《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》神代の殘滓、妄執の敗者
二目、パラサイトテンタクル。
本は熊じゃなくて手だったらしく、一本あたり五分かけて殘った手の妨害を避けながら元から切り落として七本切り落としたところで熊もかなくなりクリア。挑戦回數四回。
三目、ゴブリンベルセルク。
めっちゃ強いゴブリン、としか言いようがなかったがめっちゃ強くてもゴブリンだった為、犬やら手よりかは楽な部類だった。挑戦回數二回。
四目、ダイナボア。
クソイノシシ、突進中に鼻にぶつかると発するという能力自はさほどでもなかったがスタミナがおかしい。測ったら一度の突進で二十秒くらい走り続けていた。俺にロデオの心得がなければもっと時間がかかっていただろう……いやゲームの経験だからリアルじゃ五秒もロデオなんてできないだろうが。挑戦回數一回。
五目、トキシックイーグル。
おまえ、ほんと、まじ、ゆるさん。挑戦回數三十二回。
六目、アーマード・ラーヴァ。
いやほんと、攻撃の屆かない上空からひたすら毒攻撃かましてくるクソ鳥に比べたら攻撃した部位の裝甲が散弾よろしく弾ける程度屁でもないね! 冷靜に考えればこいつも大概アレだったがその前がその前だったのでアドレナリンで見てから避けて押し切った。挑戦回數一回。
晩飯は鱚の天ぷら。
七目、エクスキュートパンサー。
速い、強い、だがくはなかった。プレイヤーの視界の外に回り込んでから攻撃する、という特は分かってしまえば対応はあまりに容易く、休憩を挾んだことで神的余裕を取り戻した俺の敵ではなかった。挑戦回數一回。
八目、ツインヘッドタイガー。
可もなく不可もなく、普通に強かった……それだけ。挑戦回數二回。
九目、ベータユニットゴーレムS2型。
仮稱として右腕による攻撃をA、左腕による攻撃をBとした場合、AからAへ繋げる場合はほとんどの時間差なく攻撃を叩き込んでくる。しかしAからB、またはその逆の場合は部のコアが一瞬る。これによってある程度の攻撃予測が可能であり、元々のゴーレムの高とこちらの長の差を考えるにA、B雙方の攻撃にも規則が発生する。それによって攻撃の回避及びアクションの攻撃判定が消失した瞬間に腕部を利用した駆け上がり、及びコアへの薄が可能であると推測、実踐したところ不可視のエネルギー場による弾き飛ばしにより力の七割を削られたことで方針の変更を余儀なくされ方針変更の結果裝甲を直接剝がすことで弱點の出を(ここらへんでキレた)はぁーっ! 背中は車のボンネットみてぇなうっすい裝甲のくせに反重力フィールドとか上等なもん発してんじゃねーよ面倒なんだよオラァ! そのアクション、時間経過とプレイヤーの位置の両方がフラグの技じゃなかったらお前ほんと許さんかったぞ……挑戦回數七回。
「エムル……ラストは、なんだ……」
「ち、ちょっとお休みした方がいいですわ!? おめめが怖いですわ!?」
「いや……大丈夫だ……こうなってる時は、すこぶる上手くけるんだ……」
俺はこの狀態を「ロスタイム」と勝手に呼んでいる。神はオチかけてるがは最適化された狀態……意識は飛んでいるのには勝手に作業プレイを遂行していたりと、面に疲労の概念が存在しないゲームだと二徹くらいするとこうなる。
そろそろ朝だが、ここまで過に戦って來たせいで予想以上に疲れていたようだ。作業なり目的なりを達した瞬間にプツッと意識が落ちるものの、この狀態の時はエムルにも言った通り、が俺の反応に普段以上に素直に反応してくれる。
つまり、このユニーククエスト最後のモンスターが突然クイズなどを仕掛けてこない限りは俺はほぼベストパフォーマンスで相対することができる。
「十目は……お、カシラが今からふんづかまえてくるって……」
「なんでぇ、もう九目まで終わらせちまったのかい」
噂をすれば影がさす、フラグを建てれば兎が來る。人參をキセルよろしく齧り咥えながら現れたヴァッシュは驚いたような、しかしある意味予想通りだとでも言いたげな顔で俺とエムルを見る……そりゃ、九倒したフラグで現れたんだろうし予想通りだろうさ。
「えーと、兄貴……最後のモンスターってのは……」
「おう、ちょいと遠出してふん縛って來た」
ヴァッシュはニヤリと笑みを浮かべるとくいと鼻先で何かを、それはきっとヴァッシュが捕まえて來たと言うモンスターを示しているのだろう振りでこう告げた。
「俺等(おいら)が捕まえた奴ぁ……ま、言っちまえば今のおめぇさんにゃあ倒せねぇだろうな」
「えぇ……」
「だからぁよう、こいつに関してだけは達の條件を俺が決める」
ポキリと人參を噛み砕き、ヴァッシュは俺へと告げる。
「五分間、生き延びろ」
「る程、耐久系ね……上等だ」
そしてそれ(・・)は俺の前に現れる。
四腳スタンドを思わせる四本の足からびた異様に細いは、驚くことに人型のモンスターである。
ボロ布だってもうし上等だと思える程のもはや切れ端としか言いようのないローブの殘滓と、干からびた皮と骨によって握られた杖、そして何よりズタボロの三角帽子がそれが魔師だったと言うことをかろうじて俺に教えてくれた。
「なんだ、こりゃ……」
「妄執の樹魔(ルーザーズ・ウッズ)、昔々のずぅっと昔……木と合してでも生き延びようとしたバカヤロウ共の一人よう」
言われてみれば、干からびているにしても妙に生がないは、枯れた木の皮であり、ミイラなのか骨なのかは知らないが長い時が経過したにしては隨分と生え揃っていると思っていた髪は枝だ。
「派手に啖呵切ったんだぁ、イキるだけの拠ぉよう……見せてくれや」
妄執の樹魔(ルーザーズ・ウッズ)、Lv.120。
シャングリラ・フロンティア全プレイヤーの中でもこの大陸に(・・・・・)存在しない(・・・・・)モンスターであるこいつと戦ったプレイヤーは俺が初であることを知るのはもっとずっと先のこと。
妄執の樹魔はトリエントを魔特化させたようなモンスターです。
シャングリラ・フロンティアのモンスターは大きく二種類に分けられ、こいつはヴォーパルバニーやリュカオーンと同じカテゴリのモンスターです。その二種類が何かは今は明かしません。
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