《不死の子供たち【書籍販売中】》033 依頼 re

「だから一緒に來なくてもいいって言ったの」

綺麗に編み込まれた赤髪を揺らすクレアは不満そうに言った。

「レイは過保護に過ぎるんだよ。周辺一帯は安全になっていて、もうレイダーから襲われる心配はないって、傭兵組合から報告があったでしょ?」

廃墟が連なる通りに視線を向けていた私は、彼の言葉に頭を橫に振った。

「好きでやっているんだ。だから気にしないでくれ」

「気にするよ。レイは〈ジャンクタウン〉からずっと歩き通しでしょ? ヴィードルにずっと座っている私が、なんだか楽をしているみたいですごく気が引ける」

の言葉に肩をすくめると、網に投されていた〈カラス型偵察ドローン〉の映像を注意深く確認する。醫療班の車列に近づく敵の存在は確認できなかった。

クレアが搭乗していた車両にちらりと視線を向ける。六本の腳に球型のコクピットがある蜘蛛(くも)にも似た多腳車両は〈ヴィードル〉と呼ばれていて、瓦礫(がれき)に埋め盡くされたこの世界では一般的な乗りだった。

ちなみにクレアが乗っているヴィードルは、特別な機能を持つ軍用規格のヴィードルだった。普段は相棒の〈ミスズ〉と二人で使っていたが、今回の仕事では〈クレア〉の護衛をしていたので、今は安全を考慮して彼に乗ってもらっていた。

「そんなこと気にしなくても大丈夫だよ。ほら、俺の(からだ)は普通のソレとは違うだろ」

(あくび)しながらそう言うと、クレアは頬を膨(ふく)らませる。

「たしかに高価なインプラントパーツで人改造された人間みたいなことができるけど、それでも気になるの」

「えっと……」と、ヴィードルを縦していたミスズが琥珀の瞳を私に向ける。「私が歩きましょうか?」

「ダメだ」と私は頭を振った。「ヴィードルの縦はミスズのほうが上手(うま)いんだから、いざって時のためにも、ミスズが乗っていてくれたほうが安心できる」

「そう、なら勝手にすれば!」クレアはそう言うと、コクピットを覆う防弾キャノピーを閉じてしまう。とうとう彼は拗(す)ねてしまったようだ。

私はそのことをしも気にせず、カグヤに質問することにした。

「カグヤ、周辺に何か異常はあるか?」

『ううん、とくに異常はないみたい』と、頭の中でのやわらかな聲が響く。

カグヤは靜止軌道上の軍事衛星から――確証はなかったが、脳に埋め込まれた裝置を介して、私に直接語りかけていた。

軍事衛星に搭載された〈自律式対話型支援コンピュータ〉それが〈カグヤ〉だった。荒廃した世界で目が覚めてから、ずっと一緒に生きてきた相棒でもある。頭の中を四六時中、他人に覗かれるのは決していい気はしないが、記憶を失い、右も左も分からなかった私を助けてくれたカグヤには謝の気持ちしかない。

そのカグヤの張した聲が耳に聞こえた。

『待って。醫療班の車列に近付く生がいる。これは……人擬(ひともど)きだ!』

「ミスズ、敵が近づいてくる。クレアの保護を優先して戦闘態勢で待機していてくれ」

に言葉をかけたあと、近くの建に駆け寄りそのまま非常階段に向かって飛んだ。

錆びついた鉄柵にぶら下がると、わずかな手掛かりを頼りに(からだ)を持ち上げ、建屋上に向かう。そして屋上の安全確認を素早く済ませると、肩に提げていた狙撃銃を構える。そして視線の先に拡張現実で表示されるインターフェースを開くと、上空のカラスから信する映像を確認した。すると醫療班を乗せたヴィードルの車列に接近する人擬きの姿がハッキリと見えた。

上空のカラスが得ている報は、廃墟の街のあちこちに設置されている〈電波塔〉を経由して私とカグヤに送信される。カグヤはその報の査を行い、周辺一帯の詳細な報を送信してくれる。

標的までの距離、風、溫度などの環境の変化が瞬時に計算され、最適化されたターゲットマークが表示されると、猛然と駆けてくる化けの頭部にライフルの照準を合わせて引き金を引いた。

文明が崩壊し、荒廃(こうはい)した廃墟の街に銃聲が木霊(こだま)した。

人擬きは側頭部に被弾して、走っていた勢いのままに地面を転がる。けれど化けは死んではいない、頭部に対する攻撃は、不死の化けを無力化することしかできない。もう一度、化けに照準を合わせて引き金を引いた。

人間が最も繁栄した〈舊文明期〉と呼ばれた時代から現在まで生き続ける化け、それが〈人擬(ひともど)き〉だ。過去の人間が作り出した不死の薬〈仙丹(せんたん)〉をキッカケにして誕生した化けは、彼らを産み出した人間が消え去った世界で、地上を彷徨(さまよ)い、人々を襲い、喰(く)い殺している。

人擬きを殺すを人々は持たない。人間にできることは彼らを無力化することだけだ。もっとも、跡形もなく消滅させることができるのなら、話は変わってくるが。

『大丈夫。もう周囲に敵はいないよ』

カグヤの言葉に反応して照準から視線を外す。

「銃聲に反応するものは?」

『いないよ、醫療班の人間がし驚いただけ』

「そうか」

崩れかけている建の外階段を使って、近くに待機していたヴィードルのもとに向かう。

『おつかれさまです、レイラ』

耳に聞こえるミスズの言葉にうなずくと、閉じたままのキャノピーに視線を向ける。

「人擬きにはもう対処した。先行している醫療班と合流しよう」

『分かりました』

ミスズの縦でき出したヴィードルのキャノピーは閉じたままで、クレアの表は見えなかった。まだ拗ねているのだろう。

「クレアは、まだ怒っているのか?」と、ミスズに訊(たず)ねる。

『怒ってはいないと思いますよ。ただレイラに迷をかけているのが心苦(こころぐる)しいのだと思います』

「べつに気にしなくてもいいんだけどな」

『……そうですね。醫療班の護衛任務は、醫療組合から依頼された正式な仕事で、報酬もちゃんと出ることになっています』

「たしかに」

『でも意外でした』

「なにが?」と、カラスから信する映像を確認しながらミスズに訊(き)く。

『レイラは醫療組合を嫌(きら)っていたから、だから依頼はけないものだと思っていました』

「嫌(きら)いじゃないよ。あの組合長と反りが合わないだけだ」

『過去になにかあったのですか?』

「そうだな……意見の相違(そうい)かな」

『はぁ……意見の相違ですか』ミスズは曖昧(あいまい)な返事をすると、クレアとなにかを話して、それから私に質問した。『組合に対して行われた醫療班の派遣依頼は、安全な地區にある〈鳥籠〉からのものだと聞いたのですが、なにか気になることがあるのですか?』

の言葉にうなずいて、それから言った。

「本當の意味で安全な〈鳥籠〉があるのかは疑問だけど……たしかに今回の鳥籠は安全だ。それでも依頼をけた理由は、その鳥籠で舊文明の〈〉が手にれられるかもしれないからだ」

『何か當てがあるのですか?』

「ないよ。でも俺たちはスカベンジャーだ。めずしいモノや舊文明の施設に惹(ひ)かれるんだ」

『私にもほしいモノがあります』とミスズが言う。

「めずらしいな、ミスズは何(なに)がほしいんだ?」

『拠點を管理してくれている〈家政婦ドロイド〉さんの人工知能を、ヴィードルに接続できるようにする裝置です』

「あぁ、たしかにそれはほしいな」

廃墟の街で生きる人々が〈鳥籠〉と呼ぶ場所は、舊文明期の施設を利用して形された集落のことだ。醫療班の目的地も、舊文明期の施設の周囲に人々が住み著いて、共同が誕生した集落だった。

しばらくすると視線の先に、錆びついてはいたがかな海上輸送コンテナが幾(いく)つも積みあがる不思議な構造が見えてくる。超高層建築群のふもと、広場のような空間に輸送コンテナを防壁として利用した集落が確認できた。

雲にも屆く高層建築群は、かつて人々の住まいとして使用されていたものだが、現在はり口が廃材や泥、それに背の高い雑草に覆われていて使用されている形跡はなかった。

上層區畫から降って來たモノなのか、辺(あた)りには瓦礫(がれき)やゴミが散していた。

鳥籠に大きな影を落としている高層建築を仰ぎ見る。きっと建には人擬きや、それよりもずっと悍(おぞ)ましい変異が徘徊していることだろう。建り口が塞がっていることに安堵(あんど)しながら集落に向かう。

鳥籠のり口には、數人の警備隊員が配備されている検問所が設けられていた。屈強な男たちがアサルトライフルを肩に提げ、集落の巡回警備を行っていた。警備隊員からは、その外見だけでなく、きからも彼らの訓練が適切に行われていることが分かった。

検問所の隊員が所持する〈攜帯報端末〉でレーザースキャンが行われて、生認証による醫療班の本人確認がしっかりと行われた。

私とミスズも差し出された端末にIDカードを差し込むと、警備隊が所持する端末でスキャンされる。

「武を所持しているな。悪いがこの場に預けていってもらう」

隊員の言葉にうなずいて懐(ふところ)に手をれると、ライフルの銃口が一斉(いっせい)に私に向けられる。

「落ち著け。俺たちは醫療班の護衛としてここにいる。それを証明するデータカードがここにある」

データカードを取り出して隊員に手渡した。醫療組合から預かっていたカードは〈IDカード〉と同様、組合の専用端末でのみ報の書き込みができるモノになっていて、他の機関が所有する端末では報の読み込みしかできない。データカードは主に機報や、組合関係者の分を保証するさいに使用されているモノだ。

今回の護衛任務は醫療組合の保証のもとで行われている。データカードにはそれが記載されている。なにか不測(ふそく)の事態があれば、それらの責任が組合のものになる代わりに、カード保持者にそれなりの権限が與えられる。たとえば、武の攜帯が認められていない鳥籠で、特別な扱いをけることも可能だ。

「ゴミ拾いのスカベンジャーが、どうして醫療組合の護衛を?」

警備隊の隊長だと思われるは訝(いぶか)しみながらも、端末で報の確認を行う。

「……たしかに確認させてもらったよ。小銃の攜帯は許可するが、この鳥籠では無闇に銃を抜くなよ。子供が多い、なにかあってからでは遅いからな」

「了解した」

「そうかい」

は鼻を鳴らすと、私とミスズを検問所の先に通した。

先行していた醫療班の人間は、出迎えに出ていた鳥籠の住人から歓待をけていた。集落の人間は若者が多く、皆の表に喜びが見て取れた。醫療組合の人間はどこの鳥籠に行っても、人々に謝され喜ばれる存在だった。我々が所屬するスカベンジャー組合とは大違いだ。

診察のための簡易的なキャンプを設営していた組合の班長にクレアを預けると、私はミスズを連れて集落の探索に出かける。ちなみにクレアの機嫌は噓のように直っていた。

集落を歩いていると、い子どもをに抱く若い親子の姿を多く見かけた。

「すごい人だかりでしたね」と、ミスズは歓待の様子を思い出しながら言う。

「醫療組合や適切な醫療品がない鳥籠での生活は大変だからな」

「……そうですね。私は東京にある舊文明期の施設で育ったので、い子どもたちが簡単に亡くなる世界なのだと知りませんでした」

「栄養失調も原因だけど予防接種なんてない世界だからな、風邪がきっかけで亡くなる子どもが多い」

「大変な世界です。そう考えると、地下施設の生活が退屈なものだと嫌(きら)っていた自分が、なんだかとても贅沢な人間に思えてきます」

「立場が変われば、の見え方も変わるか……」

「……はい」

我々は立ち止まると、柿の輸送コンテナを改造して、その中で商売している若い男の店に近付く。

「いらっしゃい、何をお求めで?」と店主は言う。

「ここではなにを売っているんだ?」と、店主に問い返した。

「広場にある舊文明期の施設で手できる雑貨だよ。掃除道から筆記用まで、ほしいモノは大抵この店で手にるよ」

「電子機は……さすがにないか」

「悪いな、兄ちゃん。電子機はないんだ。もちろん銃もここでは手にらない。けど他の品は覧の通りさ」店主は品を自慢するように両手を広げた。

に並べられた商品をミスズと見て回る。店主が言うように、たしかにすごい品揃えだった。すでに文明の崩壊した世界だと思えないくらいに品揃えが富だった。

「すごいですね。これも全部、鳥籠の地下にある舊文明期の施設から手しているのでしょうか?」と、ミスズは心しながら言う。

「ジャンクタウンにある軍の〈資備蓄施設〉と同じような施設が、ここにはあるのかもしれない」

「販売所で手できるのに、どうしてこの場所で商売をするのでしょうか?」

「施設に場するための資格を持てるのが、鳥籠の一部の人間と商人だけなんだよ」

「そうなのですか。それはちょっと殘念です……」と、彼は下を噛む。

「施設を見學したかったのか?」

「はい。舊文明期の施設がどうなっているのか、し気になって」

「ジャンクタウンにある軍の販売所と大(たい)して変わらないと思うけどな。なんならカグヤに頼んで、施設のシステムに侵して場許可証を偽造する?」

「いえ、それは遠慮しておきます。トラブルは遠ざけたいです」

ミスズはそう言うと、私の背後に視線を送った。我々は鳥籠にってから、警備隊の人間にずっと監視されていた。

「そうだな。トラブルはごめんだ」

我々は適當に売りを見て回り、飲料と〈國民栄養食〉を買ってその場を離れた。

「レイラは栄養補助食品が本當に好きなのですね」

「そうでもないよ」と、私はブロック狀の食品を口に含んだ。ザクザクとした食がして、口の中の水分が奪われていく。

それから我々は住民の診察を開始した醫療班の側に待機すると、彼らに危険が及ばないように周囲の人間の監視を始めた。醫療組合の人間が被害に合うことはほとんどないが、それでも大切な人間を亡くした人が逆上し、組合の人間とめ事を起こすことはなくなかった。

不自然な態度を見せる人間が現れるたびに、私はワザと銃を手に取って、怪しい人間に対して武の存在を誇示(こじ)した。

額にかかる雨粒に気がつくと、私は薄暗い空を見上げた。

高層建築は暗い雲に覆われていて、今にも土砂降りの雨が降り出しそうになっていた。

「レイラ、雨です。ヴィードルからレインコート取ってきますね」

ミスズの言葉に私は頭を振った。

「俺が行くから、ミスズはこのまま監視を続けてくれ」

その場にミスズを殘すと、鳥籠に設けられたヴィードルの駐車場に向かう。しばらく歩いて、その場に立ち止まる。振り返ると、鳥籠の警備隊長であるが私のあとについてきていた。

「俺に何か用があるのか?」

「銃を所持している兄ちゃんが一人で歩いていたからね、し気になったんだよ」

の言葉に肩をすくめると、そのまま歩き出した。

「ずいぶんと厳重な警備をするんだな」

「それなりの理由がある」とは言う。

「資金を得るのに苦労しないで済む舊文明期の施設を守るためか? それとも若い住人が多く暮らす集落を守るためか?」

「両方重要なことだよ。それに苦労もしている。施設の品だってタダで手にれられるわけじゃない」

「どうだかな」

「そもそも私たち警備員は雇われの傭兵じゃない。みんなこの鳥籠に家族がいるのさ、だから危険な警備任務を続けられる」

「そう? どうでもいいけど」

「ずいぶんな言いだね。あんたは人間嫌いなのか?」

「他人を信用できないだけさ」

カグヤにヴィードルの後部コンテナを開放してもらうと、レインコート代わりに使用している外套(がいとう)を素早く取り出して、それからコンテナのハッチを閉じた。

「スカベンジャーにしては、高価な裝備を持っているんだね」

はヴィードルのモジュール裝甲を(な)でながら言った。

「腕のいい相棒がいるおかげさ」と私は言う。

「あのお嬢ちゃんがかい? 冗談は止してくれ」

私は外套を羽織(はお)ると、の言葉を無視して歩き出した。

「どうしてあんたが醫療班の警護任務を?」

の言葉に肩をすくめる。

「さあな。人手不足なんじゃないのか」

「人手が足りていないような狀況で雇った人間を、醫療組合は簡単に保証するのかい?」

「なにが言いたい?」

「組合に信用されるほどに、あんたは腕がいいんだろう?」

私は頭を橫に振る。

「無駄だ。何かを頼んだところで、あんたたちに何ひとつ協力できない。だから先に言っておく、俺になにも頼むな」

「妙な連中が鳥籠の近くある廃墟に居(い)ついた。私たちは鳥籠を離れられない、だから代わりに対処してくれないか?」

私は立ち止まると、溜息をついた。

雨腳は強まり、ミスズに外套を屆けたかった。

「俺は組合に所屬する一介のスカベンジャーだ。できる事と、できない事がある。もちろん人殺しは専門じゃない。それに、俺は醫療班の側を離れるつもりはない」と、私はうんざりしながら言う。

「醫療班の護衛は私たちが引きけるよ。警備には自信があるんだ。だからあんたは何も心配する必要がない」

「おかしな話だ。警備にそれほどの自信があるのなら、妙な連中やらにも対処できるんじゃいのか」

「相手はレイダーギャングじゃない」と、彼は癖のある黒髪を揺らした。

「なら人擬きか?」

「違う。不死の化けや巨大な昆蟲でもない」

「イカれた機械人形か」

「たしかにあれは機械のをもっているな」

「機械の……相手は〈守護者〉なのか?」

はコクリとうなずいた。

舊文明期の鋼材でつくられた骨格を持つ人間に似た守護者の姿が頭に過(よぎ)る。

『守護者のことなら、し気になるかも』

カグヤの言葉について考えながら歩く。

『けど』と、私は聲に出さずに返事をする。『守護者は基本的に人間に無害な存在だ。俺たちがわざわざ出て行って、話をややこしくする必要はないと思う』

『どうして無害だと思うの?』

『連中が何(なに)かをするつもりなら、相手が人間だろうと人擬きだろうと躊躇(ちゅうちょ)しない』

『それはそうかも。でも話が通じる守護者がその場にいたら、この間のことについて聞けるかもしれない』

『俺のことを〈不死の子供〉って呼んだことか?』

『そう。それ』

広場に到著すると、は急かすように私に質問した。

「依頼を引きけてくれるのかい?」

「守護者が危険な存在だっていうのは、分かっているな?」

私の言葉に、は茶の目の端でこっそり笑った。

「それなりの報酬は約束する」

「なんの報酬ですか?」

ミスズは私から外套をけ取りながら訊(たず)ねた。

「仕事の依頼をしていたんだよ」と、が答えた。

「でも私たちは醫療班の護衛で來ていて、この鳥籠からは離れられませんよ」

ミスズはそう言うと、綺麗な黒髪を揺らした。

「それなら大丈夫。お嬢ちゃんは鳥籠で私たちとお留守番するから」

「お嬢ちゃんって……本當なんですか、レイラ?」

「本當さ」と、は続けた。「鳥籠の近くに居(い)ついた守護者の調査をしてもらうつもり」

「守護者ですか? そんなの危険です。行きませんよね、レイラ?」

私は外套のフードを深くかぶると、大きな溜息(ためいき)をついた。

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