《Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜》第49話 赤の群集の人

アルがログインするまではみんなで対戦風の練度稼ぎでもしようとか考えていたのに、いつものアルの植わっている場所ではイノシシのアーサーとやらが待ち構えている。赤の群集のプレイヤーの前で手のを明かすような練度稼ぎはしたくない……。かといってLv今の上限まで行ってるし、進化もアルが來て全員揃ってからやりたいし、どうしたものか……。

とりあえずちょっとPTで話があると言ってし距離を離したが、ついてこようとしてきてかなりウザかった。

「さて、どうする?」

「もうすぐ晩飯だから私はログアウトするね!」

「あ、私も!」

「あ!? サヤもヨッシもズルい!?」

「いやいや、ハーレさん。2人はいつもこのくらいで1回ログアウトしてるしさ?」

そう一応宥めてはみるものの、サヤとヨッシさんが目を逸している。2人は6時頃が夕食みたいなので狙って逃げようとしている訳じゃないだろうけど、関わりたくないというのも本心なのだろう。今が7時前なら俺もそうするから気持ちが分からない事もない。さっさとログインしろよ、アル!

そうしているうちにサヤとヨッシさんは一旦ログアウトしていった。そのし後に変化が訪れる。また誰かがやってきた。

「……ん? あれって」

「ケイさん、どしたの? って、もう1人の赤の群集の人!?」

「赤の群集のクマのプレイヤーか。2人目とか一何の用だ?」

今日は事前連絡のない來客が多すぎるだろう。赤の群集のクマの人はつまらなさそうにしているイノシシへ向かって歩いていっている。その気配は殺気立っているというか、怒っているというか、ともかく穏便な様子ではない。イノシシの人はそんな様子も気にしてもいないのか気楽そうだ。あの2人は知り合いか? 狀況がさっぱりわからない。

「ちょっと木の上からでも盜み聞きするか?」

「確かに気になるもんね……。ちょっと気が引けるけど、この際仕方ないよね!」

アーサーとかいう勝手な奴が相手でなければ盜み聞きとかする気はないけど、それに接しようとする赤の群集の人がもう1人現れたとなるとそうも言っていられない。即座に2人の赤の群集の人に気付かれないように隠れつつ、2人に近い位置の木の上にハーレさんは素早く登っていく。俺も群による移と増を駆使し、ハーレさんの隣に移する。よし、この位置なら會話の容も聞こえるだろう。

し距離を取っていて正解だったな。まぁこの展開は予想外だったけど。

「なんだ、水月も來たのか。暇だったしちょうどいいや!」

「何が『暇だった』ですか! 勝手な事はしないようにと念を押したのに、なぜ言う事が聞けないのですか? 話が纏まった後に私が出向く予定だったでしょう!」

「俺で充分だからだよ!? まったく心配にも程があるだろ!」

「……また聞く耳を持たないのですか。先ほどもPTでの會話を聞いていましたけど、相手を怒らせていないか心配ですよ……」

赤の群集のクマの人、水月さんは、どことなく中的な聲をしていて喋り方も丁寧なじな事もあり男どちらかなのかがいまいち判別できない。分かるのはあのイノシシのアーサーとかいう奴の知り合いという事と、あのクマの水月さんが元々來るはずの人だったという事だ。やっぱりあのイノシシ勝手に來てたのかよ。

「……あいつ、PTメンバーにも迷かけてるのか」

「そうみたいだね……。やっぱり獨斷専行っぽいじ?」

「だよな。あの人なら會話出來そうだし、ちょっと行ってくるわ。ハーレさんは待ってていいぞ」

「ちょ!? ケイさん!?」

という事で、話が出來そうなまとも人が登場したのでちょっと話をしておこう。ハーレさんには結果的にさっきイノシシの対応の一番面倒な部分を任せてしまったので、今回は俺が行く。

アルの進化もやり方次第で自力でも可能だろうけど後々の事とか、死ぬまでの所要時間を考えるなら赤の群集の人の手を借りる方が多分早い。アルもそう考えたから赤の群集の人と渉してた筈だ。

木の転生進化には過剰に敵を集めてサンドバッグ化するのと、を全部地面の上まで出して倒木化して栄養の補給を斷って衰弱死させるのがオフライン版の定番だった。前者は後の敵の始末に手間取るし、後者は歩けるまでになってなければ不可能な上に時間がかかる。アルがこういうやり取りをしてた以上、後者のやり方はオンラインでは出來ない可能も……。

とにかく會話がまともに通じる相手とは話しておきたい。って事でクマの水月さんの前のコケへと移する。

「なんか1人増えてるけど、そちらのクマは?」

「うお!? びっくりした、なんだコケか。あれ、他の連中は?」

「なんだとはなんですか! ゴホン、失禮しました。私はクマの水月と申します。この度は私の愚弟が迷をかけたようで申し訳ございません」

「なんだよ、愚弟って!」

「アーサー、ちょっと黙っていなさい!」

「あー、俺はコケのケイだ。水月さん、よろしくな」

「こちらこそよろしくお願いします。ケイさんはアルマースさんのご友人で間違いないでしょうか?」

ここでアルの名前が出てくるという事は、この水月さんはアルの頼み事関係の人で確定だな。よし、イノシシは獨斷専行みたいだし、あいつの発言はスルーしよう。

「おう、それで間違ってないぞ。水月さんが元々こっちに來る予定だった人?」

「えぇ、そうです。本來は8時頃を目処に話を進める予定でしたが、こちらの愚弟が先走りまして慌てて追いかけてきました。この度はご迷をお掛けしました」

愚弟って事は、この2人はリアル兄弟か。いや姉弟か? いかん、水月さんの別がどっちなのかが分からない。……まぁいいか。換や渉の會話する限りにおいてどっちでも大丈夫といえば大丈夫だ。なくとも未だに自分から來ておいて名乗ってもいないイノシシより遙かにまともな人だろう。

というかそもそも8時頃が目処だったのか。まぁ昨日や一昨日と用があってログインしてなかったりしない限りはみんながいた時間だな。やっぱりこのイノシシの獨斷専行が原因か。

「ケイさん、不躾なのは重々承知なのですが1つお願いを聞いて頂けないでしょうか?」

「……容による」

「こちらの愚弟は話し合いの邪魔にしかならないので、どこか別の場所に移できませんか?」

「おい、邪魔ってなんだよ!?」

「あーそれならこっちがいいかな」

川の方にでも案しようかと思ったら、イノシシが煩い。くそ、こいつやっぱり邪魔なだけだな……。水月さんも段々と苛立ちが隠せなくなっているようで、苛立っている気配が伝わってくる。

「……ケイさん、しだけお待ちいただけませんか?」

「別に良いけど、何をするんだ?」

「いえ、ちょっとリアル側でですね?」

あ、なんとなく分かった。リアルの兄弟か姉弟だから出來る手段か。まぁこっちとしてはこのイノシシ居ないほうがありがたいので問題ない。むしろこちらからお願いしたい。そして一度水月さんはログアウトして姿が消えた。

「んな!? 何考えてんだよ!? あ……」

そしてしばらくして、イノシシの姿も消える。今頃リアルで言い合いでもしているのかもしれないが、それは俺らには関係のない話だ。

「ケイさん! もうあのイノシシの人いないね!」

「あ、ハーレさん降りてきたのか」

「多分、力関係だとクマの水月さんの方が上っぽいしね!」

ハーレさんの言うとおり、イノシシは文句こそ言っているが最終的には黙らされている。多分、水月さんはあのイノシシに対する何らかの抑止力を持っているのだろう。

まぁ俺も妹がゲーム関係でトラブルを起こせば、ゲーム機取り上げという手段もあったりするしな。妹がなんのゲームしてるか知らないからゲームトラブルでは実行する事もないだろうけど。

「すみません、お待たせしました。そちらのリスの方もアルマースさんのご友人ですか?」

「そだよー! リスのハーレです。よろしくね、水月さん!」

「こちらこそよろしくお願いします」

「ちょっと上から覗き見してたけどごめんね?」

「いえ、構いません。あの愚弟が迷をかけたのが原因でしょうし……」

うん、水月さんとであればまともな渉も出來そうだ。今のうちに的な話でも聞いておくか。

「大のところは推測で分かってるんだけど、確認いいか?」

「えぇ、どうぞ。その為に來ましたので」

「えーと、とりあえずうちのアル、木のアルマースと、そっちの木の人の進化を互いに手伝うって話で良いんだよな?」

「まだ詳細は決まってませんが、大はそんなところですね。私達側は私が実行役を引きけました」

「さっきのイノシシの人は結局何だったの?」

「あれはお恥ずかしい限りですが、制止しても聞かず勝手に飛び出して行っただけなのです。ですからこの件には関わっておりませんし、これ以上関わらせる気もありません」

「あいつの行に手を焼いてるんだな……」

「やっぱり不快な思いをさせていましたか。本當に申し訳ありません」

どうやら水月さんも相當苦労しているらしい。

「大の事は分かったけど、ちょっと待ってもらうしかないんだけど構わないかな? まだアルはログインしてないんだよ」

「あ、はい。それは承知の上です。まずはあの愚弟を止める必要があったのと、謝罪にと伺っただけですので。改めて話が纏まって、お互いの了承が取れてから再度伺いますね」

「わかったよ! アルさんにも伝えとくね!」

「はい、ありがとうございます。それではこれで一度失禮しますね」

その言葉を殘して水月さんは立ち去っていった。初対面の他の群集がいればやり辛い事もあるという事も把握しているのだろう。水月さんに関しては何も問題はなさそうだな。とりあえず、結局アルのログイン待ちか。

「……やはりゲームで対人関係の改善というのは無理がありましたか。本當に申し訳ない事をしてしまいました……」

なにか申し訳なさそうな、困ったような聲が聞こえたが、詳しい事も分からないので引き止めて聞こうとも思わなかった。あれが弟だと々大変なんだろうとは思うけども。

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