目的地に向けて川沿いに下っている最中にそれは突然現れた。

「あ、逃げやがった！？」

「カニは経験値が結構良いんですよ！　逃がすのは勿無いです！」

「マジか！？　くっそ、逃してたまるか！」

「PTが違う私が戦いに混ざりますと邪魔になりますので、対処は皆さんでお願いします！」

水月さんの報によるとカニは、経験値が良いらしい。進化したてでしステータス的には弱化しているので是非ともそんな敵は倒しておきたい！

本來なら水月さんも一緒のPTにしてしまいたい所だけど1PTの上限は6名だ。水月さんのみならPTに加は出來るけど、その場合だと水月さんがPTメンバーとの連絡が出來なくなってしまう。あのイノシシのアーサーの件がなければフレンド相手に使える一対一の通話を使えば良かったんだけどな。でも今のよく分からない狀態ではPTを抜けて迂闊に放置出來ないという事で水月さんはこういう形になった。

「まぁ生の殘滓だし、問題ない！」

「強くはないけど、きが早いな、このカニ！？」

「わ、わ！？　そっち行ったよ！？」

「アル、一旦『下ろし』！　この素早いカニ相手じゃける意味はあんまない！」

「ちっ、そうだな。俺がで捕まえる！」

「アル、捕獲は任せるぞ！　ヨッシさんとハーレさんはカニのきを制限して逃げ場を導！　サヤは攻撃待機！」

「おう、任せとけ！」

「分かった！」

「了解！」

「みんな、任せたよ！」

とまぁ、カニを相手に大騒を繰り広げている。大きくも小さくもない川に居そうな普通のカニに見える。初めは奇襲を仕掛けてくるほど好戦的だったが、數で負けているのに気付いたのか途中で逃げ出した。きが早くてなかなか仕留められていない。逃げ切られないように頑張ってはいるんだが、河原のほう砂利の上でコケがないというのも痛い。あ、やばい。川に向かって逃げ出した。

逃さねぇぞ、カニ野郎！　ここはあの手段で行こう。まずは下準備だ。

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よし、これで河原にあったコケのない石に移れた。よし、次だ！

「サヤ！　河原の川の手前まで投げてくれ！」

「うん、わかった！　『投擲』！」

サヤに石ごと投げてもらう。カニを川の中へと逃がせば追いかける事も難しいだろう。だから水際で食い止める！　よし、狙った位置に移完了！　ここの川への道は、封鎖させてもらう！

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核の位置を移させながら増を使って俺の専用の戦場を作り出す。ふふふ、これで川へは逃さない。俺のコケエリアに踏みれたららせて、その後毒も食らわせてやるぞ。來るなら來いや！

明らかに様子の変わった川岸の河原の様子に川への逃亡は諦めて別の方向へ逃げ出していく。ふふふ、そう簡単に逃げられると思うなよ。

「『同族統率』！　カニの退路を塞いで！」

「そっちは駄目だよ！　『投擲』！」

「この、ちょこまかと！　よし今だ、『の作』！」

「よし、いいぞ、アル！」

「よし捕まえた！　って、こいつを切りやがった！？　それならこれでどうだ！」

ヨッシさんが生のハチを3匹呼び出してカニを囲んで導し、それでも意図しない方向に行く場合はその方向へと河原の石を拾ってハーレさんが投げつけていく。

そしてアルはを下ろしてヨッシさんとハーレさんの二人がかりで逃げ場を制限したカニを逃げられないようにをかす。初めは直接捕まえるつもりで細めのでやっていたようだが、カニのハサミに切られた事で太いに変えていた。進化したおかげか、以前よりも太いも作出來るようになったらしい。

太いに切り替えてからはカニのハサミでは切れないようで、カニを中心に円を描くようにグルグルとをばしていき、筒狀になるように作していく。これでもうカニの逃げ場はない。

「よし、サヤ任せた！」

「任せて！」

仕留め役のサヤは爪をばし、アルのによって閉じ込められたカニに向かって歩いていく。そしてカニの元へと辿り著いた。

「経験値はありがたくもらうからね？　『爪撃』！」

容赦のないそのサヤの一撃がカニの命を奪い去った。逃げ足こそ早かったけど、充分対処出來たな。まぁ折角進化したのに生の殘滓に苦戦してたら世話ないが。

「おし、レベルアップ！」

「私もだね！」

「同じく。このカニ、経験値は良いね」

「私もだよ！」

「あー俺は上がってないな」

「ケイだけは先に一戦やってるからな。そのせいだろ」

「そういやそうだな」

イノシシことアーサーを一方的にボコった事でLv2も上がったからな。その分だけ経験値の貯まり合に差があるのだろう。それでも1で4人が一気にLv1上がるんだから大した経験値である。

「皆さん連攜が凄いですね。赤の群集の人でもなかなかあのカニを倒せる人はいないのですけど」

「強さ的には大したことなかったが、問題はあの逃げ足か？」

「えぇ、そうです。初めのカニからの奇襲の段階で捕まえなければまず逃げられるんですよ。罠でも作れれば簡単に捕まえられるんでしょうけど、籠もなにもないですからね」

そりゃ道も何も無いからね。生のと違ってや植のだから細かな作業は難しいし、リアル技をそのまま持ち込んで作れる訳がない。材料くらいは植でもなんとか加工すればいけるだろうけども……。あーこれはどうだろう？

「なぁアル、の作で籠編むとか出來ないか？」

「やり方次第じゃ出來そうな気もするが、籠の作り方とか知らねぇぞ？　そもそも編んだ後、どうすんだ？　切り離したら多分消えるぞ？」

「そういやさっき切られたは消えてたな……」

「俺が使う分には問題ないかもしれんが、面倒なだけだな。不種になったならまだ考えたけど、移種だからその辺は問題ないし」

「それもそうか。まぁ後で々考えてみるかな」

「突飛なアイデア、期待しとくぜ」

さて、期待に答えられるかはわからないけどなんか考えておこう。ツチノコのリベンジ戦も控えているし、きを止める手段はしいとこだしな。あとあの火の対策も。

「それでは參りましょうか。こちらです」

カニ狩りも終わった事だし、細かい事は後回しにしておこう。意外とカニ討伐に結構時間がかかっていたので、これ以上はあまり待たせないようにしないと。

川から外れ、再び森の中へとっていく。そこにし拓けた場所があり、そこに植わる木と、イノシシが待ち構えていた。ようやく目的地に到著したということである。

「やぁやぁ、よく來てくれたね。アルマースとその友人達よ。僕はフラムと言う。今回はよろしく頼むよ」

「おう、よろしくな。ちょっと予定より遅くなって悪い」

「いや、こちらこそ迷をかけたようで済まない。アーサー、謝罪を」

「言われなくても分かってるって！」

木の人に促されながら、こちらへイノシシのアーサーが歩み寄ってくる。そして前足を折り、頭を下げていく。

「コケのアニキ、それに皆さん、無自覚とはいえ無禮な言をしてすみませんでした！」

「……おい、なんかコケのアニキとか呼ばれてるぞ？」

「なんでアニキだよ……。まぁいいや、とりあえず自覚したならマナー違反は気を付けろよ。それとPTメンバーのフラムの言う事も……。え、フラム……？」

「ん？　どうしたの、ケイ？」

「……ケイ……だと……！？」

このゲームは同名使用は出來なかった筈だ。だから、リアルのあいつが言ったフラムという名を持つプレイヤーはただ一人。クラスメイトの佐山慎也、その人という事になる。そういや赤の群集だって言ってたな。思ったより早くの遭遇になった訳だ。

「あー、なるほど。お前、変な喋り方して何やってんの、フラム？」

「やっぱりかー！？　てか話題のコケってお前かよ！？」

「そりゃこっちの臺詞だよ。PTメンバーとちゃんと意思疎通しとけよ。々迷したぞ、こっちは」

「いや、それはマジで悪かった……」

リアル知り合いとのゲームでの遭遇は々と変わった狀況のものであった。いや、慎也が言ってたフレンド2人が水月さんとアーサーだとは思わなかったな。イノシシもなんか俺の事をコケのアニキとか呼びだしてなんか妙にややこしいじになってるし、明日リアルで責め立てるかな。よし、そうしよう。