《Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜》第34話 エリア移を阻むボス
「あ、一旦ログアウトするね!」
「おう、ハーレさんおつかれー」
「ハーレさん、また後でな! ところでケイ、お前はいいのか?」
「ん? 何が?」
なんだか呆れた様子のアルの聲である。はて、何か問題あっただろうか? ハーレさんも食事に行っただけじゃないの?
「おいおい、そろそろ7時だぞ?」
「あ、時計見てなかった!」
「やっぱりな。昨日タイマーかけるとか言ってなかったか?」
「忘れてたわ。やっべ、俺も一旦落ちるわ!」
「気を付けろよ。また強制ログアウトになるぞ?」
「そうだな。時間を忘れるのは気を付けないと」
二日連続時間を忘れてたらそりゃ呆れられるわ! また妹が突してきて強制ログアウトになりかねない。あんまり良い事でもないから、出來れば普通にログアウトしないと。
<システムメッセージ:外部からの呼びかけがあります。接続しますか?>
視界にVRゲーム機本のシステムメメッセージが表示される。晴香のやつ、俺の部屋まで來やがったか! 接続して返事しておこう。また座られるのも嫌だしな。はいを選択。っていうか勝手に人の部屋までってくるの止めてくれないかなぁ……。
『お母さんがご飯だって! 兄貴、早めにログアウトしてね!』
『すぐ行くからちょっと待ってろ。昨日みたいなことはするなよ!』
『分かったから早くしてね。お腹空いてるんだから』
一応こういう応答は可能である。昨日は強制ログアウトになるような事を想定していなかったので、放置してしまっただけである。
「ほう、ケイには兄弟かなんかいるじか?」
「あー妹がな。食い気が強いから飯時は結構急かしてくるんだよ」
「……分かってんなら、時間くらい気にしてやれ」
「……気を付けるわ。それじゃまた後で」
「おう」
このシステムメッセージ、地味に自分の発言だけだが一部會話が筒抜けになるのだ。急時の為の特殊措置だとかなんとかで、オフに出來ないようになっている。もちろんこの機能に不満がある人もいるけど、これがきっかけで事故や災害から助かったという事例がいくつもあるので完全に悪いとも言い切れないのだ。
ログアウトを選択し、一旦現実へと戻っていく。さっさと食べて再開しよう。
◇ ◇ ◇
ささっと夕食を食べ終わり、もういつでも寢れるように々やってきて、再度ログインする。ちょっと掲示板を覗きたかった気もするけど、今は先にやってしまいたい事もあるのでそっちを優先する!
再ログインではログアウトした場所になるから、やっぱりはぐれたままだ。ログインでランダムリスポーンでもしてくれれば……。駄目だな、それは流石に大慘事になりそうだ。
「戻ったぜー!」
「あ、ケイ。おかえり」
「サヤも戻ってたのか。アルは?」
「私とれ替わりでご飯食べに行ったよ」
今は言ってたようにアルがサヤとれ替わりで飯を食いに行ってるのか。それじゃアルが戻ってくるまでしばらくかかるかな。
「たっだいまー! お、ケイさんとサヤさんの2人か! アルさんはご飯に行った?」
「ハーレさん、おかえり。アルさんはし前にログアウトしたところだよ」
「そっか! ケイさんはご飯食べた?」
「おう、ハーレさんがログアウトしてすぐ後くらいに俺もログアウトしたからな」
今はその時の時間を忘れていた事を知るアルはいない。わざわざ言う必要もないだろう。それじゃ早速中斷になってた南端のエリア切り替え地點にいるかもしれない『黒の暴走種』でも探しに行くか!
「よし、んじゃ南端まで行ってくる!」
「ケイさん、頑張ってね!」
「あれ? ケイはこっちに戻ってくるんじゃ?」
「あ、それはちゃんと戻るぞ。でもその前に折角南の端に近いとこに居るんだからエリア切り替えのとこまで行って『黒の暴走種』を拝んで來ようかなって思ってな」
「あ、なるほどね。あわよくばそのまま再リスポーン狙い?」
「そう、そのつもり。まぁそれは運任せにはなるけどな。そういう事で、行ってくるわ!」
「そっか。ケイ、頑張ってね」
「ケイさん、ファイト!」
2人に応援されたからには頑張るしかないだろう。って事でどうせここから南端は既にマップは埋まっているので、『一発蕓・り』で最速移と行きますぜ!
しばらく進んで行っていると、気になる點があった。ずっと上り坂なのである。どことなく木の種類も変わってきている気がする。詳しくないから種類はわからないけどさ。これ、もしかして山を登って行ってるのかもしれないな? どの程度の山なのか分からないけど、この先ってもしかして高山エリアか?
木の種類の割合が広葉樹から針葉樹の方が多いように変わっていってる気がする。コケは多いままだけど。
「くっそ! なんだよ、こいつ!」
「吹雪の攻撃が來るぞ! お前ら、避けろ!」
「「ぎゃー!」」
「くそっ! 凍結狀態になってんじゃねぇか!」
マップの南端に近付いて來た頃にそんな聲が聞こえてくる。あ、これは先客ありか。そりゃこの付近のマップが埋まってるって事はプレイヤーがいるって事だもんな。こういう事もあって當然だ。それはそうとして、見だけでもしていこうかね。
ふむふむ、オオカミのプレイヤーが3人で、思いっきり苦戦してるなぁ。って敵の方も二回りほど大きなオオカミか。それにしても戦闘の影響か、地面があちこち抉れてコケがかなり減っている。俺としてはちょっと良くない地形狀況だ。
それにしてもオオカミの人、さっきの吹雪みたいな攻撃で2人は凍ったままきが取れていないな。強烈なダメージではないけど狀態異常系の攻撃か、厄介だな。あ、2人とも頭をガブリと齧られて死んだ。
「ちっ、殘りは俺だけか。どいつもこいつも口だけの雑魚じゃねぇか! それにしても長ってのは屬持ってんのかよ!」
そうボヤいて居るのは灰カーソルのし黒の合いの強い灰のオオカミのプレイヤーだ。そしてプレイヤー2名を仕留めたオオカミは白銀とでも言うようなをしており、黒いカーソルになっていた。間違いなく『黒の暴走種』だ。うん、正直どっちのオオカミも格好いい。
それにしてもオオカミの人が気になる事を言ってたな? 長とか言ってなかったか? あ、折角『識別』取ったんだし使えばいいか。
<行値を1消費して『識別Lv1』を発します> 行値 10/15(−1)
『氷狼』
種族:黒の暴走種
進化階位:長・暴走種
氷狼か。いかにも氷を扱うモンスターっぽいな。さっきの白い息は見たまま吹雪だったのか。それにしてもフクロウの時にサヤが言ってた容とちょっと違うな。これはワールドクエストが始まったからか?
そういやフクロウとかツチノコってどんな名前だったんだろうか? あ、サヤはログインしてるし聞けばいいだけか!
「おーい、サヤ」
「ん? ケイ、何かあった?」
「まぁあったといえばあった。他プレイヤーが長のオオカミと戦闘中なのを見學中」
「……助けなくてもいいの?」
「オンラインゲームで無斷の橫毆りってマナー違反だから悩み中……。結構追い詰められてるから下手に聲かけて集中すのも気が引けるんだよな」
特にこのゲームの場合はあえて死ぬという選択肢もある為、マナー違反どころか邪魔をするという事になりかねない。迂闊な真似をして邪魔はしたくない。
「あ、それもそうだね。それで何か相談かな?」
「相談ってか、質問だな。フクロウとツチノコの固有名って何だった?」
「あれ? 私言ってなかったっけ?」
「聞いた覚えはないぞ?」
「あちゃー、伝え忘れてたよ。えっとフクロウとツチノコの固有名だったね。フクロウはそのままフクロウで、ツチノコはヒノノコってなってたよ」
「なるほど、長から固有名に特徴が出てくるんだな。火のツチノコでヒノノコか」
「ケイが火を吐くのを引き出してくれなきゃ意味がわからなくて、伝え忘れてたよ」
「サヤさん! そういう報はもっと早くに言わないと!」
「ごめん、ハーレさん。言ったものとばかり思ってたよ」
あ、ハーレさんがちょっと怒り気味? 報に関してはどうも拘りというか好奇心が強いじがするからな。まぁ確かに地味に重要な報だけど、あの狀況じゃ伝え忘れても仕方ないだろう。
「ねぇ、ケイさん。長からって言い方からすると、今見てるのってもしかして長?」
「おうよ。『氷狼』だとよ。吹雪みたいな息の攻撃は確認したぞ」
「わぁ! それ格好良さそう! 見てみたかったなぁ……」
「ま、進化してからそのうち來ようぜ?」
「そだね! まぁその前にツチノコへのリベンジが先だけどね!」
さてと、とりあえず知りたい事は分かった。後はオオカミ同士の戦闘を見學して、その後氷漬けにされてリスポーンを狙ってみるか。
「おい、さっきからそこで観戦してるコケの人!」
「っ!? あれ、気付かれてた!?」
「あんだけPTで喋ってたら気付いて當たり前だ! 観戦料代わりにちょっと逃げるの手伝え!」
あ、そりゃ気付かれるか。まぁ手伝ってくれと言われたなら手伝うのは構わないか。それならマナー違反にもならないしな。
「ま、そういう事なら手伝いますか!」
どっちにしろ死ぬ前提で戦いを挑むつもりだったんだ。し予定は変わるけど問題ない範囲だろう。さて頑張りますか!
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