《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第4話 また會えてうれしいわ ※挿絵注意
「バチモンイベントですね!! それなら、プレゼントボックスを開いてみてください」
「ええと……ここね!」
ゼッカに言われたとおり、メニュー畫面からプレゼントボックスを開く。すると、そこには様々なアイテムが並んでいる。スタートダッシュ応援キャンペーンやログインボーナスやらが並ぶ中、ヨハンの目は【バチモンコラボイベント開催記念品】に止まる。それをタップすると、手元に卵型のおもちゃが出現する。
「召喚獣は普通、水晶にっているんですけど、コラボ系はコラボ元のアイテムの形をしていることが多いんですよ」
「へぇ……それは素晴らしいわね」
「細かいですよねぇ、私このゲームのこういうところ大好きで。この卵型のおもちゃも、私が生まれる前に流行ってたらしいですよって……どうしたんですかヨハンさん!? どこか痛いんですか!?」
「し、心配しないでゼッカちゃん。大丈夫、私は大丈夫よ。私の期にゼッカちゃんが生まれていないという事実に思わぬダメージを食らっただけよ」
バーチャルモンスターは20年以上前。當時流行っていた攜帯型育ゲームの流れを汲んだ育ゲームであった。卵型のおもちゃにっているバーチャルモンスターのお世話をすることで、モンスターは様々な姿へと進化していく。そして20年前にはバチモンを題材としたアニメも放映され、大人気を博した。実はヨハンもアニメからバチモンを知ったのだ。
「じゃあ、當時ヨハンさんもこれを持っていたんですか?」
「ああ……うん。持ってた……持ってたんだけど」
「……?」
ヨハンの、圭の苦い記憶が蘇る。當時8歳だった圭は、お年玉でバーチャルモンスターを購し、日々育に勵んでいた。當時の圭にとって、バチモンは寶で、何年も遊び続けていた。単純なゲームであったものの、おもちゃの中でくモンスターに本の命をじ、大切に育てていた。
だが4年生に上がった頃の話だ。未だにおもちゃを卒業できない、どういうことだ? と父親に叱られ、々に壊されてしまったのだ。目の前で。
「別に勉強サボってたとか、そういうわけじゃないんだけどね。ごめんね。つまらないよねこんな話……ってゼッカちゃん!? どうして泣いてるの?」
「ゆ、許せないです! ヨハンさんのお父さんだろうと、私は怒ってます! 酷すぎですよ、子供の寶を勝手に壊すなんて!」
「ゼッカちゃん……」
ヨハンは驚いていた。初対面の自分のためにここまで悲しんでくれているの優しさに。そして、當時の自分はどうだったかと振り返る。きっと、彼ほど泣いてはいなかったはずだ。それが大人になるということなんだと、それ以來、勉強やスポーツに力をれるようになった。
おそらく自分は、【ゲームやアニメは子供のための稚なモノ。小學校のうちに卒業するモノ】という価値観に縛られていた、最後の世代なのだろうとヨハンは思う。下の世代は、妹たちは普通に高校生や大學生になってもそういった文化に浸っているところを見てきたからだ。
だからなんとも思っていなかったが。ヨハンは當時の自分の代わりに泣いてくれているを宥めると、一言「ありがとうね」と伝えた。するとゼッカは泣き止んで、今度は満面の笑みを浮かべる。
「これ、きっと運命ですよ! 20年の時を超えて、ヨハンさんの相棒がGOO(ジェネシスオメガオンラインの略稱)に復活したんです!」
「ちょっと大げさな気がするわ……」
「大げさなんかじゃありません。ああ、そんなエピソードを聞いたら、私までわくわくしてきちゃいました。ヨハンさん、早速召喚しましょう」
「えっ、ここで召喚ってできるの?」
「できます! 戦いはできないけど、喚び出すだけならできるんです!」
ゼッカは興した様子で召喚獣の使い方を教えてくれる。どうやらボタンを押して臺詞を言うだけでいいらしい。
「召喚獣召喚! ――現れよ【ヒナドラ】!!」
ヨハンの臺詞に反応し、初級召喚のスキルが発する。地面に幾何學的な魔法陣が浮かび上がると、その中から小さなモンスターが出現した。
「もっきゅ」
竜の頭部をデフォルメしたような姿をした魔が姿を現す。黒い表と丸っこい白い角を持つそのモンスターの姿は、ヨハンのよく知るものだった。
「ほ、本みたいだわ……」
ヨハンは思わず抱き上げる。ヒナドラはくすぐったそうに「もきゅ」と鳴く。その姿はアニメで見た姿と全くそっくりで、そして子供の頃に夢想した姿とそっくりだった。遠い昔。子供の頃に自ら捨ててしまった、何か大事なものが、ヨハンの中で蘇っていく。
「久しぶりの再會ですね」
ゼッカの臺詞にうんと頷くと、ヨハンはヒナドラに顔を埋める。それは涙を隠すため。そして、誰にも聞かれないようにそっと呟いた。
「あの時、守ってあげられなくてごめんね」
「もきゅ?」
「なんでもない……また會えてうれしいわ」
涙が収まるまで、ヨハンはしばらくヒナドラを抱きしめていた。
***
「……~~というわけなんですよ」
「なるほど……」
ゼッカの教えで、ヨハンはバチモンコラボイベントの概要を完全に把握した。メニューからイベント専用エリアにワープし、そこでコラボ限定の召喚獣をり、バーチャルモンスターのアニメの名シーンを再現した戦闘を4回行う。1周クリアすることで、8種のコラボ限定召喚獣の中からランダムで1が貰えるというものだ。
召喚師以外にはあまりおいしいイベントとは言えないこと、そして現在ドロップ効率の味しいハンティングイベントが開催中ということで、過疎気味になっているが、ソロ専用のイベントなのでヨハン一人でも問題なく遊べるそうだ。
「々ありがとうゼッカちゃん。貴方に會えて良かったわ。それじゃあ私、イベントに行ってくるわね」
本當に世話になったと、頭を下げて禮を言うヨハン。
「そ、そんな。初心者に優しくするのは古參の義務ですから……それと、あの」
ゼッカは急に顔を赤らめ、もじもじし出す。
(ゼッカちゃんどうしたの急に!? でも可いわ)
心慌てるも、ヨハンはゼッカの言葉を待つ。
「あの、私とフレンド登録してくれませんか? また、お姉さんと遊びたいです」
(う~ん。バチモンイベント以外興味ないから斷りたいところだけど)
「駄目……ですか?」
(涙目可いわ……)
「オッケーよ!」
「やったー!」
ヨハン、可い子に甘いであった。フレンド登録を済ませると、ゼッカは手をブンブン振って去っていく。その姿を見送ってから、ヨハンはイベントエリアへの移ボタンをタップした。
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