《【書籍化】外れスキル『目覚まし』、実は封印解除の能力でした。落ちこぼれの年は、眠りからさめた神達と優しい最強を目指す。【コミカライズ企畫進行中】》1-23:狼との対決
「狼?」
震える聲。僕はその変を見つめることしかできなかった。
ボスエリア全から闇が沸き上がり、人狼に向かって収する。
ごぼごぼ、と水中でむせかえるような音がしたかと思えば、闇の中から人狼の顔が現れて、肩が現れて、やがて全が這い出てくる。
目は濁り、頬のがしただれたようになっていた。剝き出しになった牙が笑っている。
ミアさんが聲を張った。
「リオン!」
はっとした。
飛び下がったところに、狼の爪が突き刺さる。
「何度か潛ったが、こんな魔は見たことがないぞ!」
ミアさんの言う通り、ギルドからの警告にもなかった。多分、今回、初めて現れたんだろう。
東ダンジョンにこんな魔が出たなんて聞いたことない。
『リオン、わたしを呼べ』
ソラーナが言った。
『強い。とても強いぞ』
恐怖が心臓を摑んでいた。
逃げるように<目覚まし>を使う。けれども、頭がぐらりと揺れた。
「え――」
封印解除のがポケットから一瞬だけあふれ、消失する。
じたのは、抵抗。
『封印だ。この階層、わたしたちを封印する力が、今までの階層とは比べものにならないほど強い』
はっとした。
ダンジョンは神様が魔やを封印した場所。そして下の階層に至るほど、魔やアイテムの強さはあがる。下の階層にいくほど強力なものが眠っているとすれば、封印が強いのも當然だ。
『世界には、封印の魔法が満ちている。そしてそれには濃い場所と、薄い場所がある。想像はしていたが――これほどとはね』
頭に思い浮かんだのは、山の話。
高い高い山に登るとき、頂上付近は息苦しいという。
封印についても同じかもしれない。
それが強い場所にいけばいくほど、神様は苦しくなる。だからチャンスは短くなっていくんだ。
「も、もう一度やってみます」
今度は、さらに集中しないと……!
『思い出すんだ! この封印では、やはり外に顕現していられる時間は短い。リオン、わたしが攻撃を放てるチャンスは一度きりだ』
呼び出した後、魔を倒せずでは意味がない。
「み、ミアさん!」
必死に作戦を立てた。
「に、2段構えでやりますっ」
「うん?」
「僕とミアさんで、狼を弱らせます。その後、僕がえーっと――ひ、必殺技を使うので、それで敵を倒しきります!」
「必殺技ぁ?」
狼も再生力が高いと思う。アンデッド系モンスターはみんなそうなのだ。
だから、弱らせた後は、一直線。一気にダメージを叩き込んで、再生する間を與えない。
知識だけを元にした案だけど、ミアさんはけてくれた。
「まさか、東ダンジョンでこんな面白い敵と會えるとはね……」
なびく赤髪。ミアさんは斧を構えてにやりとする。右腕に巻き付けられた鎖が、じゃらりとした。
「楽しめそうだ!」
ミアさんが手斧を振ると、狼が両手でけ止める。深く食い込んだ刃が緑のをまき散らした。
地面からあがる煙。
「毒っ?」
「だろうよ。こいつの返りを浴びると、面倒だなっ」
息を整えた。
毒はやっかいな狀態異常だ。もちろん解毒薬は持っているけれど、戦いを止めて『飲む』必要がある。
冒険者の第一歩は、息を切らした戦闘中でも薬を飲めるようになること。そんな隙はない方がいい。
「スキル、使います」
――――
<スキル:太の加護>を使用します。
『黃金の炎』……時間限定で能力を向上。
――――
踏み込む。加速。
狼に向かって短剣を振るうと、腕が切れ飛んでいく。狼はすぐに飛び下がり、驚いたように僕を見た。
笑ってる……?
『再生か』
失われた腕が、みるまにと骨で編まれていった。毒まみれの両爪を振るい、毒をつぶてのようにまき散らしてくる。
「あぶねぇ!」
僕は素早くよけたけれど、ミアさんが被弾した。
鎖を巻いた右腕から煙が上がっている。革鎧が溶けて、きっとまで――!
「大丈夫ですかっ」
「平気。あんたも目や口をこするなよ」
ミアさんは斧を持ち直す。頭を振って、額の汗を払っていた。
「ああいうタイプは長引けば長引くほど不利だ」
「ですね。短期決戦をしたいですけど」
さっきから心臓が早鐘だ。焦っていないか、判斷を間違えていないか。冷靜な自分に戻りたいけど、狼の恐怖がそうさせてくれない。
「落ち著きな。妹が待ってるんだろ」
そうだ。ルゥと母さんが過ぎり、恐怖がし和らぐ。
もう家族を欠けさせちゃいけない。
「ミアさん、まずきを止める必要があります」
「……いいよ」
ミアさんはにっと笑った。
「あたしにも考えがある。し危険だが、注意をひいてくれるか?」
僕とミアさんは視線をかわし、ほとんど同時に頷いた。
狼が頭をこっちにむける。混濁した目と剝き出しになった牙が、狙えるものなら狙ってみろ、とでも言っているかのよう。
「ただ一つ、約束してしい」
「なんです?」
「あんたが抱えている、終わったら、できる範囲で話してしいかな」
勘だけど、とミアさんは言った。
「……そのスキル、ただの魔法や、鑑定じゃないんだろう?」
ミアさんは信用できる。いや、信じたいって思う。
今までよりも、ずっと強く……!
「分かりました」
「よし。スキル<斧士>の能力、みせてあげるよ」
狼が飛びかかってきて、僕らは散った。アンデッドのスタミナは無盡蔵だ。はち切れそうな筋で、次々と攻撃が降る。
けきれない。毒もある。
だから避けた。
スキルで強化された能力で、僕は一手に『壁』を引きける。
當たらない。でも、後ろにも行かせない。
そういう、風の壁だ。
「いいぜリオン!」
ミアさんの合図で、一気に離れる。
途端、僕とれ違うように何かが狼に投げつけられた。
「斧……?」
狼は斧を避けるけれど、斧には鎖がついていた。
鎖斧。
鉄鎖は腐った腕に巻き付いて、狼のきを止めさせる。遠吠え。引きちぎろうとする狼のきに対するのは、ミアさんのスキルだ。
「ふんっ!」
『不』――要するに、その場で踏ん張るというスキル<斧士>の能力なのだけど、これってすごく重寶される。
崩されないって、実戦ではすごい強みなんだ。
狼のきが止まった。まるで、巖にでも結び付けられたかのように。
僕は地を蹴った。
能力『黃金の炎』は、殘り1分。
青水晶の短剣を構えて、矢になった。
「はぁ!」
刀が狼のに食い込んだ。勢い、そして力でねじる。
緑の毒が腕に飛び、ひりつく痛みは火傷並みだ。
両腕のダメージと引き換えに僕は狼への致命傷を確信したけれど、魔の肩を蹴って離した時、すでにちぎれかけた頭とが再生を始めていた。
「こ、こっから甦るの……!?」
スキルの殘り時間はない。
『リオン、忘れるな』
僕は後を、神様に託した。ポーチからマナ草を煎じた魔力のポーションを取り出して、素早く飲む。
<目覚まし>への抵抗が強かったから、念のためだ。
父さんが冒険者を目指す僕に最初に教えてくれたのは、激戦でのポーションの飲み方だったな。
量を口に含み、慣らしてから、小瓶1本分の必要量を一気に飲み干す。
――――
<スキル:目覚まし>を使用しました。
『封印解除』を実行します。
――――
「見事だ、リオン」
宙に飛び出したソラーナは、僕にほほえみかける。
そして狼の崩れかけた頭と、再生を始めるを見下ろした。
「……かわいそうに。闇の力で、アンデッドとして、歪められている。魔とはいえ、封印が解除された今、君もまた一個の生命だっただろうに」
頭を振って、ソラーナは言った。腕と金髪がきらめく。
「はじめまして。わたしが太だ」
狼から黒い影が噴き出て、ソラーナのとせめぎあったように見えた。けれどもそれは、ほんの一瞬だけ。
ソラーナからが降り注ぐ。狼は元の人狼となり、その後、灰になった。
きらきらとする結晶が空中に漂っている。
「……今はこれが限度か」
ソラーナはし疲弊したみたいに、地面近くに降りてきた。
魔はもう、跡形もない。
「だ、大丈夫?」
「うむ。見事だったよ――しコインで休む」
ソラーナはぱっとになってはじけ、金貨に戻った。
ミアさんが近づいてくる。
「……最後の、すごいな。で、一瞬で浄化しちまった。あんた神の家系か?」
「え……」
ソラーナの姿はミアさんには見えていないようだ。
やっぱり、ルゥの目が特別だってことなんだろうか。
僕はミアさんに向き直る。
「これが、僕の能力です」
「へぇ……魔の浄化が?」
「いえ。僕のスキル<目覚まし>は、さっきのみたいな特別な存在を、『封印解除』できる能力なんです」
勇気をもっていった。
「封印……」
「狼を倒したのは、魔と同じように封印されていた、古代の神様です」
ミアさんは目をぱちぱちして、驚いているようだ。
まぁ、そうですよね……。
オーディス様へのすっごく敬虔な信徒というわけでもないだろうから、『封印』なんていう言葉を出しても、大丈夫だとは思うけど……。
「……やっぱり、信じられないですよね」
「いや、ちょっと予想外だっただけだ。あたしは<大司祭>とか<大賢者>とか、魔法関連の上位スキルだと思ってただけだ。目覚ましってのは、目立たないようにする方便でね」
ミアさんは頭をかいた。にっと笑う。
「ま、なるほど? その神様ってのはあたしにも見えるのかい?」
『見えるようにもできるよ』
「あ!? 誰の聲だ!?」
「あ、後で紹介しますから……」
疲れのせいか喋られると耳の奧ががんがんした。
けれども、倦怠と同じくらいの熱さをじる。なんだろう、この覚ってひょっとして――。
――――
レベルが11になりました。
――――
ぶるっと震えた。
「レベル、11……!?」
初心者出と呼ばれるのは、レベル10。
そこを飛び越えて、一気にレベルが2つもあがったんだ。
僕は、父さんが死んでから2年かけて、やっと冒険者の初級の初級をしたんだ。
今まで苦労とか、借金とか、目覚ましのこととか、いろいろなことが一気にやってきて放心する。
『リオン、この階層を調べるんだろう?』
「そ、そうだった」
僕らは回復を済ませた後、冒険者としてボスの魔石とアイテムを回収する。本來は牙や爪を落とすはずなのだけど、ゾンビになっていたからか何も落とさなかった。
ただし――
「すごい純度の魔石だ」
聲がれてしまう。
人狼の魔石は拳大だけど、が吸い込まれそうなほど深い。夜明け前の空のように、ダークブルーの、黎明のをしていた。
手に持つ。ひやりと冷たい。
特大の、とんでもない魔力がこもっていそう。
「帰るかい?」
「いえ、もうし探索します」
ルゥが夢に見たという狼が狼だとすれば、これで調がよくなるかもしれない。けれども、どうして東ダンジョンの異変がルゥに影響を與えたのかは、調べたかった。
ダンジョンのボスエリアは、基本的にはどん詰まりだ。
降りる階段は東ダンジョンの場合は6つあって、全て違う空間に続いている。一度に6パーティーまでボスと戦えるということだ。
だから最悪、何も見つからなければ別の階段から違うボスエリアに降りないといけないのだけど――。
「あれ」
僕は、壁からかすかに風をじた。
霊石によく似た、魔力を帯びた風。
「この先に、何かある――?」
壁際には、よく見ると2本の柱が立っていた。まるで何かの口であったかのように。
迷宮の最下層に眠っているもの。
思い浮かぶ言葉は一つだった。
『封印解除』。
【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】
2022/6/7 書籍化決定しました! 「フィーグ・ロー。フィーグ、お前の正式採用は無しだ。クビだよ」 この物語の主人公、フィーグはスキルを整備する「スキルメンテ」が外れスキルだと斷じた勇者によって、勇者パーティをクビになった。 「メンテ」とは、スキルを整備・改造する能力だ。酷使して暴走したスキルを修復したり、複數のスキルを掛け合わせ改造することができる。 勇者パーティが快進撃を続けていたのは、フィーグのおかげでもあった。 追放後、フィーグは故郷に戻る。そこでは、様々な者にメンテの能力を認められており、彼は引く手數多であった。 「メンテ」による改造は、やがて【魔改造】と呼ばれる強大な能力に次第に発展していく。 以前、冒険者パーティでひどい目に遭った女剣士リリアや聖女の能力を疑われ婚約破棄されたエリシスなど、自信を失った仲間のスキルを魔改造し、力と自信を取り戻させるフィーグ。 次第にフィーグのパーティは世界最強へ進化していき、栄光の道を歩むことになる。 一方、勇者に加擔していた王都のギルマスは、企みが発覚し、沒落していくのだった。また、勇者アクファも當然のごとくその地位を失っていく——。 ※カクヨム様その他でも掲載していますが、なろう様版が改稿最新版になります。
8 68サモナーさんが行く
リハビリがてらで。 説明を碌に読まずにゲーム始める人っていますか? 私はそんな傾向が強いです。 βテストを終え本スタートを開始したVRMMOに參加した主人公。 ただ流されるままにゲーム世界をへろへろと楽しむことに。 そんなゲーマーのプレイレポートです。
8 175クラス転移~最強の勇者って言われたんだけどそんな事よりせっかくきたんだからこの世界を楽しもう!~
十六夜響は高2の中間テスト終わり帰りのホームルーム前だったその時急に光に包み込まれ目を開けると白い空間にいた そこで神様に気に入られ異世界に行っても最強だったので自重せずに仲間達と一緒に自由に異世界過ごします 主人公ご都合主義のハーレムものです 気に入ってくれたのなら嬉しいです
8 162英雄様の非日常《エクストラオーディナリー》 舊)異世界から帰ってきた英雄
異世界で邪神を倒した 英雄 陣野 蒼月(じんの あつき) シスコンな彼は、妹の為に異世界で得たほとんどのものを捨てて帰った。 しかし・・・。 これはシスコンな兄とブラコンな妹とその他大勢でおくる、作者がノリと勢いで書いていく物語である! 処女作です。 ど素人なので文章力に関しては、大目にみてください。 誤字脫字があるかもしれません。 不定期更新(一週間以內)←願望 基本的に三人稱と考えて下さい。(初期は一人稱です) それでもよければゆっくりしていってください。
8 184シスコン&ブラコンの天才兄妹は異世界でもその天賦の才を振るいます
───とある兄妹は世界に絶望していた。 天才であるが故に誰にも理解されえない。 他者より秀でるだけで乖離される、そんな世界は一類の希望すらも皆無に等しい夢幻泡影であった。 天才の思考は凡人には理解されえない。 故に天才の思想は同列の天才にしか紐解くことは不可能である。 新人類に最も近き存在の思想は現在の人間にはその深淵の欠片すらも把握出來ない、共鳴に至るには程遠いものであった。 異なる次元が重なり合う事は決して葉わない夢物語である。 比類なき存在だと心が、本能が、魂が理解してしまうのだ。 天才と稱される人間は人々の象徴、羨望に包まれ──次第にその感情は畏怖へと変貌する。 才無き存在は自身の力不足を天才を化け物──理外の存在だと自己暗示させる事で保身へと逃げ、精神の安定化を図る。 人の理の範疇を凌駕し、人間でありながら人の領域を超越し才能に、生物としての本能が萎縮するのだ。 才能という名の個性を、有象無象らは數の暴力で正當化しようとするのだ。 何と愚かで身勝手なのだろうか。 故に我らは世界に求めよう。 ───Welt kniet vor mir nieder…
8 80うちの姉ちゃんはこわい
たいせつな、三輪の花。 うちには三人の姉ちゃんがいる。 みんなかわいくて、みんなこわいんだ。
8 157