《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第7話 VS小學生パーティ
「わんわんわん!!」
小型犬の姿をした召喚獣(バチモン)【イヌコロ】を呼び出したヨハンは、手探りでダンジョンを進んでいた。イヌコロを呼び出したのはスキル【もの拾い】を持っているからである。
「わんわんわん!!」
「そう、ここにあるのね」
イヌコロが示す場所に手をれてみると、エフェクトと共に寶箱が出現する。當然その中にはアイテムがっている。
「って、また召喚石なのね……しかも同じヤツだわ」
このイヌコロ、先程からいくつもアイテムを見つけてくれるのだが、その殆どが召喚石なのである。しかも全部【マジックゴーレム】と呼ばれる初級モンスター。保有スキルが一つしかない、正真正銘のコモンモンスターである。
拾い上げた召喚石をアイテムストレージに仕舞うと、ヨハン自にもスキル発のメッセージが表示される。見回してみると、し先の地面がって見えた。
「ふふ、私も見つけたわよイヌコロ」
そう。ラスボスのようなビジュアルをした鎧カオスアポカリプスの保有する裝備スキルにより、ヨハンは召喚可能な召喚獣のスキルを全て使用、発することができる。つまり、イヌコロの持っている【もの拾い】のスキルをヨハンも使用できる。
それに気が付いたヨハンはイヌコロと「どっちが多くアイテムを見つけられるか競爭よ!」とダンジョンを探索していたのだが、ここで一つの事実に気が付いた。
「なんか、私のほうが隠しアイテムを見つける回數多くない?」と。
そして々考えた結果、ヨハンは一つの結論にたどり著く。もしかして、スキルの効果が重複しているのでは? と。
ヨハンの【イヌコロ】の所持數は6個である。つまり【もの拾い】のスキルを6個、常に同時に発している狀態なのではないかと?
「だとすると強すぎな気がするけど……」
けれどまぁ、このゲームはこのくらいの強さが普通なのかもしれないわね……と考えながら寶箱を開ける。ゲーム経験が期の【ろくよん】とゲーセンのクレーンゲームくらいしかないヨハンは、ゲームバランスには疎かった。
「ひぇ、またマジックゴーレム。これで11個目じゃない……」
さすがに要らないなぁと思いストレージにれようとしたが、その時メッセージが表示される。
『【マジックゴーレム】は所持數が限界です』
「ああそうか。召喚石は一つの種類につき10個までしか持てないんだっけ」
かつてゼッカに聞いていた知識を思い出し、肩を落とした時だった。進行方向の角からぞろぞろと人がやってきた。それはさっきこっそり見送った、5人の小學生たちだった。
(なるほど全然モンスターに遭遇しないと思ってたけど、この子たちが全部倒しちゃってたのね)
と一人納得していたヨハンだったが、年たちはそんなヨハンを訝しげに見つめると、やがて口を開いた。
「おい、その裝備どこで手にれた?」
「お前レベル2だろう? 何故そんないい裝備を持ってる?」
「よこせ」
「あー」
可いと思っていたが、どうやらマナーとかなってないクソガキタイプの小學生だったかぁと一人落ち込む。現実の小學生男子はドラマや漫畫のように可くはないのである。
ワンチャン戦って勝てないかと、ヨハンはちらりと相手の名前を見やる。このゲームでは意識して相手プレイヤーを見つめると、プレイヤーネームとレベルが頭の上に浮かんで見えるのだ。
オウガ Lv:15
ゾーマ Lv:14
ちんこまん Lv:13
ユウヤ Lv:14
パンチョ Lv:15
(全員レベル10以上かぁ・・・・・・無理無理。勝てそうもないな。これは穏便に済ませないと)
「あのね、この鎧はイベントで手にれたものなの。だからもう手にらないのよ」
「ちっ、殘念だ……おい行こうぜ」
リーダー格と思われるオウガという年は立ち去ろうとするが、殘り4人はまだ納得できないようだ。それぞれ武を取り出す。
「お、おいダセー真似やめろって」
そんなオウガの制止も聞かず、4人が襲いかかってくる。
「わんわんっ!」
だが襲い來る年たちの前にイヌコロが立ち塞がる。
(い、イヌコロが私を守ってくれてる!)
とヨハンがトキめいていたのも束の間。
「邪魔だー!」
「雑魚が出てくんなよ雑魚がよぉ!!」
「死ねー」
初級召喚獣のイヌコロはレベル10程度のステータスを持っているが、年たちの數の暴力により、一気にHPを削られる。第二のスキル【ガッツ】を使うものの、無敵時間の後に再び攻撃をけ、イヌコロは粒子となって消滅した。
「あっ……」
ヨハンは普段あまり腹を立てるタイプの人間ではない。仕事で部下がミスしたときも、冷靜に対処し、決して叱ったりはしないタイプである。だが今回の理不盡な仕打ちには、かなり頭に來たようだ。大好きなバチモンが罵倒と共に撃破されたせいだろう。
「君たち酷いなぁ。お姉さん、ちょっと悲しいなぁ」
「うっせぇババァ」
「裝備置いていけ」
「死ねー」
怒っているのは大好きなバチモンを倒されたからである。ババアと言われたからではない。念のため。
ヨハンは襲いかかってくる年たちに向けてスキルを発する。
「――ブラックフレイム!」
ユニーク裝備のカオスアポカリプスが持つ裝備スキル【暗黒の伝子】により、ヨハンは手持ちの召喚可能な召喚獣【ヒナドラ】のスキルである【ブラックフレイム】を発させた。
ヨハンの右手から放たれた黒い炎は襲い來る小學生たちのの一人、ゾーマに命中すると、一瞬で全に燃え広がる。そしてダメージエフェクトと共に、ゾーマのHPは一瞬にしてゼロになった。
「え……」
そしてゾーマのはの粒子となって消滅する。
「あれ……なんでなの?」
全員がこの事態に驚いていたが、中でも一番驚いていたのはヨハンだった。さすがに勝てないだろうなぁ~と考えていたのに、黒い炎は一瞬で相手を消滅させたのだ。
(あ、もしかしてマジックゴーレムのスキル……?)
ここでヨハンは所持數限界まで拾い集めたマジックゴーレムのスキルを思い出す。
【魔力放出】
永続効果。自の魔力ステータスに+50
(えっと……マジックゴーレムを10個持ってるでしょ? 魔力放出は魔力のステータスを+50するでしょ? それが重複して10個分だから……あ、今の私、魔力の數値に+500されてるんだ)
おそらくLv50のトッププレイヤーにすらダメージを與えられるだろう數値から放たれた炎の威力に、他の年たちは怯える。そして。
「「「すみませんでしたー!!」」」
と走り去ってしまう。
「あ、待って……待ちなさい!」
ヨハンはその背中に聲を掛けるが、追いつけそうもなかった。
「困ったわね。ちゃんと謝りたいんだけど」
どう考えても先に仕掛けてきた小學生パーティが悪いのだが、頭が冷えたヨハンは謝ろうという考えに至る。だが今の彼の足では追いつけない。どうしたものかと考えていた時、彼の脳裏に妙案が浮かぶ。
「そうだ……召喚獣召喚――ゴースト!!」
ゼッカに貰った初心者用の召喚師スターターセットのの一、ゴーストを召喚する。白い可らしいデザインの幽霊が現れた。このモンスターに戦闘能力はない。だが最初から便利なスキルを三つ保有しているのだ。
「ゴースト、【明化】しながらあの子たちを【追跡】して!」
「……おーけー」
ゴーストは頷くと、その姿を消してしまう。おそらく年たちを追いかけたのだ。ゴーストのスキルは三つ。
【明化】自を見えなくする。発中は攻撃できない。
【追跡】対象をどこまでも追いかける。発中は攻撃できない。
【単獨顕現】召喚者から離れても消滅しない。
と、偵察や追跡に特化した能となっている。
「さらにさっき覚えたスキルの【視覚共有】を発っと。お、ちゃんと追いかけてるわね」
視覚共有のスキルを発すると、目の前に新しいウィンドウが開き、今ゴーストが見ている映像が映し出される。しばらく待っていると、座り込んで休憩している年たちが目にった。どうやら追いついたらしい。
「よし、それじゃあもう一つのスキルを発……【シフトチェンジ】!」
そしてヨハンは召喚獣と自分の位置を換するスキルを発した。
***
「はぁはぁ、どうなってんだよあのババァ」
「俺たちの中で一番守備が厚いゾーマが一撃って……」
「チートか?」
「かもしれねぇ……ともかく今日はもう無理だ。ボスには明日また挑戦だな」
「あー明日俺無理」
「俺もー。塾のテストだわ」
と、目下の危機であるヨハンからなんとか逃げ延びた小學生パーティは雑談に興じていた。ボスに挑戦するつもりだったのだが、余計なことをしたせいで計畫が臺無しになってしまい、テンションは低かった。そしてそろそろ解散しようかという時に。
年たちの前に、突如それは現れた。
「やぁ!」
「「「ぎゃあああああああああああああ!?」」」
なんの前れもなく、漆黒の鎧にを包んだプレイヤーヨハンが目の前に現れた。兜から覗く瞳は毒々しい紫に輝いており、ここにいる全員を生かして帰すつもりはないのだと、年たちは悟る。
もはや取るべき策は一つだった。
――ログアウト。
年達は「どうか名前と顔を覚えられていませんように!」と願いながら、ゲームから現実へと帰っていった。
「あの……殺してしまってごめんなさいって……謝ろうと……思ったんだけど……」
虛空に手をばしながら、即座に全員が消えてしまった空間に呟くヨハン。
「え、私そんなに怖い? ちょっと凹むわね……いや、そもそもこの裝備が悪いのよ」
いつか絶対に可い裝備を作ろうと心に誓うヨハン。
「そういえば何も考えずに來ちゃったけど……」
気が付けば、目の前には大きな扉がある。その扉はれただけで、ゴゴゴと大きな音を立てて開いた。
「ここがボスの部屋ってことね……」
これを倒せば中級召喚に一歩近づく。格好良いバチモンを召喚できる。覚悟を決めて中にった。
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