《【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。》30.大切なモノ

子供達に食事を食べさせていると、その騒ぎを聞き付けた母親がきた。

「ふたりともー、あんまりお客様にご迷おかけしちゃだめ......って、こらー!? なんであなたたちがお客様のお夕食を食べてるの!?」

「あ、いいんですよ。 僕が食べていいよって言ったので......僕はそれほどお腹もすいていないし」

「そ、そうなんですか? では、お代金から引かせていただきますね」

「あ、いえ、それはきちんととってください」

「よ、よろしいんですか?」

「はい。 この食事は僕に出していただいたものですから」

「すみません......ありがとうございます」

申し訳無さそうにされ、僕は苦し紛れに話題を変えた。

「あー......そ、そうだ。 神木主のアトラさんと子供達は凄く仲が良いんですね?」

「え......ええ。 二人ともアトラさんにはたくさん遊んでもらって、凄く懐いてますね。 彼には謝しかありません」

「アトラさんも嬉しいと思いますよ、ああして子供達が味しい食事を屆けてくれるんですから」

「そう、ですかね。 でも......」

その時、僕は店主の顔が暗くなったのをじた。

「......アトラさん別の町に住んでらっしゃるご家族を亡くされてるんです、魔族の襲撃にあったようで......シュウとリズくらいのお子さんもいたと聞いてました」

「......そうなんですか」

大切な人を亡くしていたのか。

「彼は町に危機が迫っていると知らせがあったのですが、『神木主の自分がここを離れてしまうと神門が作れない』と村の事を想って殘ってくれました......本當に謝してもしきれません」

アトラさんは、だからシュウとリズに対して......。

家族を失ってなおも戦い続ける......そして今度は守り続けた村が。

その心の負擔は計り知れないな。

食事を終え、食がさげられた。子どもたちはお風呂にるらしく、ばたばたと部屋を出ていき、殘ったのはなんだか申し訳なさそうな彼と僕の二人になった。

眉間にシワを寄せる彼。ど、どうしたんだ?

「......どうしたの、リアナ? お腹痛いの? 食事が口にあわなかった?」

「い、いえ、お料理はおいしかったですよ......! ごちそう様でした。 ......その、ご主人様であるレイ様が子ども達へ食事を差し上げていたと言うのに、私は......」

「え、あ、ああ、大丈夫だよ。 長旅で干しくらいしか食べれてなかったし、お腹空いていたでしょ? 我慢して倒れちゃったりしたら大変だしさ。 食べて良かったよ、うん」

る程、それを気に病んでいたのか。優しい子だな。ほんとなら自分も子ども達へ食事をあげたかったんだろう。

「......申し訳ない、です」

「そんな事ないよ。 僕、あんまりお腹すかない質だからさ、気にしないで」

を指先ででながら、誤魔化すように笑う。

「え? そ、そうなんですか」

「うん、それに」

「はい」

「......僕も小さい頃は、奴隷だったからさ。 だされる食べもごくわずかで......よくお腹を空かせていて」

ああ、懐かしいな。また思い出してしまう、彼の聲を。

「......そうなんですね」

「うん。 でも、そのとき助けてくれた人がいて......一緒の奴隷の子だったんだけど。 『私はいいから、私の分も食べて大きくなりな』って、いつも食事を分けてくれたんだ......自分も空腹だったはずなのにさ。 ......だから今度は僕も、同じ事がしたくなった」

僕も彼のように、手の屆く範囲でいい。出來ることがあれば、手を差しのべてあげたい。

「レイ様はお優しいんですね」

「......そうかな」

「ええ、あの食事の事は子ども達も忘れることは無いと思います......す、素晴らしいです」

......この子は周囲の目を凄く気にする子だな。常にこちらに注意を払い、何かに怯え自発的な発言もない。

口を開けばこちらを立てる発言ばかり......勿論、その全てがそうという訳じゃないけど、年端もいかないとしては違和を覚える。

――その時、ふと思い當たった。

あ、そうか......奴隷として育てられていたからか。

は奴隷の高級品として厳しく教育されてきた。予想の範疇でしかないけど、辛いこともたくさん経験したんだろう。

おそらく心に傷があるんだ。それを隠し、痛まぬよう自衛している。

おどおどとして、自信がなさげで、視線が殆んど下にある。そう、昔の僕とまるで同じだ。

けど、今はこの子にはそんなしがらみなんてない、奴隷の証こそ刻まれているが、ただの十二歳のの子。

であれば彼は彼らしく、自由に生きるべきだ。リアナに絡み付く呪縛のようなそれをどうにか解消してあげたい。

「リアナ」

「は、はい......」

「僕と君は契約を結んではいるけど、主従関係ではないよ」

「あ、え......」

うリアナの頭をでる。

「だからそんなに怯えなくていいんだよ」

「......え、えと......はい」

この子にはいずれ自分の道を見つけて貰いたい。奴隷としてではなく、自の夢を元にした自分の人生を。

せめて、それが見つかるまで側にいて守ってあげようと、そう思った。

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