《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第44話 例の剣

【上級召喚】。エクストラサモンとも呼ばれるそのスキルは、【中級召喚】を持つ召喚師がレベル40を迎えると覚える事が出來る、上級召喚獣を召喚する為のスキルである。

だが、上級召喚獣の召喚は、中級までとは勝手が違う。まず上級召喚獣の召喚にはコストが掛かる。召喚する際、自分か味方のコントロールする召喚獣をコストとして最低2、消滅させる必要がある。必要なコストの數は上級召喚獣によって異なる。

ただ、例の弱化により、自分一人でこのコストを満たす事が事実上不可能となった為、救済措置として、コストの代わりに大量のMPを支払うことでも、召喚することが出來るようになった。

だが必要なMPは個人で支払える分を大きく超えている為、コンがやったようにMP消費を踏み倒すアイテムを使うなど、工夫が必要である。

つまり、上級召喚獣の召喚は非常に面倒なのだ。コンが好んで中級や初級を使う理由がここにある。

だがそれは、召喚に手間が掛かるというだけで、上級召喚獣が弱いという事では、決して無い。

「く……この……離せ……離して!」

ギルティアのを縛り上げる形で実化したハイドラプランツ。植が絡まり合って竜のような姿をとったこのモンスターはコストを4要求する、かなりハイコストなモンスターである。そんなハイレベルなモンスターのツタによる拘束。簡単には抜け出せない。

「今のうちやゼッカちゃん! 決めてもうて!」

「了解ですコンさん! ――グランドクロ……」

大技の発準備にかかるゼッカ。だが。

「舐めるな! 【換裝】……ソードアーマー!!」

ギルティアは換裝スキルにより、黃金の鎧から、刃の生えた無骨な鎧に裝備を変更する。

ソードアーマー。鎧にも攻撃判定のある、ユニーク裝備ではないものの、超攻撃的な防である。

「――【スラッシュ】!!」

そして、鎧の刃で剣士の攻撃スキルを発させると、自を縛り上げていたツタを切り裂き、ハイドラプランツの拘束から出する。

「そないな方法で出を!? なんてやつや……うちの切り札がこうも簡単に!」

「はっ、私を侮ったわね!」

鼻で笑うと、ギルティアは地面に著地。そして、再び換裝を発させる。鎧を金の鎧に戻し、さらに右手に、新しい剣を握っている。

「あれは……」

※イメージ図

その剣の正に初めに気が付いたのは観客席にいたヨハンだった。その剣は持ち主の倍くらいの長さがあり、刀は白く、所々に金の文字が刻まれている。

その名も【オメガソード】。バーチャルモンスターズにて最強と名高いオメガプライムをモチーフとした剣であり、コラボイベント・バーチャルモンスターズにて手にれる事が出來るユニーク裝備である。

「待って。あれなんなん? あれって確か、ロランドはんが手にれはったってツイッターで自慢しとった奴やん! なんであの子が持ってはるん!?」

「あれがあの子……ギルティアの力です」

ギルティアの持つユニークスキルは【コレクター】。本來譲渡不可のユニーク裝備を譲って貰う事が可能なスキル。ギルティア自は何一つユニークアイテムを手にれた事は無い。だが兄ロランドが集めたユニーク裝備を、彼は【コレクター】の力で譲って貰っているのだ。ちなみにコレクターによるアイテム譲渡は各アイテム一度きりなので、ギルティアを介してのユニークアイテムの換や取引は不可能である。

「今まであの子が使った全てのユニーク裝備本來の所有者はロランドさんです。ですが、あの人はユニーク裝備に興味がない。一通り自慢したら妹に譲ってしまうんです」

「アホや……いや、そうとも言い切れん。だって確かあの剣は……」

「そうよ。このオメガソードは召喚獣に対して圧倒的な力を持つ。今からそれを見せてあげるわ」

ギルティアがオメガソードを天に掲げる。何か剣に蔵されたスキルを発させるようである。

「させへんわ、ハイドラプランツ!」

コンの命令をけ、ハイドラプランツは無數の手をばし、ギルティアを襲う。だが。

「そんな……」

ハイドラプランツの放った手は見えないバリアに弾かれた様に消滅する。

「はっ、この剣は対召喚獣用最強裝備。この剣を持っている限り、アタシは召喚獣からのあらゆる攻撃、スキルをけ付けない! 狐、アンタの切り札も無力よ」

「そんな……うちのハイドラプランツが……」

「それだけじゃないわ……この剣に込められたスキル――【オールデリート】を発。範囲の全ての召喚獣を無條件に破壊する!」

天に掲げられたオメガソードから、黒い波が飛び出した。そしてその波がハイドラプランツにれると、そのを一瞬のに消滅させる。

「く……やっぱり弱化されたサモナーじゃ、最強の剣士には勝てへんか」

「コンさん……」

がっくりと項垂れるコンを見て、ギルティアが笑う。

「ま、アタシ相手に良くやったと褒めてあげるわ。アンタも弱化前は強かったんでしょうけど……まぁ今やこの剣があるし……弱化がなくてもアタシの勝ちだったと思うけど」

コンにオメガソードを見せびらかすようにしながら、ギルティアは笑う。

「さぁ、他の召喚獣を出しなさい。まぁ最強の召喚獣を失ったアンタに何か出來るとは思わないけど」

「くっ……くくく……なーんちゃって」

「は? 何よいきなり……」

「いやね、さっきはハイドラプランツがうちの切り札言うたけど……あれ噓どす」

「は……噓?」

「召喚師の事知らな過ぎや。あんなんコスト重いだけの雑魚や。ビジュアルに騙されてもうて、かわいそうに」

「く……だったら本當のアンタの切り札を召喚しなさい。どんなモンスターが出てきたって、この剣で消滅させてやるんだから!」

「ほな、お言葉に甘えて……召喚獣召喚――バックアップチア!」

幾何學的な魔法陣から、チアガール姿の天使が現れる。

「それが最強……? まあいいわ。死ね――【オールデリート】」

オメガソードを天に掲げ、召喚獣消滅のスキルを発させようとするギルティア。だが。

黒い波はいつまで経っても出なかった。

「そんな……チャージタイムは完了している筈なのに……なんで!? バグった!?」

「何にもせえへんの? ならバックアップチア、ゼッカちゃんに【パワーエール】」

「ありがとうございますコンさん」

「ちょっと……なんでよ……なんでスキルが……ええいもういいわ! 【換裝】……ええ!? 発しない!?」

「てえええええええいいいい」

スキルが発せず困するギルティアに、パワーエールによる筋力アップ効果を得たゼッカが斬りかかる。ギルティアは応戦するが、手に持っているのは5メートルの長剣。スピードタイプのゼッカを相手にするには圧倒的に不利。

「あらあらギルティアはん? 得意の換裝はどないしたん? そんな干し竿じゃゼッカちゃんには勝てへんよ?」

「うるさい! アンタ何をした!?」

「えぇーうちのせい? ちゃうよー?」

怒るギルティアと煽るコン。

もちろんギルティアのに起こった異常はコンの仕業である。

【三大厄災(トリプルディザスター)】。コンの持つユニークスキルである。自分が召喚した召喚獣を介に、倒したプレイヤーに不可視の狀態異常を與える、対プレイヤー用の恐ろしいスキルである。

コンはハイドラプランツを介に、ギルティアに【ダークウィルス】を仕込むことに功した。ダークウィルスの効果により、ギルティアは直近で使用した三つのスキルがこのデュエル中一切封じられる。つまり【オールデリート】【換裝】【スラッシュ】の三つを、この戦いで使用することは出來なくなった。換裝が封じられた以上、ギルティアは裝備を変更するためメニューを作しなくてはならない。だがそんな時間をゼッカは與えない。早さに優れた二刀流の剣戟でギルティアを追い詰める。

「ハイドラプランツが倒されるなんて計算のや。全てはこの狀況を作り出すため……さぁ、後はあちらがどう出るか」

コンはロランドを見やる。妹が防戦一方だが、未だにく気配は無い。

「くっ……こんな……アタシが……」

長い得で応戦するギルティア。だがゼッカのスピードに対応出來ず、黃金の鎧の防力を持ってしても、HPは限界を迎えていた。

そして。

「……グランドクロス!!」

「うああああああ」

ゼッカ最強の攻撃が命中。だがトドメには至らない。倒したかと思ったが、ギルティアはここでガッツを発。HP1で耐える。ここから10秒間の無敵狀態。だがゼッカはそれを待つつもりは無い。【無敵貫通】スキルを発し、トドメの一撃を放つが……。

「な……!?」

ギルティアを仕留めたと思った。だが、ゼッカの一撃を剣でけ止めたのは、ロランドだった。

「カットにるにしても早すぎや……いや違う……」

さっきまでロランドが居た場所には、ギルティアが移しており、既にHP回復用のポーションを使用している。

「場所をれ替えたんですね……」

「その通り。ポジションチェンジは貴方たちの専売特許ではない。はあああっ!!」

ロランドは打ち合っていたゼッカの剣を押し返すと同時にしゃがみ、足払い。ゼッカは勢を崩す。

「く……」

「――スラッシュ――パワースラッシュ!!」

無防備なに連続攻撃スキルをけ、ゼッカのHPはゼロとなり、観客席のヨハンの隣に送られる。

「く……ゼッカちゃんがやられてもうた……けどまぁ、滅多に無いロランドはんとの対戦……楽しませてもらおうやない」

不敵に笑うコン。だが、回復を終え、メニューから裝備を切り替えたギルティアがロランドに合流。

「ふふふ。アタシに何したか、教えて貰うわよ」

「では、今度はこちらが二人で行きましょうか」

「アカン……オワオワリどす……」

流石に無理。そう悟ったコンは両手を挙げ、降參した。

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