しばらく『水の作』の練度上げをしているといくつかLvが上がっていた。今は『水の作Lv3』になっている。Lv3になった時點で消費行値が4に減って、Lvが上がるに従って作もやりやすくなっている。もちろん多慣れたということもあるだろう。

という事で練度稼ぎの方法を変えてみた。

「こっち！　えい！　やっ！」

「おーすげぇな、サヤ」

ある程度の速度でれるようになったのを見て、サヤが1つの提案をしてきたのだ。俺が水の作で水球を作り、サヤがそれを叩き落とすというものである。とりあえず1回お試しでやってみたら結構良いじにサヤが爪で水球を破裂させていた。

「ふふっ！　ケイ、まだまだ遅いんじゃない？　楽勝すぎるよ」

「言ったな！　もっと速度上げてやる！」

Lvが上がってし作がしやすくなった為、同時に水球を2つ作れるようにはなっていた。だけどまだまだ遅いので簡単にサヤに叩き落とされてしまっている。うん、この対戦ゲーム方式は黙々と1人で練度稼ぎするより遙かに楽しい！

「サヤもケイも楽しそうで良いな……。俺は1人でちまちまやるしかないのによ……」

「アルももうちょいがくようになったらやろうぜ？　これ楽しいぞ！」

「くっそ！　さっさと參加できるまでになってやる！」

その悔しさを表すかのように、アルが練習用に地面から出しているが打ちつけるように激しくいている。アルのも結構くようになってきた。なんともかなだな。さっきまで項垂れながらフラフラと揺れてたのにな。

＜規定の條件を満たしたため、スキル『夜目』を取得しました＞

「お、『夜目』ゲット」

「いつの間にかそんなに時間が経ってたんだ？」

サヤと対戦風に練度を稼いでいるうちに目的のものが手にった。って事は大1時間くらい経った訳だ。意外と時間の流れを早くじたな。とりあえず早速オンにしておこう。

＜行値上限を1使用して『夜目』を発します＞ 行値　10/10（−1）

微妙に表記が変わった。なるほど、こう表示されるのか。そして夜目の効果はどうかといえば、これはかなり見えやすさが違う。行値の最大値が1減っててもこれは使っておくべきだな。

「よし、水も底突きたし『夜目』の慣らしがてら水の補給してくる」

「おう、行ってこい！」

「私も行こうか？」

「いや水だけだし、ひとりでいいよ」

「そっか、じゃあ待ってるね」

とりあえずサクッと水分補給をしてこよう。あと水の保有上限個數も調べておこう。インベントリは100枠あるからあり過ぎても圧迫して困るけど、結構水は使いそうだもんな。それなりの量がしい。

『一発蕓・り』で最速移。川へ行って水を補給して帰ってきた。うん、水の補給自はこれまでと同じだから特筆すべき事はなし。川の水の手上限は20個だった。もっと多ければ『一発蕓・り』で手しまくりたかったのに殘念……。まぁインベントリの空きも考えればこんなもんで良いか。

本日分の群化による融合進化ポイントも3ポイント確保してきた。『一発蕓・り』だけで移してる途中で思い出して良かったよ。危うく取り忘れるとこだった。

「戻ったぞー！」

「ケイ、おかえり」

「サーーー！　近ーーいるー！？」

「サヤさんよ、なんか呼ばれてるぜ」

「え、ほんと？　ヨッシかな？」

アルとサヤのところに戻ってきてすぐに何処からともなく薄っすらと聲が聞こえてきた。まだ距離が遠いのか、僅かに聞こえてくる程度で正確な容は聞き取れない。聲が聞こえて來たのは崖の無い側からか。俺もアルもサヤも3人揃って靜かになる。

段々と近づいて來て、ようやく容が聞き取れるようになってきた。

「サヤー！　近くにいるー？」

「あ、やっぱりヨッシだ！　おーい、こっちだよー！」

「返事あった！　あっちだね。ハーレ、行くよ！」

「ちょ、ちょっと待って！？　あわっ！？」

どうやらサヤの返事も向こうに聞こえたようだ。なにやら會話のようなものが聞こえてくる。ただし、なにやら慌ただしく、焦ったじではあるが。

「……なんか様子が変だね？　ケイ、お願い出來る？」

「いいよ、どれどれ？」

群化Lv2を視覚延長Ⅰで倍率2倍にして範囲指定畫面でストップっと。これ、範囲指定を確定せずにキャンセルすると行値消費せずに遠鏡代わりになるんだよな。マップ埋めの時に々試してて気付いた。地味に便利そうな小技なので、さっきサヤとアルには教えておいたのだ。

あーこれでぎりぎり薄っすらと何かが飛んでるのが見える程度か。こりゃもうちょい近付いてこないとわからんな。

「うん、まだ見える距離じゃないな」

「地味にズルいよね、そのケイのキャンセル技」

「頼んどいて言うことでもない気がするけどな？」

「あはは、それもそうだね。あ、見えてきたね」

「とりあえずハチとリスのプレイヤーが追いかけられてるみたいだな。追いかけてるのは、フクロウか……？」

「ハチはヨッシだね。もう1人は誰だろ？　フレンドになった人かな？」

多分リスの人はヨッシさんのもう1人のリア友だろう。やっぱりこのサヤの様子だと連れてくるとは聞かされてないな。

そしてサヤでも姿が確認出來る距離になれば、俺はもっとはっきりと見える。様子が変なのは追われているからだろうな。でも、なんで追われてるんだろうか？　フクロウの人でも怒らせた？　ってあれ？

「なぁ、サヤ」

「なんか変なものでも見えた？」

「黒いカーソルってなんだっけ？」

「黒いカーソル？　そんなのなかったと思うけど」

「なんかそれは気になるな。ちょっと報共有板を覗いてみるか」

「私はヨッシを迎えに行ってくるよ。ケイはどうする？」

「サヤと一緒に行くよ。なんかあのフクロウが気になるし」

どうにも様子が変なのが気になる。黒いカーソルももしかしたら敵対勢力とかそんなじかもしれない。ゲームなんだから何かしらの敵がいる筈だけど、プレイヤー以外には雑魚としか言えない一般生しかまだ見ていない。オフライン版だと他種族のモンスターが敵だったけれど、オンラインになってどう変わっているのかがまだわからない。

「よし、ならケイは小石に移ってね」

「え、マジか？　俺、咥えられて登場なの？」

「違う、違う。投げて先制攻撃だよ。多分、あれは敵だろうしね」

「サヤもあれは敵だと思うか？」

「そりゃね。『黒の群集』なんてのがあるんなら初めから選択肢にあると思うしね」

「お二人さんの敵だっていう推察は當たりっぽいぜ？　報共有板で黒いカーソルのモンスターに襲われたって案件報告がいくつかあるぞ！」

アルが報共有板で黒いカーソルのモンスターの報を探ってみてくれたが、同様の狀態がんなとこから報告があるらしい。撃退済み、戦中、敗北済みなど々あるそうだ。負けた人もいるという事は一般生とも違うと思って間違いない。ならば攻撃あるのみか！

「サヤ、助けてー！」

「危なっ！？　また食べられかけたー！？」

ヨッシさんがフクロウに突撃して牽制しつつ、リスの人は全力で逃げていた。どうやらリスの人が獲としてフクロウに狙われているようだ。これはどう見てもプレイヤーのきじゃないな。仮にフクロウがプレイヤーだとしても敵認定で問題ないだろう。ってことで救援に向かおう！

＜行値を1消費して『群化Lv1』を発します＞　行値　9/10（−1）

＜行値を1消費して『群移Lv1』を発します＞　行値　8/10（−1）

これで小石への移は完了！

「行くよ、ケイ」

「おうよ！　一発食らわしてやる！」

小石のコケに移った俺をサヤが小石ごとフクロウに目掛けて放り投げる。やる事は鹿を狩った時と同じである。

＜行値を1消費して『微毒生Lv1』を発します＞ 行値　7/10（−1）

勢いよくフクロウへと微毒を纏ったコケのついた小石が直撃した。直撃そのものの威力はさほど無い。だが、それがメインではないのだ。ふふふ、食らうがいい。微毒當たり戦法を！　ってあれ！？　直撃したのに全然効果なし！？

＜行値を1消費して『群化Lv1』を発します＞　行値　6/10（−1）

＜行値を1消費して『群移Lv1』を発します＞　行値　5/10（−1）

とりあえず小石から地面のコケへと移する。直撃した以上、効果があろうがなかろうが落ちるだけの小石に殘っていても仕方ない。移したのはヨッシさんの近くのコケだ。

「直撃した筈なのにダメージが通らないな？」

「そこにいるの、コケの人なの！？　そっか、サヤがフレになったって言ってたもんね。救援ありがと。そのフクロウ、羽が分厚くて衝撃も私の針も通らないんだよ」

「なるほどね、そういう事か」

ヨッシさんが何故逃げて助けを求めてきたのかいまいち理由がわかってなかったけど、どうやらハチの攻撃は防力の高い羽によって遮られてしまっているようだ。

「え！？　コケの人いるの！？　マジで！？」

「あ、どうも。コケの人ことケイです」

「私はリスのハーレだよ！　よろしく、ケイさん！　って、うわっ！？　助けてー！？」

「ハーレさん！？　呑気に自己紹介もさせてくれないってか、フクロウさんよ！」

なんだかコケの人って言葉に食いついてきたリスのハーレさんがフクロウに捕まった。駄目だ、あれは今にでも食われそう。ついでに空中を飛ばれてしまい手出しがしにくい。いや元々飛んでたし、石が當たったのは奇襲だったから上手く行っただけか。飛んでる鳥に石を當てるとか普通にやれば難易度高いわ。

「みんな大丈夫！？　って大丈夫じゃなさそう！？」

「クマの人ー！　お助けー！？」

俺を投げてから追いかけてきたサヤが合流してフクロウの腳でがっしりと捕まえられているリスのハーレさんを見て驚いていた。風前の燈火となっているリスのハーレさんを見たら確かに驚くだろう。早く助けなければ食われてしまう。まぁ食われてもリスポーンしてポイントも貰えるから悪い手段でもないんだが。

「そういやリスポーンって場所はどうなんの？」

「あ、そういやどうなんだろ？　アル、知ってる？」

「あぁ、それか。気にはなってたけど、報なかったからな。でもついさっき判明したっぽいぞ。同じエリアでランダム位置にリスポーンだとよ」

報共有板で敗北済みって人もいたって言ってたからその人からの報なのだろう。拠點が存在していない以上、リスポーン位置がランダムなのも仕方ないか。何度も同じ場所で死にまくってポイント稼がれるのも問題だろうし、同エリアなだけ良しとしよう。

「同エリアでランダムリスポーンか。まぁ死んでもどうにかなるか？」

「えぇ！？　ようやく合流出來たのにまた1人はやだ！！」

俺の言葉に慌てながらもハーレさんは食べられないように必死で暴れている。多は効果があるのか、まだ食われてはいない。何度かフクロウのクチバシを蹴飛ばして食べられるのを回避していた。

ハーレさんとしてはエリア分斷されてたのがようやく合流出來て、その直後にランダムリスポーンでまた離れ離れになるのは流石に嫌か。まぁ俺も同じ狀況なら絶対に嫌だな。

「サヤ、いきなりこんな狀態でごめん」

「別にいいよ、ヨッシ。ところであのリスの人ってもしかして……？」

「サヤの想像通り。紹介は改めて後からでいい？」

「あーそういうのは後にしよう、サヤ、ヨッシさん。早く助けないとハーレさん食われるぞ？」

「そうだね。合流早々だけど、ハーレさん救出戦の開始だね！」

そのサヤの宣言により、リスの人ことハーレさんの救出戦が始まった。