《【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。》39.剎那の

「――よそ見してんじゃねえ!!」

僕は紙一重で炎槍をかわし続ける。この炎槍にれれば炎は燃え移り、たちまち燃やし盡くされるだろう。

しかし、既に彼のきを読みきっていた僕には當たらない。

「くっ......!? 掠りもしねえだと!!?」

次々と繰り出されるアトラの槍を見切り、かわし、そして思い出す。

彼が噓をついていたのは最初からわかっていた......でも、ただ一つ噓じゃないモノがあったことも。

言葉を......盡くそう。出來れば、僕はこの人を殺したくない。

「ダメだ、アトラ! 大切なその想いまで、燃えて失くなってしまう......いいのか!」

「うるせえ! 行く宛のない想いなんて、あとは燃やし盡くすしかないだろうが!!」

幾重にも渡る、アトラの槍技を躱しレイは考えていた。彼の怒りと悲しみをどうけ止めればいいのか。

腳や腕を落とせば、容易に戦闘不能にすることは出來る......だが、それでは彼は救われない。

アトラは再度槍を振り回し、襲いかかろうとした――

しかし、その時――

「――シュウ!! リズ!! いやあああーーーっ!!」

宿屋の店主のび聲が響いた。

「ひゃははっ、バカどもが!!」

見ればアトラと応戦している隙に、意識を取り戻したワーウルフは自らの腕を切り落とし、鎖を抜け逃げだしていた。

ワーウルフの両脇にはシュウとリズが抱えられ、開いた神門へと一直線に走り出していた。――森へ逃げるきか!!

「......しまった!!」

僕とアトラの戦闘は激しく、いつの間にか神門から大きく離れた場所へと移していた。

森へ出られ気配を消されれば、二人を助けられるかも怪しくなる。

これ、は......間に合わない!!

......いや

――僕はアトラに問う。

まだだッ!!

「......アトラ!」

「――!! 」

「守りたいもの、本當にもう無いのか?」

アトラと目が合う。

噓をじなかったもの......それは、シュウとリズへの優しい笑顔。

アトラの記憶がよみがえる。

『おとーさん』

『おとうさんー』

『――アトラ、頑張ってね』

しき子らと、する妻の優しい聲。

「――ッッッ!!!!」

そして――

『あとらおにいちゃん』

シュウと重なる、やんちゃだった我が子の面影。

『あとらにいちゃん』

娘がもうし大きくなればこんな風になっていたのかなと、リズを重ねたりした事もあった。

けれど、息子や娘は――妻はもう居ない。

だが、村人が殺されていく中、確かにあった喪失と後悔――。

俺がしたのは家族だけじゃなかった......

――シュウとリズの笑顔。

村の人々、捧げてしまった村人......全てが、俺の

守りたい、守るべきモノだったんだ!!

「うっおおおあああーーーーッッ!!!!」

ビュオオオッ――!!!

アトラは想いを込め槍を投げた。

――決して許される罪じゃない、許されたいとも思わない......でも、だが......シュウとリズは『大切なモノ』だ!!

だからこそ守る!今度こそ!!俺は、この手でッ!!

――ズガァンンッ!!!

槍が突き刺さった場所は、神門をコントロールする魔法陣。

槍から流れ出す神力で神門が起し、村を出ようとしていたワーウルフを閉じ込めた。

「――あああ!? な、ななな、噓だろ!!?」

突然あらわれた神門に驚き、パニックを起こす。

その隙に僕はワーウルフへと接近する。

「――しまっ」

僕はワーウルフの両腕、両足を素早く切り落としシュウとリズを救出。

「うおああー!!」

――そしてワーウルフはそのままアトラの槍で貫かれ、燃えた。

「はあ、はあ......はあ」

「ありがとう、僕のミスで子供達を危険な目に合わせた......助かった......」

ポカーンとするアトラ。

「......あ、え? お、俺は」

そんなアトラの元へシュウとリズが駆け寄っていく。

「おにいちゃん、まもってくれてありがとう......」

「あとらにいちゃん、だいじょうぶ?」

「ありがとう......? いや、俺はお前らの......親父を」

「でも、君が神門を起してくれなかったら二人は助からなかったよ。 君のしたことは許されない事だし、罪は殘る。 けど......シュウとリズを救ったのは事実だ」

「......」

「答えは、もう出たよね......終わりでいい?」

「ああ......わかったよ。 俺の負けだ......」

槍を地面へ突き刺し、両手をあげた。彼は憑きが落ちたかのような、安堵した表だった。

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