《【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。》40.罪の貌

――アトラが口を開く。

「......面倒、かけたな旅人......いや、レイ」

「ううん。 君がそれを見つけてくれて良かった。 僕だけだったらワーウルフを逃がしていたかもしれない」

「ふ、どうかな? お前なら本気だせば追い付けたんじゃねえのか」

「いや、あれはアトラがいなかったらヤバかった......だから、君がシュウとリズを救ったんだ」

「そう......かな」

「うん、そうだよ」

虛ろな聲のアトラに僕は力強く答えた。

「俺は......聖騎士がくれば王都へ連行され『冥暗乃』へ大罪人として収監される......ヴィドラドール一族の結界師が司る大監獄」

冥暗乃はヴィドラドールが王に門番を任命され、數百年もの間守護してきた監獄。魔族の襲撃が何度かあったが一度も打ち破られた事のないらしい。

ここには封印された魔族も多く収監されているようで、SSSレートの魔もいると聞いたことがある......。

――この冥暗乃へ収監されたモノは二度と日の目を見ることはないと言う。

――通稱『罪の揺りかご』

「そう......」

僕らがもうし早く來ていれば、彼の想いを......こんな慘劇を引き起こす前に、け止めてあげられたのかな。

アトラは僕の心を察し、それを否定した。

「気にするな。 それはいくらでもある事だ......ただ、お前とはもう二度と會えないからな。 ありがとうと、きちんと言っておきたくて」

「うん」

どれ程の『力』を手にしたとしても、過去を変えたり未來を読む事は出來ない。

でも......だからこそ僕は、このユグドラシルで手にれた『力』で助けられる人がいれば、助けていきたい。そう、思った。

「......神門、閉めとくか」

アトラが腰を上げたとき、村人達の視線に気がつく。

を手にする者も多く、それが何を意味しているのかアトラには理解できたようだ。

その証拠に子供達は家の中へれられている。

「......ま、そりゃそうだよな。 俺だってそうだ」

アトラは槍を捨て、両手を広げた。

「レイ、後頼むわ」

後、とは。自分を村人が殺した後の事か。聖騎士が到著するまでの神門の無くなった村の守り人役と、『アトラを殺したのがワーウルフだ』という虛偽の報告か。

神木主殺しは重罪で、死罪。

だから、それを村人ではなく、ワーウルフがやったことにする。

でも、アトラ......気がついている?

村長が一人、集団の前へと現れた。

「......神木主、アトラ」

「はい」

「今まで、すまなかった。 お主のその気持ちに、もっとしっかり寄り添っていれば......自を犠牲にさせてしまってすまない」

アトラは驚き固まる。責められるものだとばかり思っていたのだろう。

「......違います。 そんなことはあなた方には関係なかった。 これは逆恨みにも等しい。 だから、殺されても文句はないですよ」

「殺すだなんて、思ってなどないです。 勿論、ワーウルフに家族をやられたモノは多く、我々はあなたを深く恨む事でしょう。 しかし、助けていただいていたのも事実......今まで、ありがとう」

「......そう、ですか」

殘された負心は傷を作り、やがて前へ進む糧となる。

アトラも村の人々も、これで前へ進めるはずだ。

「旅の方、あなた様には......なんと、禮を申し上げれば」

「いえ、別に僕は」

「お連れの方も村の人間を避難させるのに盡力されて、本當にありがとうございます」

ん?そういや、リアナは?そう思った時、宿屋の店主が聲をあげた。

「あ、そうそう! リアナさん、疲れはてて眠ってしまって、宿のベッドで寢ていただいてます! お客様が泊まられていたお部屋に」

「あ、助かります、ありがとうございます」

そうだよな。疲れてるところにまた......力の限界だったんだろう。ずっと無理をさせっぱなしだな......リアナには。

でも、またリアナには助けられた。村人の避難指示を彼がしてくれなかったらこうはスムーズに事は運ばなかった。

ちゃんとお禮をしなきゃな。

その時、神門の方から人が四人ってきたのが見えた。

に纏うは聖騎士の鎧。三人が青い鎧で、一人だけ赤い。つまりはルビーの聖騎士を意味する。

「彼らは」

その問いかけにアトラが答える。

「......まさかの大聖騎士がくるとはな」

そのルビーの聖騎士はアトラの元へと歩みより聞く。

「大丈夫か、アトラ? 狀況を見るにワーウルフを倒したのだな」

「はい......」

そしてルビーの聖騎士は隣にいる僕に問いかけた。

「君は? 旅人に見えるが......ワーウルフ退治に協力してくれたのかな」

その問いには僕が答える間でもなく、アトラが答えた。

「違います。 協力ではなく、ワーウルフは全てこの旅人のレイが倒しました......そして、俺はワーウルフに加擔した國王騎士軍の裏切り者です」

「......は?」

怪訝な顔をする、ルビーの聖騎士。ええ、心中察しします。

モノのついでみたいに言っちゃうんだね、アトラ。

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