《【書籍二巻6月10日発売‼】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです【Web版】》第47話 みんな違ってみんないい
何故か日刊VRランキング2位まで再浮上しました。……つまり、皆さん可い裝を著たおじさんが大好きという事でよろしいか?
プレイヤー名【煙條P】は35歳の社會人である。既に結婚していて、今年10歳になる娘も居る一般人だ。そう、彼は変態でもなければ異常者でもない。
彼がこうなった↑原因を簡単に語っていこう。
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昨年末。忘年會のビンゴ大會でVRゲームの機材を手にれた彼は、はじめは遊ぶ気はなかった。娘や妻が居るなか、自分だけゲームをするという事に気が引けたからだ。だが娘も、父親にいちいち遊んで貰う必要のない年齢だ。そして、妻の「ゲーム好きでしょ? ストレス発散になるし、やってみれば?」という一言で、遊び始めることにした。
ジェネシス・オメガ・オンラインを選んだ理由はパッケージさえ購すれば課金要素なしで月額が安いからである。
名前を普段ネットで活する際に使用しているものと同じ【煙條P】とし、槍使いでゲームスタート。そして生産職のスキルを取り、アイテムや裝備を作るのを楽しんだ。
GOOでは外部で作した3DCGをゲームに持ち込み、コモンアイテムの見た目を変更することが出來るサービスが存在する。元々デザイン系の會社に勤めていた煙條Pは様々な見た目の服や裝備を作り出し、人気の生産職プレイヤーとなっていった。
そんな順風満帆だった彼のゲームライフが激変したのは一月ほど前のことだ。
アイドルスターズコラボイベント。この告知を見た瞬間、彼に電流が走る。アイドルスターズが世に出た15年ほど前。當時大學生だった煙條Pは、このゲームのアイドル達に魅せられていた。彼たちの魅力を世に広めるため、二次創作活を行っていたのだ。
その時の熱が蘇った彼はドロップ増加アイテム【プロデューサーのハチマキ】を増産。それを配ることで、様々なパーティに手伝って貰いながら、このイベントを遊び盡くした。だが戦っていた訳ではない。彼は歌うアイドル達を、プロデューサー面しながらステージ袖から見守っていた。(もちろんパーティメンバーには了承済み)
思えば彼の3Dモデル作技の基礎は、二次創作者として頑張っていた頃ににつけたものだった。かつて畫面の向こうに居て、決してれる事が出來なかった存在。近くて遠かったアイドルが、目の前で歌っている景に、彼の目頭は熱くなる。
イベント最終日。ライブを終えたアイドルは、いつもはそのまま粒子となって消えるはずだった。だがその日だけは、舞臺袖に引き上げてきて、煙條Pの方を見ていた。そして。
「プロデューサーさん。ハイターッチ!」
と両手をあげる。懐かしさとの余り、しばらくけなかった煙條P。だがゆっくりとかみしめるように彼とハイタッチする。すると、満足そうに微笑んで、アイドルは消えた。
その後、メッセージが屆く。
『サクラハピネスSFシリーズ』頭・・右腕・左腕・足
防力+30 敏捷+30 譲渡不可・破壊不可・売卻不可
裝備スキル:ライブフォーユー!!
《手條件》
期間限定コラボイベント:アイドルスターズにおいて、ステージ袖で全てのアイドルのライブを見守ったプレイヤーに贈られます。ローアングルからスカートを覗くプレイヤーは沢山いましたが、プロデューサーとして彼達を見守ってくれたのは、貴方だけでした。
「いや何故にアイドルの裝が……?」
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話を聞いていたヨハンはの余り涙を流していた。おそらく彼とアイドルの話に、自分とヒナドラを重ねていたのだろう。そして、何故かアイドルの裝を貰ってしまって困っているという部分にも、共した。ヨハン自も仕方なくカオスアポカリプスを裝備して戦っているが、本音を言えば主役のバチモンをモチーフにした裝備がしかったというのが本音だ。
「わかるわ~私も初めてユニーク裝備を著た時は、凄く恥ずかしかったもの」
「……? いえ、私は別にこの裝備を恥ずかしいと思ったことはありませんが」
「え?」
「え?」
目の前に座るアイドル裝を著たおじさんの本気のキョトン顔に揺するヨハン。
「この裝は私がアイドルスターズを楽しんでいた15年前の最強の裝。確かに今見れば古くさく、ちょっと芋っぽいデザインではあります。ですが、私は彼たちからこの裝をけ継いだのだと思っています。恥ずかしいという気持ちは一切ありません」
(……しはあって)
これは本當にヤベー奴かもしれない。そう思って、後ろに控えるドナルド、レンマに助けを求めようと振り返る。
「……っ!?」
振り返って、ヨハンは驚いた。
そこに座っているのは赤髪オールバック、ピエロメイクでムキムキ型のヤベーヤツ、ドナルド。
そして丸っこいゴリラスーツを著たヤベーヤツ、レンマが居た。
前を向き直ると、そこには綺麗な目をしたアイドル裝のおっさん。ヨハンはここでようやく気が付く。自分の周囲は全員ヤベーヤツだったと。今この場所は、全員がヤバい事で逆にバランスが取れているのだと。
「貴方の熱はわかったわ煙條P。ところで私たちは今、腕のいい生産職のプレイヤーを探しているの。私たちのギルドにるつもりはない?」
「えぇ……ですが……」
煙條Pは冷や汗をかきながらヨハンとドナルドを互に見やる。魔王とピエロ。正直恐ろしい見た目をしている。特にピエロは絶対にヤベーヤツだと、警戒しているのだ。自分の事はもちろん棚に上げて。
「何か凄く失禮な事を思われている気がするわ☆」
だが、同時にこんな思いが煙條Pの脳裏に過る。今までこの裝備のせいで誤解されパーティを追放されまくってきたが、この濃いメンバーの中でなら、自分は目立たなくなるのでは? と。そうすれば、今までのように狩りにでて、裝備の生産作業をすることが出來ると。
「いいでしょう。是非貴方達のギルドに參加させてください。これでも裝備の作技に関しては自信があります」
「ふふ、渉立ね」
ヨハンと煙條Pは握手をわす。
「これは、かなりクレイジーなメンバーが加しちゃったわね☆」
「……な、中はまともな人だから……多分」
ヨハンは生産職プレイヤー煙條Pをギルドメンバーに加えた。こうして、全員が全員「自分が一番まとも」だと思っているヤツらによる勧活は終わりを迎えた。
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