《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》かくて汝、騒の槍衾に囲まれん
言ってしまえばセカンディルはさほど大きな街とは言いがたく、門の先から見えるサードレマの景は活気にあふれた……「ファンタジーの大都市」としての條件を十全に満たした街であった。街を訪れた者達へ雨霰のように投げかけられる天商達のアピールは、うるささに眉を顰めるのと同時に彼らかられ出す活力が自の中へとってきたようにもじる。
ファステイアやセカンディルが平面に広がる街だとすれば、サードレマは町の中央に建つ城を頂點とした丘だ。故に、これから足を踏みれる俺を待つ景は、なくともゲームを買う以外で遠出をしない俺にとっては目新しく、そしてモチベーションを激しく燃え上がらせるに足る景であった。
「ふひゃあ、いつ見てもキレーな街ですわぁ」
「そうだな」
「む、なんだかサンラクサン反応が淡白ですわ」
そりゃあ確かにすごい景ではあるが、これでも俺はゲーマーだ。それなりの數のゲームをクリアしてきたということは、それだけ様々なステージを見てきたということでもある。
例えば星を真下に大気圏に作られた足場の上。
例えば「とりあえず立派な城」というオーダーを大雑把にクリアした結果、巨人でも住んでるのかと問いたくなるほど巨大な城。
例えばテクスチャが崩壊したせいでひび割れた大地や空からサイバーな下地が見えてしまっている渓谷。
そういったゲームだからこそ、フルダイブVRだからこそ立ち、歩き、見聞きしじてきた景のことを門の前で立ち止まってエムルに説く。
「運命神の導きをけた戦士ではないがそれなりにんなところを見てきたからな」
「すごいですわ! やっぱり開拓者サンはいろんなところを訪れているんですわ!」
人の姿をしても中は変わらずヴォーパルバニーのエムルであり、踴るように跳ねる姿に思わず俺も笑みを浮かべる。
「さて、どうしたものかな」
「……? 宿を探すんじゃないですわ?」
「いや、それはノルマであって今現在の狀況をどうするかって話」
セカンディルの時は時間帯と時期が上手い合に噛み合ったおかげで全的にチラと見かける程度にしかプレイヤーを見なかったのもあるが、これだけの大規模な街となればここに拠點を據えるプレイヤーもそれなりの數存在する。忙しそうに次のエリアに行くのではなくセカンディルへ戻るプレイヤーが結構いることは驚いたが、確かエリアボスは一度次の街でセーブポイント更新してから戻ると復活するんだったか。それなら素材集めで行ったり來たりを繰り返すプレイヤーがいてもおかしくはない。
それは分かっていた、そして付け加えるなら自分の見た目が悪い意味で目立つことも分かっていたが、これはし先が違うようにもじる。
なんだろう、先ほどからサードレマを出てセカンディルへ戻るプレイヤーから見られている。だがその反応は「ヤベー奴が現れた」というよりも「もしかしてあいつじゃね?」という確認を孕んだ視線、と言えばいいのだろうか。
妙だな、確かに々とスリリングな験はしてきたが他プレイヤーに知られるような派手なアクションはしていないはずだが……もしや、跳梁跋扈の森でファーストコンタクト「不審者」な出會いをしたあの三人に「クッソ不審者プレイヤーいたんだけどwww」みたいなじで曬されたとか!? いや、それはない、と、信じたい、が……
「まぁ、不審者だし」
森の中から熊じゃなくて覆面プロレスラーもどきがいきなり飛び出してきたらどうする?俺だったら寫真撮って笑する、つまり仕方ない。
「行こうエムル、さっさと宿を探そう」
「は、はいな」
と、すれ違ったプレイヤーの一人にいきなり肩を摑まれ、サードレマへの第一歩はまたしてもお預けとなる。いやいい加減街に足を踏みれさせてくれよ、なんで俺は門の前で延々と立ち止まっているんだ、門番の視線が痛いんだが。
「あ、あなた! その格好、あなたがサンラクよね!?」
「へ?」
「サンラクサンお知り合いですわ?」
いきなり俺に摑みかかるように詰め寄ってきた見知らぬプレイヤーに俺はそう問われた。エムルが知り合いなのかと聞いてくるが………「Animalia(アニマリア)」、この名前に心當たりはない。
クソゲーフレンドかもとは思ったが、なくともそうであるならこんな他人行儀に話しかけてくるとも思えないし、何よりなくともプレイしていることが確定しているあいつ(・・・)ならこんな正々堂々話しかけたりはしないだろう。
「ええと、どちら様で?」
ゲームと言えば、先に進むほどに裝備が強くなるのは鉄則だ、そして裝備の強さと見た目の派手さはおおよそ比例する。故にこのアニマリアの裝備がこんな序盤で手にるようなそれではない事は見ただけでわかる。
だがますます分からない、見た限りじゃ相當先でないと作れないオーラを放つ裝備のこのプレイヤーが何故こんな序盤の街に? というかそもそも何故俺の名を?
「挨拶とか……そういうのは、どうでも、いいの。私が聞きたいのは一つだけ……」
ぐわし! と砕かんばかりに俺の肩を摑み、アニマリアなるプレイヤーは目を見開き問いかける。俺はおもわず武を展開しようときかけた指をかろうじて意識で押さえ込み、エムルはぽふんっ! と小さな音を立てて現れた垂れ耳をあわあわと髪のの中に隠している。
「どうやって! ヴォーパルバニーを! テイムしたの!?」
「………!」
絶対にバレるなよエムル。
反的に応えようとしたエムルを制し、表の変化を悟られない覆面を裝備していたことに謝しながら俺は高速で思考を巡らす。
どこでれた? いや、多分エムルを……ヴォーパルバニーを連れていることが他のプレイヤーに見られた、が妥當な線か。しくじったな、話しかけられないことと誰にも見られないことは別問題だと失念していた。くそ、いっそのこと無視して街中に逃げるか? いや、それが最適解と判ずるのは早計だ。
どうする、ユニークシナリオを明かす事は論外だ。獨占するから報には価値がある、第一教えろと言われても「ヴォーパル魂があったから親分に呼ばれました」としか説明できない…………そうか、別に隠す必要がないのか。
なにせ、ユニークシナリオ「兎の國からの招待」がどういうフラグで立したのかなんて俺が聞きたい(・・・・・・)くらいなのだから(・・・・・・・・)。
「いやぁどうやって、と聞かれましても俺自よくわかって……」
「そうだよねぇ、こういうのは皆で共有するべきだよねぇ革命騎士サンラク君(・・・・・・・・・)?」
その名前は、このゲームにおいては全く意味のないものである。
その名前は、このゲームとは別のゲームの俺を指すものである。
その名前は、特定のゲームでの俺との関係を示すものである。
故にこそ聲のした方向、門を超えた先のサードレマから奴が狙うであろう奇襲攻撃……的確に逃げるための腳を狙った一撃をアニマリア氏が俺の肩を摑んでいる腕を払いのけ、半ば勘で跳躍して回避する事に功した。そしてそれが俯瞰的に見れば悪手であることを理解した上で門から離れるように距離をとる。
「出たな鉛筆戦士……!!」
「こらこら、ここじゃアーサー・ペンシルゴンだよサンラク君。というか人をモンスターみたいに言うんじゃないよ」
形こそ違えど、鼻から上を隠す覆面を被ってなお「あぁこいつ人だな」と理解させられる、驚くべきことにリアルの顔をそのまま使っているらしいその暗殺者……かつて世紀末略奪ゲーム(ユナイト・ラウンズ)で俺がモドルカッツォと暗殺した(・・・・)プレイヤー「鉛筆戦士」、今は「アーサー・ペンシルゴン」なるそいつは心底楽しげな笑顔を浮かべて俺に笑いかけた。
変更點
街の中を歩きながら會話→サードレマへる直前で立ち止まって會話
街中でアニマリアと遭遇→セカンディルへ向かおうとしていたアニマリアと遭遇
街中でペンシルゴンの強襲→街中で抜剣し門を飛び出してからペンシルゴンの強襲
いくつか描寫追加
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