序列戦の初日、俺達【星覇】は朝から闘技場に來ていた。昨日の【レッドネイル】との騒で闘技場部を見るのを忘れていた為、試合開始よりかなり早く到著することにしたのだ。

周囲には人が溢れかえっており、観客席も満員となっている。さらに場チケットを購できなかった人のために、闘技場の外にも大型魔導による試合會場の映像と音聲が流れていた。

こんな魔導まで開発されているとは知らなかった。王都には凄い魔導師がいるようだ。

闘技場は出場者用フロアと観客用フロアに分かれており、出場者用のフロアへると、そこにいるのは屈強な冒険者達だ。

今回の出場クランは30クランあり、その中でも和裝を著ているのは俺たちくらいだ。見た目が亜人や獣人という事もあってかなり目立っており、出場者たちに威圧する視線を向けられていた。

まぁ俺達の一番後ろを歩いているドレイクがその都度（つど）睨み返し、その上を行く威圧をぶつけていたんだが……

【星覇】は今年新設であるため、現在の序列は一番下だ。當然シード権があるわけもなく、全行程で優勝までに5試合を行うことになる。

この視線も初戦が終われば変わってくるだろう。

出場者用のフロアを見終わる頃、運営委員會のマイクパフォーマンスが始まり、闘技場全が割れんばかりの歓聲に包まれた。

俺達は4試合目であるため、大會運営委員に促されて控室へとった。控室にも映像が映されており試合の様子が確認できる。

「ドレイク、準備できてるか？」

「うっす！　問題ないっすよ！　早くあいつ等を叩きのめしたいっす！」

「ドレイク、わたくしにし殘してくれても良いのですよ？」

「全員シンクねぇさんの分までキッチリとブチのめしとくっす！」

「……諦めるわ。その代わり二度と口が開けない程度には、殺（や）ってきなさい」

「了解っす！！」

話しているうちに第1試合は終わっていた。

チラッと試合を見ていたが、今の試合は全員レベルが低かった。正直人間だった時の俺の方がまだ強いほどだ。

第2、3試合も同様のレベルであり、試合観戦を楽しめるのはかなり先になりそうだ。

そして【星覇】の出番が回ってきて試合會場にると、観客席からの凄まじい野次（やじ）とブーイングの嵐が起こった。

やはり亜人や獣人というだけで、この街の住人は下に見ているようだ。まぁ、これくらい嫌われていた方が賭けのオッズは上がるから気にしないでおこう。

反対の場口からは【レッドネイル】のメンバーが場してくるが1人足りない。

よく見てみると最後に謝っていた冒険者が居ないようだ。ちょっと脅しすぎちゃったかな。

「兄貴、行ってくるっす！」

トントンと軽い足取りでドレイクがリングに上がると、対戦相手もリングに上がってきた。あれは最初に俺たちを笑った奴だな。

エントリーシートを見ると『グズーリオ』という名前らしい。

「おい、亜人！　てめぇらのせいでメンバーが1人クランから抜けちまったじゃねぇか！　どうしてくれるんだ！」

「あ？　そんなん知らねぇよ。お前らがアホ過ぎたから嫌になったんじゃねぇの？」

「クソ舐めた口をききやがって！　昨日は不意打ちで油斷してただけだ！　覚悟しとけよ！」

「不意打ちか……じゃあ1分だけ攻撃しないでやるよ。思う存分攻撃してきたらいい」

ドレイクが鼻で笑うと試合開始のゴングが鳴った。

挑発されたグズーリオは、ミスリルのロングソードをマジックバッグから取り出し、ドレイク目掛けて斬りかかるがドレイクは振り下ろされた剣を二本の指で摘（つま）んだ。

「おい、早く攻撃してこいよ」

「ぐぐぐぐっ！！」

グズーリオは思い切り力をれているが剣先はピクリともかない。

ドレイクが摘んでいた剣を離すと、グズーリオが後退する。

そしてまた斬りかかり、また剣を摘まれる。

1分間そんなことが數回続いた後、

「そろそろ1分経ったか？　じゃあ俺からも攻撃するぞ」

そう言って赤鬼の金棒をマジックバッグから取り出す。

次にグズーリオが斬りかかった後は結果が違っていた。

――パキィィン

グズーリオのミスリルロングソードに赤鬼の金棒を軽く當て、武を破壊した。

その後、グズーリオは5本の剣を取り出すが同じようにすべて破壊されている。

「なんなんだよ、お前らなんなんだよぉぉぉー！！」

プライドがズタズタにされたグズーリオは涙を流し、鼻水を垂らしながら素手で毆りかかっていくが、ドレイクはその拳を左手で摑み、そのまま握り潰した。

「ギャアァァァ！！　グボェ！」

んでいるグズーリオの腹に、気絶しない程度に加減したドレイクの膝蹴りがる。

その後、20発程度往復ビンタをされ顔がパンパンに膨れ上がり鼻をだしているが、グズーリオが何かを喋ろうとするとすかさずドレイクに顔を叩かれる。

ビンタでは試合が決定付けにくいためか審判にも止められない。

「お前ら、誰の事をバカにしたのか、分かってるのか？　対戦相手が俺で良かったな。兄貴やシンクねぇさんだったら、こんなモンじゃ済まねぇよ？」

観客席は既に靜まり返っている。

あまりの戦闘力の違いに全員が呆然としているようだ。

最後は四つ這いでリングの外に向かって地面を這いずっていくグズーリオの背中に、ドレイクが赤鬼の金棒を叩きつけると、聲にもならない聲を張り上げながらグズーリオは気絶し、先鋒戦の勝負が決定した。

第49話は明日の晝12時頃に投稿予定です！

※第47話で宿屋の名前が抜けてました！汗

修正済みです！！

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