《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》幕間の語 天才年クロス參戦編
第一層と第二層を繋ぐ土のダンジョン。このダンジョンの出口に、多くの小學生プレイヤーが集まっていた。
かつてこのダンジョンでヨハンに絡み、敗走した小學生パーティの面々が運営するギルド【セカンドステージ】のメンバー達である。
彼らは先週このゲームを始めたクラスメイト【クロス】というプレイヤーをここで待っていた。
「なんでアイツをったんだよ……」
皆早くクロスが上がってこないかと待っていたが、只一人、オウガだけはクロスが自分たちのギルドにることを嫌がっていた。
「アイツをれたら、せっかく作った俺たちのギルドが滅茶苦茶にされるぞ」
「けどさ、俺たち來月のギルド対抗戦で勝ちたいんだよ」
「その為には、天才のアイツの力が必要なのさ」
「ああ。俺たちは大人共に復讐する為なら、なんだってするぜ」
「小學生だからって理由で、俺たちかなり殺されてるからな」
彼ら小學生プレイヤーは、他のプレイヤーによく殺される。だがそれはGOOプレイヤーのマナーが悪いからではない。彼らが小學生特有のウザ絡みで他プレイヤーに襲いかかるからに他ならない。GOOは「一緒に遊びたい」「手伝ってしい」と素直に言えば協力してくれるプレイヤーが多いのだ。
にもかかわらず彼らが殺されるのは、第一聲が「いいアイテム寄越せ」等、チンピラまがいな為だろう。つまり自衛の為の反撃でやられているのである。
「いや、あれはお前達が悪いんだろ?」
と突っ込むオウガだったが、それが聞きれられる事は無かった。サッカーのクラブチームに所屬しているオウガは禮儀というものを厳しくたたき込まれているが、他のメンバー全員がそうという訳では無い。まだ無邪気さと稚さを殘す彼らの怒りの矛先は完全に大人プレイヤー達に向いていた。そして自分たちがゲームで理不盡にげられているという話をクロスにして、彼をこのゲームにったのだった。
そして待つこと數十分。一人の年プレイヤーが土のダンジョンを出してきた。
「やぁ、來てくれたんだね……えっと、クロス君!」
現れたのは実年齢12歳の年、クロス。金に設定した髪が生來の利発そうな表に非常にマッチしている。には見慣れない裝備をにつけ、背には大きな弓を背負っている。
「やぁ、待たせたねみんな」
そして、待っていた他の小學生プレイヤー達に優しく微笑んだ。同年代の子や年下好きなお姉様なら思わずときめいてしまいそうなスマイルに、オウガは軽く舌打ちした。オウガはクロスと同じサッカーのクラブチームに所屬し、同じポジションを取り合っている為、彼を一方的にライバル視しているのだ。逆にクロスにとって、オウガは眼中にない存在なのだが。
「クロス君、もしかして一人?」
「パーティメンバーは!?」
「え、一人でクリアしたけど? 何か不味かったかな?」
「す、すげええええ!」
「クワガイガーを一人で倒すとか!」
「さっすが天才だぜ!」
「ははは、意外と簡単だったよ」
クロスはまんざらでもなさそうだった。
「さて、それじゃあみんなのギルドにってあげるけど、僕がギルマスって事でいいんだよね?」
クロスは現【セカンドステージ】のギルドマスターであるゾーマに訪ねる。ゾーマはきょとんとした顔をした。
「え……いや……」
「嫌なのかい? なら僕は引退させて貰うけど」
「おいゾーマ。譲れよ」
「そもそもお前には不相応だったんだよ」
「あ、ああ……わかった。君に任せるよクロス」
「初めからそうしてくれよ、時間が勿ない」
ゾーマはメニューを開くと、クロスをギルドに加させ、さらにギルドマスターの座を譲り渡した。
その様子を眺めながら、オウガは「ほれ見たことか」と呟く。天才と持て囃されているが、心では他者を見下しているクロスの質を、オウガは良く理解していた。
「ありがとうゾーマ。僕にギルドマスターを任せてくれたからには、このギルドを最強のギルドにしてみせるよ」
「あ……ああ。頼んだぜクロス君」
「まず、僕はこのギルドを小學生限定のギルドにしようと思っている」
そう言いながら、クロスはギルドのメンバーリストを開いた。
「この中に居る中學生以上の人を教えてくれるかな。即除名するから」
「え……いや、それは……」
「いや待ってくれよクロス君!」
流石にいきなり除名はどうなんだと慌てる小學生達。
「教えてくれないのかい? まぁいいや。ええと。この【クーガ】って人と【†ガブリエール†】て人かな」
全員に鳥が立った。當たっていたからだ。この二人こそがセカンドステージの中學生以上のメンバーだったのだ。
「な、なんでわかったの?」
「簡単だよ。名前とレベルかな」
なんてことないように言うクロス。
「僕たち小學生は忙しい。無駄な學校、塾にレッスンにスポーツ。輝かしい未來の為に、今を頑張っている。ゲームが出來るのは息抜き程度の時間だけ。けど大人は違う。もう人生が終わっているから、ゲームをやる時間が沢山ある。ほら、この二人だけレベルが50だろう?」
「いやーでも……」
「他の大人は糞だけど、その二人はマジでいい人なんだよ」
「そうそう。優しいし、攻略報とかも教えてくれるし」
「辭めさせるのはちょっと」
小學生といえど、どんな大人にでも逆らう訳ではない。普通に優しくしてくれたプレイヤーには懐いている。しかし、そんな事は知ったことではないとばかりにクロスは聲を重くする。
「攻略報ねぇ。ちなみに……」
クロスはメニューを開くと、自分のスキル欄を見せてきた。そして、【神の裁き】というスキルを指さす。
「これはアーチャー専用のスキル【神の裁き】。クワガイガーを初見且つ単獨で撃破すると手にるんだけど……その人達は教えてくれたのかな?」
「い、いや……」
「知らないと思う……」
「だよね。まぁ、こんな事に気が付くのは僕だけだと思う」
クロスはを張る。
「それに、僕はユニークスキルとユニーク裝備をもう3つ手にれてる」
「なっ」
クロスの発言に、今までつまらなそうな顔をしていたオウガも思わず聲を上げる。オウガもユニーク裝備がしくて、々試しているプレイヤーの一人だった。
「で、ゾーマ。君がかばってる人達、ユニーク裝備やユニークスキルの取り方を教えてくれるのかい?」
「いや……そんなの誰にもわからないよ」
「僕にはわかる」
「え!?」
「もう三つも手にれた。そしてその手條件を見た。それでもう、殘りの隠してあるユニークの手方法も見當がついちゃった。このゲームの運営も馬鹿な大人がやってるみたいだし、多分合ってると思う」
「流石……天才だ」
「確か、このゲームには500個のユニークが隠されていて、現在見つかっているユニークは100個程度らしい。僕の指示に従えば、セカンドステージに所屬する小學生全員にユニークを取らせてあげるよ」
自分が天才だと信じている男からのこの発言。オウガを除く4人は沸き立つ。自分もユニーク裝備を手にれて、大人達相手に格好良く勝つ事が出來る。そんな姿を夢想する。彼らの脳に、やさしくしてくれた大人プレイヤーの事は、もう無かった。
「しい!」
「頼むぜクロス君!」
「ユニーク取れるってなれば、他の奴らも加してくれるんじゃね?」
「ふふ、そうだね。勝つためには、もうちょっとメンバーを増やす必要があるね」
喜び合う小學生達を見つめながら、クロスは誰に言うでもなく、一人語り始める。
「僕達も今年で小學校を卒業する。そしたらもう、こんな風にゲームで遊ぶ時間なんて無くなるだろう。だから、最後の思い出づくりに……大人達と戦爭しよう。ふふ、きっと楽しくなるよ」
その獨白のようなつぶやきを、オウガだけはつまらなそうに聞いていた。
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