《【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」》16.落ちぶれたギルドマスター【イランクス③】

ギルドマスターとして、アクトが活躍する一方その頃。

同じくギルドをまとめる長、イランクスは、追い詰められていた。

「C級最下位……まずいまずいまずい! もう後がない! くそくそくそぉ!」

ギルマスの部屋にて、がりがりがり! と頭皮をかきむしる。

はらはらと抜け落ちるの量が日に日に多くなってきていた。

「くそっ! 何がまだ早いだクソアマ! やれるべきことがあるだくそ! もう八方塞がりじゃないか……!」

火竜討伐失敗で名聲は地に落ち、さらにオルガ退によってギルドの評判はがた落ち。

かつて【生え抜きの英雄】といえば大人気のギルドであったが、徐々に門戸を叩くものは減っていった。

そして、もはや新しくってくる人間は、完全にゼロ。

「こうなったら……そうだ。出て行ってしまったものたちを連れ戻そう! そうしよう!」

イランクスは部屋から出て行こうとする。

「あのー……ギルマス?」

付嬢が、不安げな表で部屋にってきた。

しお時間よろしいでしょうか。実は……」

「後にしろ! わしは忙しいのだ!」

ドンッ、と付嬢を突き飛ばす。

「きゃっ……!」

は転けて、腰を強く打つ。

「ふんっ! 鈍くさい雌豚め。わしは貴様なんぞの話しを聞く暇はないのだ!」

イランクスは彼に手を差しべることなく、その場を後にする。

「まずはオルガのところだ。やつはまだ出て行って日が淺い。待遇を変えてやれば必ず帰ってくるはず……!」

だが……。

「お斷りだ」

オルガとパーティメンバー達が拠點としている、宿屋の食堂にて。

リーダーであるオルガは、ハッキリと斷ったのだ。

「な、なぜだ!? 待遇は変える。もう前みたいに無茶な依頼は割り振らない! だからわしのギルドにもどってこい。な? な? なぁ……!」

オルガはフゥ……とため息をつく。

「今更戻ってこいとお願いされてももう遅んだよ。おれたちはアクトの、【天與の原石】のメンバーだからよ」

オルガは腕を組み、厳しい表で首を振る。

「お、遅いってことも無いだろ? なぁ、もう一度やり直そう。もう前みたいに火竜討伐してこいなんて言わないからさぁ」

馴れ馴れしく手を握ろうとするイランクス。

だがオルガはその手を払いのけていう。

「わりぃけど、もう戻る気はねえからよ」

「ど、どうしてだ!?」

「……てめえが、部下のことなーんにも考えてない、クソ上司だからだよ」

吐き捨てるように、オルガが言う。

「そもそもよ、火竜討伐失敗のせいで、おれたちは大けがを負った。だというのに、てめえときたら大丈夫だった? の一言もねえ」

「あ、いや……それは……」

「ギルメンのことなんざどーでもいいんだろ? 下がったギルドランクをどーにか戻そうと、Sランク冒険者を連れ戻そうとしてるんだろ?」

オルガの言うとおりだった。

メンバーがどうなろうと関係ない。

ギルドランク、つまりは名聲。

それが何よりも大事だった。

「アクトはおれのを心配してくれた。まずは治療に専念しろってよ。最高の治療院にいれてくれたし、院費用も出してくれた。おかげでこの通り、まだ冒険者できてる」

オルガは心からアクトに謝しているのか、ったようにうなずきながら言う。

「おれはアクトのギルドを離れるつもりは頭ねえ。悪ぃな、てめえとアクトじゃ天と地ほど、ギルマスとしてのレベルが離れてるよ」

席を立って、離れようとするオルガ。

「ま、待ってくれ! もう一度ちゃんと話そうじゃないか!」

すがりつこうとするイランクスの手を、オルガは強めに払って言う。

「さっさと帰れ。おれに縋りつく前に、あんたはやるべきことがあるんじゃないか?」

「それはやった! アクトに戻ってきてくれと何度も何度も頼んださ! だがどうにもならないのだぁ!」

するとオルガは、可哀想なものを見るような目で見やる。

「あんた、なーんにも見えちゃいないな。……もう二度とおれの前に來るんじゃねえぞ」

それだけ言うと、オルガは食堂を出て行った。

「くそがぁ! 何が見えちゃいないだ! ばかにしよって! ばかにしよって! くそぉ!」

その後、オルガ以外のやめていった冒険者の元を訪ね、復縁要請をした。

だが誰一人として、戻ってこなかった。

「なぜだ? わしの何がいけないのだ……!」

自分が追放したギルメンにすら、下げたくない頭を下げた。

だが、全員がオルガと同じ回答だった。

「わしは間違っていないのに……なぜ……?」

生え抜きの英雄のギルド會館へと戻ってくる。

だが……明らかに、人が今朝よりもなくなっていた。

「お、おい……どうした? どうなっているんだ? 副ギルドマスターはどこだ!?」

今朝突き飛ばした付嬢に、イランクスが尋ねる。

「今朝辭表を提出し、さっさとやめていきましたよ」

「んなっ!? 辭めた!? わ、わしへ何の斷りもなく!?」

「というか、副ギルドマスターだけでなく、多くの冒険者達もここを去って行きました」

この付嬢は副ギルマスやギルメンが大量に辭めたことを報告しようとしていたのだ。

だがイランクスは今朝、それを聞こうともしなかったのだ。

「そんな……そんなバカな!? なぜだ!? オルガと言いどうしてわしのもとから人が離れていくのだぁ……!」

はぁ、と呆れかえったように付嬢はため息をつく。

「わたしももう辭めます。さよなら」

「ま、待てぇ……!」

がしっ、と付嬢の手を摑む。

「なぁおい! なぜみんなやめる!?」

「あなたがご自分の部下(ギルメン)を全く大切にしないからでは?」

冷え切った目で、付嬢はイランクスを見下ろす。

「あなたは殘っていたギルメン達に目を向けるべきだった。出て行った人たちじゃなくてですね」

「し、しかしアクトが抜け、オルガも辭めた今、うちのギルドにロクなヤツらが殘っていないではないか!」

「……殘った彼らに真摯に耳を傾け、ともにギルドを盛り上げていく努力を、あなた一度でもしましたか?」

答えは、していない。

組織の部や、自らの意識を変えることを、彼は一度もしてこなかった。

しようとも、しなかった。

「これじゃ人もついて行きません。このギルドももう終わりですね。それじゃ」

付嬢は辭表も出さずに、スタスタと去って行く。

「なぜ、こうなる……わしは、何も悪くない。わしは間違ってないのに……どうして……?」

は振り返り、せせら笑う。

「ここまで來ても、自分の過ちに気づかないなんて。もう、手遅れですね、々と」

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