リアナは目が覚めたのか、宿からでて外にいる僕の元へ駆け寄ってきた。彼は心配そうに僕に問う。

「......あ、あの......大丈夫でしたか！？」

「リアナ......うん、大丈夫だよ。 ごめんね、混している村人の導なんて大変な役目を任せてしまって」

「そ、そんなこと無いです、レイ様の方が......すみません、最後までお手伝いできなくて」

「いや、十分だよ。 本當にありがとう、怪我人が一人も出てない......リアナのおかげだよ」

「そ、そんな、事は」

「あるよ。 君はもっと自信をもっていい」

リアナがうつむいた。あれ、気分を悪くさせたか？しまった......しつこかったかな。

それから僕らは宿屋へ、店主さんと子供達とのお別れをするために戻った。

「おはようございます」

「あ、旅人様！ おはようございます」

見れば長椅子に橫たわり苦しそうなリズ、そしてそれを心配そうに見ているシュウがいた。

「リズ......どうかしたんですか？」

「そ、それが、ワーウルフに捕まれていたときにを強く握られていたようで、痛い痛いと。 出來ることは行ったのですが......痛みが激しく、うなされていて」

助け出した時はそんな素振り見せなかったのに。リズ......興狀態で痛みに気がつかなかったのか？

どちらにせよ、僕がよく見なかったからだ......ごめん、リズ。

「シュウは？ 何ともないかい？」

「ぼくはだいじょうぶ！」と言うシュウのを観察する。シュウは本當に大丈夫そうだな。

その時、リズが目を覚ました。

「おに、ちゃ......かえってきたの」

彼は辛そうにしながらも、こちらをみてにこりと笑った。

それに僕も笑みを返す。

「ちょっと診ても良いですか？ 」

「え、は、はい......」

レイは冒険者時代、膨大な量の醫學書を読み漁った。白魔導師は人構造の把握と怪我、病の知識が必須であり、その知識が多いほど治せる幅が広がり優秀な白魔導師とされた。

その冒険者時代でも、レイのそれは王都の腕の良い白魔導師を凌ぐ程であったが、パーティーメンバーの白魔導師に対する知識不足によりそれを知るものはない。

......これは、骨にヒビが......筋や臓は傷ついてはいない。

オーラによる診を終え、次に治療。

「ヒール」

淡いの粒がリズの背のあたりへと収束する。それらは溶けるように吸い込まれ、がやがてきえた。

「これでよし」

「......あ、あれ？ 痛くない」

目をパチクリするリズ。

「うそ......た、旅人様は白魔導師様だったのですか！？」

「はい。 あ、でも一応あまりかさないようにしてくださいね。 治した箇所はまだ脆いはずなので」

「あ、ありがとうございます！ 魔族から助けていただいた上に娘の怪我まで......なんと禮をしたら良いか」

「禮なんていいですよ。 僕、冒険者でもなければ醫者でもないので、代金をとったら逆にまずいんですよね、はは......」

「そ、そういう訳にも......！ なにかさせてください！」

お、おさまりそうに......ないな、これは。

「で、では、今度また村へ訪れた時、一泊させていただくというのは......？」

「そ、そんな事でよいのですか？」

「十分過ぎますよ。 良い宿屋なのはをもって理解してますからね。 ......それまで家族三人で頑張ってください」

「あ、ありがとう、ございます......」

「ありがとう、おにいちゃん」

「ありがと！ おにいちゃん」

三人の笑顔と禮を背に僕らは宿を後にした。

――村を出てし歩いたところで、リアナが口を開く。

「本當にレイ様のヒールは凄いですね......」

「ん？」

「......一般的なヒールは、自己治癒力を補助し、高めて怪我の治る速度をはやめるものです......なのにレイ様のヒールは時間が巻き戻ったかのように瞬く間に元通りです......王都の大聖様でもそれほどの治癒力は......」

......まあ、それはそうなんだけど。時間が巻き戻る、か。リアナは良い眼を持っている。

その想がでると言うことは、彼には僕のオーラの流れが見えたのか。

「リアナ、僕のヒールは......」

そう言いかけた時、師匠の言葉を思い出した。

『おまえのそれ、ヒールじゃないぞ。 全く別の質のものじゃ......それの報が広まれば、おまえ、國にも魔族にも狙われ続ける事になるかもしれん。 あまり他言はするなよ』

......。

「？ どうしましたか、レイ様......すみません、気分を害されましたか？」

「いや、違うよ。 ごめん、僕もし疲れてるみたいだ」

そう言い僕は口許を指でれた。

――レイは他の白魔導師を知らない。本來、白魔導師へとなるには小さな頃に白魔導師ギルドへり、専門の學園へ學、基礎を學び、実踐訓練を経て初めて白魔導師となれる。

しかし、レイは冒険者パーティーに拾われて、あてがわれた本を読み、獨學でヒールをにつけた。それ故に他の回復魔法を知らないレイにとってはこれが普通のヒールだった。

それ故に、これが普通の回復魔法だと勘違いし、レイは冒険者時代、一度のヒールに莫大なオーラを消費し続けていた。

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