翌日、俺達は晝頃に出場者控室へった。午前中は2回戦の賭けにベットしたくらいで、後は試合を観戦していた。

次の試合、俺たちの配當倍率は1.8倍。初戦でドレイクが圧倒的な強さを見せたものの、やはり亜人に賭けたくないという心理が働いたのか予想よりかなり高めだ。

俺は、當り前のように金貨5000枚を自分たちに賭けてきたのだが、係員がかなり引いていた。

今日の先鋒はネルフィーだ。シンクがやりたがるかと思ったんだが、変形巨斧（へんけいきょふ）の練習中であるという事で3回戦での先鋒を希した。

ネルフィーに関してはやる気が満ち溢（あふ）れており、無言ながらも闘志が漲（みなぎ）っているのが分かる。

「さて、そろそろかな？」

「私はいつでも戦えるぞ！」

「おう、期待してるよ」

係員に促され試合會場へとると、昨日の野次とは違い、観客は応援してくれる人もチラホラ見けられる。しかし、大多數は無言だ。

応援しているのは俺たちに賭けた奴らだろうな……

おい、儲けさせてやるからもっと腹から聲出せよ！

俺達が場し、暫（しばら）くすると対戦相手も5人が揃って會場にってきた。

【フォルテシモ】というクランであり、男1人に4人のパーティーだ。

エントリーの名前からすると、大將が男でルーカスというらしい。

相手の様子を窺ってみると、所謂（いわゆる）『ハーレムパーティー』というやつであり、ルーカスが4人のを囲っているのだろう……あからさまに4人のとベタベタしている。

ハーレムが悪いというわけではないんだ……

男なら一度は考えた事があるし、貴族ともなれば逆に普通だ。

しかし、ルーカスは顔が整っているのに、表が圧倒的にキモいのだ。

優越に浸り、周囲に自慢しているのが誰から見ても分かる。

まるで「お前ら、羨ましいだろ？」そんなセリフが聞こえてきそうな表だ。

ただ、なんだろう……凄く引っかかる。あの顔、誰かに似てるような……

ネルフィーは【フォルテシモ】の方と見ると顔を歪ませ、嫌悪を隠しきれていない。

そんな表のままネルフィーはリングへと向かっていくと、相手の先鋒もルーカスの頬に軽くキスをしてからリングに上がってきた。

先鋒の名前はオリヴィア、裝備を見る限りでは前衛職だ。

手にはレイピアを持っているため、おそらく手數で勝負してくるのだろう。

両者がリングの中央で睨み合う。

「へぇ、アンタんトコの大將も、かなりイケてるじゃないの。今晩、めてやろうかねぇ」

「男ばかり見ていると、一瞬で試合が終わるぞ？」

「舐めた口利いてくれるじゃないの？　私はそんなに弱くはないよ」

「楽しみにしている」

會話が終わると二人は中央から離れていく。

開始位置からし距離を離して立つと、オリヴィアはレイピアを構えた。

だが、ネルフィーは武すら持っていない。

そのまま試合開始のゴングが鳴り、ネルフィーが微かにくと、そのままクルっと後ろを向いて歩き出した。

へぇ……ネルフィーめちゃくちゃ強いじゃん。

會場で今の作が分かったのは何人居るだろうか。なくとも対戦したオリヴィアは何が起きたのか全く分からなかっただろう。

オリヴィアの額には1本の矢が刺さっており、すでに勝負はついた後だった。これ、決著最速タイムじゃねぇか？　俺計測だと0.9秒でオリヴィアの額に刺さったぞ。

審判が判定をするまでに7秒ほど困していたが……

対戦相手がこの程度のレベルとなると、それ以降もほぼ同様の試合展開だった。

次鋒戦は、相手が魔法を放とうとするが、その前にネルフィーの放った矢が額に刺さり終了。

中堅戦では相手も弓を裝備しており、狙いを定めた狀態でゴングが鳴ったが、放たれた矢をパラライズダガーで切り落とし、お返しにネルフィーが相手の額に矢をプレゼントして終わった。

副將戦の相手は大盾を裝備しており、弓での高速撃をかなり警戒していたものの、ネルフィーは相手の大盾を利用し視界から外れたところで【隠】を発した。

そして、敵の後方に回り込むとパラライズダガーで首筋を掻っ切って決著となった。

そして現在、最後に殘されたルーカスは會話で何とかしようと試みている。

「ねぇ、君強いね！　良かったら僕のクランに來ないか？　優遇するよ！　君を一番にする！」

「いや、遠慮しておく。私は今最高のクランに在籍しているのでな」

「そんな事言わずにさぁ」

ルーカスは何とか試合開始を引き延ばして弱點を探っているのだろう。

……あ！！　分かった！！　コイツを直ぐにでも毆りたいほどムカつく理由が！！

似ているんだ……『マーダス』に。

マーダス……ルーカス……名前の響きもし似ているが、もしかして縁者か？

≪ネルフィー、ちょっと頼みたいことがあるんだがいいか？≫

≪阿吽か？　どうした≫

≪いや、こいつに「マーダスは元気か？」って聞いてみてくれないか？≫

≪……わかった。そういうことか≫

念話を終えるとネルフィーの雰囲気がしらかくなったじがした。

そういうこともできるんだな。さすが諜報に長けているだけある。

「ねぇルーカス、マーダスは元気にやってる？」

「は？　あいつは3か月前に死んだだろ？」

「……そうなのか。王都をし離れていたから知らなかったんだが、何があった？」

「あのクソ野郎、この街の冒険者ギルドで、暴走して大量殺人をしやがったんだ！

一応『豪炎のブライド』がその場で斬り殺したからそれ以上の被害は出なかったが……おかげで俺の家の爵位が降格させられちまった！

全く、最後までクソみたいな事してくれやがったぜ」

「そうか。済まなかったな、嫌なこと思い出させて」

「君たち、話はそれくらいにしたまえ！　試合を始めますよ！」

審判に促され、両者は試合開始の位置に著いた。ルーカスに関しては渋々というじではあったが。

ルーカスはロングソードを持っており、前衛タイプのようだ。

試合開始のゴングが鳴るとルーカスからいた。

矢が當てにくいように左右にステップを踏みながら徐々にネルフィーに近付いている。

ネルフィーはパラライズダガーを取り出すと【フラワーポイズン】で痺れ毒を作し、パラライズダガーにエンチャントをする。これによりパラライズダガーの麻痺効果がさらに上乗せされた。

そのままネルフィーはルーカスの背後に高速で回り込み、3回ダガーを振った。

ルーカスも即座に振り返り一度は弾くものの、右腕と左の太ももに傷を負っている。

その直後からルーカスのきは悪くなっていき、ついには両手足にダガーをけ、両膝立ちの狀態になった。

最後は、泣きそうな表をしているルーカスの首にダガーを刺し込んで決著を付け、2回戦も【星覇】の圧倒的勝利という結果となった。

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