「ボスって何の魔なんだろうなー。俺の予想ではオーク種なんだが、最悪なパターンはオークキングかぁ。Ａランクで、オークの中でも飛び抜けて強いらしいし……まぁ、行ってみないと分からん、突撃だな」

扉にれようとすると勝手に開いた。

部屋は今までで一番広く天井も異様に高い。一歩踏み出し中にると、ゆっくりと部屋に明かりが燈っていく。

部屋の真ん中にはＣランクの魔【オークバーサーカー】が3並んでいる。その後方に立っている巨は……。

「オーガ……オーク種じゃねぇのかよ！！！　ってよく見たらレッドオーガ！？　変異個……マジか」

【レッドオーガ】は巨鬼オーガの変異個でありランクはＢランク上位。俺の長の2倍はあるだろう巨とそれに似合うサイズの巨大な斧を右手に持っている。

オークバーサーカーも両手に斧を持っており、いくらHPが1000を超えていても、その攻撃を食らえば戦況は著しく悪い方に傾く。

「さて、まずはバーサーカーから仕留めてタイマンに持ち込むしかないな。レッドオーガは……あー、戦いながら考える！」

剛腕と俊敏のスキルをかけ直し、一番左端にいたオークバーサーカーを標的に駆け出す。

側面に回り込み毆ろうとしたが、一瞬嫌な予が頭を過ぎり反的に高くジャンプした。

すると、今まで俺が居たところに巨大な斧の薙ぎ払いが走った。

「マジかよ！　バーサーカーごと切り飛ばす気だったのか……『ゴォォアァ！』オグッ！！」

3のオークバーサーカーの上半と下半が切り離されたのを見て、飛び退きながらも唖然としていると、レッドオーガの拳が俺めがけて飛んできた。

咄嗟に両手で防はできたものの、吹き飛ばされてしまう。

「っくぅ！　両手がジンジンする、防が間に合ったのは奇跡だなぁ。HPは殘り545か。直撃１発でやられちまうなコレ…………」

死を近にじるとなからず恐怖が芽生えそうになる。しかし、その恐怖心を抑え込むと逆に頭は冴えてきた。

「ふぅー、こんな時は爺ちゃんの言葉を思い出せ……『覚悟を決めろ！　気持ちで負けるな！　當たらなければダメージゼロ！　バイブスぶち上げろ！！』　行っくぜぇぇぇぇぇぇ！！」

最高速度で走り出し、落ちているオークバーサーカーの斧を2本回収する。そのままの勢いでレッドオーガの左膝を狙い右手に持っていた斧を振り切る。

狙いはし外れてしまったが、ふくらはぎに斧が突き刺さった。

「斧はまだまだあるぜ？　お前が半分に切り飛ばした、豚のがよぉ！！」

左手に持っている斧で、今度は左膝の裏を狙って筋を切り裂く。オーガは痛みに耐えながら左手で振り払おうとするが、しゃがんで避けるとすぐに左足の甲を狙い、斧を叩きつける。

ぐらりと倒れかけたレッドオーガだが、片膝をつきなんとか持ちこたえている。

「まだまだ俺の攻撃は終わらねぇぞ！」

大きくジャンプし上から後頭部に拳を叩きこむ。やはりレッドオーガは接近してしまえば小回りが利かない。圧倒的な耐久力があったとしてもスキルで1.5倍に上がっている俺の攻撃は、しっかりとダメージを與えているようだ。

レッドオーガがゆっくりと前のめりに倒れるのを見た俺は、再び落ちている斧を両手で拾い、回り込んで右目に向かって斧を振り切る。

『ガァァッァアアァァァァ！！！！！』

「俺をその辺の豚野郎と一緒にしてんじゃねぇよ。早く本気出さねぇと、塊にして食っちまうぞ！　オラァ！」

レッドオーガの右手親指を切り飛ばす、腕の筋を削ぎ落とす、背中に斧を突き刺す、立ち上がろうとしているところに今度は右足の脛を叩き折る……

怒濤の連打の最後に頭蓋骨を斧で叩き割ると、レッドオーガは絶命した。

「はぁ、はぁ、はぁ。ふぅー…………調子に乗ってやり過ぎたか……反省も後悔もしていないが、テンション上がりすぎると口が悪くなるのは、……んー、やっぱり直せんな！」

し休憩をしながら戦闘の事を思い返す。一方的に攻撃し続けられたが、武が無かったら正直ヤバかった。攻撃力は十分かと思っていたが、Ｂランクを超えてくる魔相手に素手は無謀だ。

オークバーサーカーの斧は上がったテンションのままオーガを叩きまくったせいで、全てが使いにならないレベルで壊れている。

最後にステータスを確認すると、レベルは23となっておりスキルが追加されていた。

【スキル】品評眼：武、防、裝飾品の価値や名前、効果が分かる

「これは武屋の親父が言ってた便利スキル……ん！？　あれは、寶箱！！！　しかも……赤！？」

赤の寶箱が床からゆっくりと出現した。それと同時に今度はボスがダンジョンに吸収されてしまう。ボスはダンジョンに吸収されるのか。

食いたかった……

「よし、開けるか。あードキドキする。この寶箱開ける瞬間……たまらんわぁー。それじゃあ開帳！！」

寶箱を開けるとそこには刺々しい金屬の塊が一本っていた。鑑定すると……

≪赤鬼の金棒：攻撃力15。武・防破壊効果≫

「いろいろ最高すぎて、が追い付かない……ひとまず報を整理しよう」

まず【品評眼】のスキルだ。

俺は街にるのに大きな危険を伴う。容姿がどうなっているか自分では分からないためまだ何とも言えないが、なんといっても“魔”である。そのため、アイテムの報が分かるのは今後の必須スキルと言っても過言ではない。

次に【赤鬼の金棒】だ。武・防破壊効果というのは、相手の武や防を毆った際に破壊しやすくなるという事なのだろう。攻撃力15がどの程度なのかは全く分からないが、鑑定によるとこの武のレアリティーは『赤』である。

“レアリティー”というのは、そのアイテムの希を現しており、希が高いほど強力な武・防であることが多い。

レアリティーのは、希価値の高い順に『金　>　紫　>　赤　>　青　>　緑　>　白』となる。一般的に武屋で売られているものが白や緑であり、ほとんどの冒険者は白や緑の武を使用している。上級冒険者は青の武を持っている者もいるが、赤となるとAランク以上の冒険者でも持っているのはほんの一握りである。

ちなみに『魔剣フラム』のレアリティーも赤である。“人を殺してでも奪いたい、手にれたい武”というのはをもって実証済みだ。紫や金の武・防ともなると伝説級や神話級とも言われており、1つの國に１本あるかないかという希だろう。

「他に鑑定できるものは、マジックバッグか。……え？　赤……？」

レクリアの雑貨屋で、特売品の箱の中から適當に選んだものがまさかのレアリティーであった事に驚愕するも、オークを10以上れてもまだる容量のマジックバッグは、非常に希なだったらしい。

他の冒険者はこのマジックバッグも白か緑ランクのを使っているはずだ。

「どうせ白だろうと思って買ってから、一回も鑑定してなかったけど、これ売ったら大金持ちだったんじゃ……まぁ知ってても売らなかったか」

報の整理も終わり「出口につながっている魔法陣があるはず」と周囲を見渡す。そして部屋の一番奧に青白くる魔法陣を発見し安堵した。

「オーク回収してから出よ！　オークはどんだけあっても困るもんじゃないしな！」

レッドオーガに斬り飛ばされ、散らばっているオークを回収して歩いていると壁際に丸くて小さな突起を見つけた。

「なんだコレ？　妙に押し込みたくなる形狀だ……でも罠が発とか……うーん押したい、押しちゃおうかなー、あー押す！」

――ググッ、ガコンッ、ゴゴゴ……

押し込むと、隣の壁の形狀が変化していき、さらに上の階につながる階段が現れた。

「え？　ボス部屋って最上階じゃ……」

不思議に思いながらも好奇心には勝てず、自然と階段を上り出していた。