ボス部屋の扉が開き中へると、フォレノワールのボス部屋と同じくらいの広さ、高さがある部屋が広がっていた。そして待ち構える２つの巨……

牛の頭に茶い巨、両手で巨大なハンマーを持っているＢランク上位の牛頭鬼（ごずき）と、

馬の頭に筋質の青黒い、そのの丈に合う巨大な鉄塊のように大きな片刃剣を持ったＢランク上位の馬頭鬼（めずき）。

「Ｂランク上位が2ってのは厄介だな。一匹ずつやるしかないか……」

一歩踏み出すと牛頭鬼と馬頭鬼はゆっくりと武を構えき出した。

「キヌ、サポートに回ってくれ。1ずつ倒す」

『クォーン！』

どちらから優先して倒すべきかを頭の中で考えながら、マジックバッグから赤鬼の金棒を取り出す。

「まずは馬頭の方から仕留める。牛頭を魔法で牽制してくれ」

キヌにそう伝えると、牛頭鬼に向かってエネルギーボールが即座に放たれる。俺も【電玉】で牛頭鬼のきを鈍らせつつ、馬頭鬼に向かって走った。

一撃目は様子見のつもりで左わき腹を狙うが避けられてしまう。敵のきが思ったよりも速い。俺はバックステップでし距離を離すと、馬頭鬼はすぐさま切りかかってきた。

避けることはできるスピードだが、武の破壊を狙い、巨大片刃剣に赤鬼の金棒を叩きつける。吹き飛ばすつもりで毆ったが、両者の力は拮抗している。

違和を覚えた。この馬頭鬼1だけで見ても、同ランクのはずのレッドオーガよりも遙かに格上だ。

「まさか、こいつら……ネームドか！？」

――ドゴォォン！

その直後、後方から轟音（ごうおん）が聞こえた。

すぐさま赤鬼の金棒をマジックバッグに収納し、バランスを崩した馬頭鬼の腹を蹴り飛ばして振り返ると、キヌが壁際で倒れ込んでいた……

俺は急いで駆け寄りステータスを確認する。HPは殘り210、狀態は『気絶』となっている。急いでマジックバッグからポーションを取り出し、キヌに振りかけるが、気絶は治っていない。

最悪の狀況が頭によぎり、一瞬の気が引いたが、ステータスを見る限り大丈夫そうだ。

立ち上がって振り返り、2の敵に向かって歩いていく。

…………怒りがこみ上げてくる。

キヌをこんな狀態にした敵に対してもそうだが、何より『敵の強さを見誤り』さらに『様子見』なんて事をした自分自に対して、猛烈に腹が立った。

「【裝電】、【迅雷】」

そう呟くと俺の周囲に黒い電気が迸（ほとばし）り、

俺の中で何かがキレた気がした……

「楽に死ねると思うなよ……家畜共がぁぁぁぁ！！」

牛頭鬼に向かい全速で駆け、俺の姿を完全に見失っている牛頭鬼の頬に右の拳を捻じ込む。

その巨が吹っ飛んでいくが、それよりも速く回り込み、飛んできた牛頭鬼の背中を蹴り上げ、さらに電玉3発を浮いた目掛けて投げた。そして高く飛び上がり牛頭鬼のさらに上へと移、空中でマジックバッグから赤鬼の金棒を取り出しそのまま腹部に叩きこむ。

地面が大きく抉れるほどの力で叩き付けられた牛頭鬼は、口からを吐き絶命した。

牛頭鬼を叩き落とした直後、俺は【空踏】を発し、空中から一瞬で馬頭鬼の真橫に移していた。

著地と同時に赤鬼の金棒を両手で持ち、フルスイングを部に當てる。

馬頭鬼は吹っ飛び、壁に叩きつけられ、グッタリしていくが、俺は構わず最速で薄し、その勢いのまま鼻頭に飛び膝蹴りをぶち込んだ。

壁と膝で挾まれた頭部が砕け、鼻が潰れ、目や耳からが噴き出して馬頭鬼は倒れ込み……そのまま二度とき出すことはなかった。

2のボスを倒し終え、スキルを解除し振り向くと、キヌが立ち上がりゆっくりとこちらへと歩いてきていた。

「キヌ！　大丈夫か！」

すぐに駆け寄ると嬉しそうに尾を振っている。とにかく大丈夫そうで良かった。

キヌのステータスを確認すると、ヒーリングで回復したのかHPは510まで回復していた。

そして……レベルが30になっていることに気付く。

「キヌ、おまえ進化……」

『コンッ』

一鳴きするとゆっくりと目を閉じ、力を抜いた。するとキヌのがり出す。

（まさか、俺を心配させないように……ちゃんと確認して安心できるまで、進化の痛みを我慢してた……）

キヌの優しさが分かった途端、自分の不甲斐なさと、こんな俺を一番に考えてくれている嬉しさで、鼻の奧がツンッとした。

俺は、キヌを優しくでながら、涙をグッと堪えていた。

（ダメだ、絶対堪えろ！　キヌが目を開けたときに、安心させてあげられるように……）

が収まると、綺麗な金のがさらにしくなり、尾が5本に増えたキヌが目を開けていた。

……多分笑えていたと思う

……ちゃんと笑顔は作れていたはずだ。

キヌは立ち上がるとそっと俺に顔を近づけ、頬に伝った涙を拭ってくれた。

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