいいいいいい!』

……かくして、ノアをめぐる帝國軍とカーター領軍の戦いが、幕を開けるのだった。

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