《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第29話 意外な助っ人

圧倒的絶の狀況に駆けつけてくれたのは、かつて一度だけやりとりをしたプレイヤーコンとその召喚獣プレレフアだった。

「え……ええ!? コンさん? どうして……それに召喚獣も!?」

「ああコレな? ここにる前に先に召喚しとったんよ。頭ええやろうち?」

するヨハンに朗らかに答えるコン。相変わらず何を考えているのかわからない人だと思いつつ、ヨハンは尋ねた。

「ここに來たってことは、何か策があるの?」

「策? そんなんあらへんよ。あれは正真正銘の糞モンスターや」

「だったら……どうして來ちゃったの!? 知ってるでしょ、アイテムも裝備も全部取られちゃうこと」

「知っとる。全部知っとるんよ。うちも來るつもりはありまへんでした」

「じゃあ、どうして?」

「何でやろな。一生懸命戦ってる魔王はんらを見ていたら、が熱うなって。気づいたらが勝手にいとったんよ。うちアホやわ」

コンはペロリと下を出して笑う。

「全然アホじゃないわ。素敵よ貴方」

「ほんまに? 照れるわ」

「げははははは!」

不死蝶の舞による幻効果が切れ、海賊王は再び戦闘態勢にり、狙いをヨハンとコンに定めた。だが、そんな海賊王に迫るもう一つのがあった。

「ぶるるうあああああ」

「げは? げははははは!」

海賊王に斬りかかったのは、一人の剣士職のプレイヤーだった。その頭上に表示されている名は【ソロ】。ヨハンがかつて戦った、三刀流のソロだった。

「ふぁいふふぉふぁふぉふふぉわふぉふぉふぉれふぁ」(ヨハンを倒すのはこの俺だ)

「あらあら。助っ人はまだおったみたいやね。知り合いなん?」

「いや……確かイベントで一回戦っただけの人……」

「イベントで一戦。ほなら助けに來る理由には十分や。あの三刀流のお人もアホなんやろ。ええアホや」

「ふがががががが」

三刀流のソロは三本の刀で敵の攻撃を捌く。だがゼッカほど上手くはない。徐々にHPを削られていく。

「プレレフア……【フラワー・オブ・ライフ】をうちに」

「ぷーわー」

らしい鳴き聲を上げながら、プレレフアを最強たらしめている【フラワー・オブ・ライフ】を発させる。その能力により、コンの魔力は三倍となる。

「そしてこれがうちの魔法杖や」

自慢げに取り出したのは、どう見ても拳銃にしか見えない裝備。だが紛れもない魔法杖に分類される裝備である。

「これで撃って撃って撃ちまくったる。ええい全速前進や!!」

ソロを援護しようと、初級火魔法ファイヤーボールを銃から撃ちまくるコン。一発の破壊力こそないが、著実に相手のHPを削っている。

「げははははは」

「ふぉっい、ひょほふぃふんふぁ」(オイ、よそ見すんな)

ソロは三刀流専用スキル「トリプルスラッシュ」を繰り出す。

「げはっ……げははは」

だが、ゼッカほどHPを削ることは出來ない。

「うちらが目指す勝ち筋は変わらへん。魔王はんの鎧を取り返すことや」

「ほうふぁい」(了解!)

「私も……召喚獣召喚――ヒナドラ!!」

「もきゅ!」

幾何學的な魔法陣から、小さな黒い竜が姿を現す。スキルのブラックフレイムを使うと一発で退場なので、打撃戦で參戦させる。

「もっ……もっ……」

ヒナドラの繰り出す當たりはダメージを與えられているのかさえ怪しかったが、それでも三者同時攻撃は強い。手數の多さで、海賊王に【オールスティール】を発させる暇を與えない。

「げははははは」

だが海賊王は自分を骨単位でバラバラにすると、ヨハン達から遠く離れた場所まで飛んでいき、再び組み上がる。そしてこちらに手を翳してくる。

「げはは……その寶、気にった。【オールスティール】!!」

「ぐ……おのれ海賊王めぇ!」

「いやん……」

ソロとコン、二人の裝備が一斉に奪われた。

「げはははははは」

そして、海賊王は再びこちらにやってくる。

「うちら弱すぎひん? 一回もアイテム落とさせられへんかった」

「面目ねぇ……こうなったら……特攻じゃあああぁぁボケぇぇええええええ」

ソロは素手で海賊王に毆りかかる。

「こうなったら破れかぶれや! うちも行ったるわ!」

コンもやけくそになったように海賊王に襲いかかった。ヒナドラもその後に続く。

「よ、よし……こうなったら私も」

「あかんわ……魔王はんはそこにおり」

「ど、どうして!」

「俺たちがアンタの鎧を必ず取り返す! だからアンタはそこで待ってろ」

「もっきゅ」

「で、でも……」

鎧が手にったところで……他の召喚獣が居なければ何も出來ない。

「ぐあああああ」

そして、ついにソロのに海賊王のサーベルが命中した。基礎防力のないソロはそれでHPを全て失い、そのは消滅した。

「んもう! いい加減にぃ……落ちろ落ちろ落ちろー!」

「もっきゅもっきゅもっきゅー!」

コンとヒナドラは攻撃の手を緩めない。その素手による攻撃が一どれだけのダメージになるというのか。だが、例え1ポイントだろうと、積み重なれば、やがて大きなうねりとなる。

『海賊王のスキル【略奪者の末路】が発しました』

ようやく、海賊王のから三つのアイテムをドロップした。コンがめざとくそのアイテムを見定める。

(一つはやくそう……これはつかえへん。殘りの二つは……っ!)

コンはそのアイテムを見た瞬間……この戦いの勝利を確信した。

(なんやあの報……ほんまやったん)

コンの口角が上がる。

コンは二つのアイテムを拾い上げると、それをヒナドラの口に押し込んだ。

「ももっ!?」

「これを魔王はんのところに」

「も?」

「ええから。はよ行くんや」

「もっきゅ」

もっもっと跳ねながら、ヨハンの元を目指すヒナドラ。それを見た海賊王はヒナドラに向けて剣を構える。

「アンタの相手はこっちや。プレレフア!」

「ぷーわー」

MPが盡きかけ、もうスキルを発する余力の無いプレレフアと一緒に、海賊王に摑みかかるコン。だがその拘束をたやすく振りほどいた海賊王は、プレレフアを一刀両斷する。

「ぷーわあああ」

真っ二つになり消滅するプレレフア。

(よう頑張ったなぁプレレフア……ありがとさん)

「げははははは!!」

「ってあかんわ。うちの力だけじゃコイツを抑えられへん。かんにんな魔王はん」

「げははははは――【トルネードスラッシュ】!!」

コンの拘束もむなしく、海賊王は攻撃を放った。振り下ろされたサーベルから放たれた竜巻のような斬撃が、ヨハンとヒナドラを襲う。

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