《最弱な僕は<壁抜けバグ>でり上がる ~壁をすり抜けたら、初回クリア報酬を無限回収できました!~【書籍化】》―36― 隠しボス
転移陣を踏んだ僕たちは気がついたら知らない部屋に飛ばされていた。
ボスのいる部屋と似たような構造をしている。やっぱりここが隠しボスのいるエリアなんだ。
「な、なんだありゃ……?」
誰かがそう口にする。
それは部屋の中央に鎮座していた。
まず、巨大な甲冑が目にる。その甲冑にを包んでいるのは、歯車と金屬が組み合わさった歪な構造をした機械仕掛けの人形だった。甲冑からは腕が10本以上生えており、その先端には剣や盾が取り付けられて、それぞれが意思を持っているかのようにバラバラにいていた。
様相からして、明らかに普通のモンスターじゃない。
「無人の駆騎士(リビングメイル)なんて聞いたことないモンスターだ……」
恐らく〈鑑定〉スキルを持っている冒険者がモンスターの名前を調べたのだろう。
「みんな気を引き締めなさい! 私たちはこのためにダンジョンを潛ったんでしょ! 知らないモンスターだって。まさに上等じゃない。倒せば豪華な報酬が貰えるのは確実なのよ!」
オーロイアが皆に活をれる。
すると他の冒険者は「よっしゃ」や「やってやろうじゃないか」とそれぞれが己に鼓舞し始めた。
さっきまで冒険者たちは皆一様にビビっていた。それなのに、一瞬で空気を変えてしまうなんて。オーロイアさんは僕とそんなに年齢が変わらないはずなのに、すごいなぁ、と思う。やはり貴族は僕たち庶民とは違うのかもしれない。
「アンリ、あなたは私の後ろに隠れていなさい」
「は、はい……!」
オーロイアさんが僕に指示を出す。
悔しいけど、今の僕では役に立たないだろう。最近やっと狼(コボルト)を倒せるようになったばかりで、巖の巨兵(ゴーレム)には傷一つつけることができなかった。
だから、無人の駆騎士(リビングメイル)なんて明らかに強いモンスターに僕の攻撃が効くはずがない。
ギジェルモのパーティーにいたときも、こんな風に後方で待機していた。あのときのように邪魔にならないよう隠れていよう。
「アンリ、心配なんてする必要はないからね。あのモンスターを倒して、必ずあなたを元の居場所に戻してあげるわ」
「あ、ありがとうございます」
背中越しにオーロイアさんがそう口にする。僕を安心させようってことなのかな。すごく優しい人だ。
それから僕を除いた冒険者たちと無人の駆騎士(リビングメイル)の戦いが始まった。
ただそれよりも、僕は他のことを気にしていた。
「どこが報酬エリアへと続く壁なんだ?」
いつもの癖なのか、四方の壁を観察してしまう。
ボスエリアには必ず二つ扉がある。一つはボスエリアにるための扉で、もう一方は報酬エリアへ続く扉だ。
だけど、この部屋にはそれらしきにものが見當たらない。
恐らく転移トラップでこの部屋で招かれたからだろうか。ボスを倒した場合も、転移陣で報酬エリアに行けるのかもしれない。
ならば、壁抜けしても意味はなさそう。
壁の向こう側に部屋があるとは限らない。下手に壁抜けしようとしたら、が壁に埋まるとかそもそも壁抜けが発しないなんてこともありえそうだ。どっちに転んでも僕は死ぬ。
と、余所見をしている場合じゃないか。
剣を持った冒険者たちは無人の駆騎士(リビングメイル)を囲むように八方から攻撃をしている。対して無人の駆騎士(リビングメイル)は複數の腕をかし、それぞれ相手をしている。
ふと、前に立っているオーロイアさんがぶつぶつと小聲でなにか喋っていることに気がつく。
それが魔法の発に必要な詠唱だと気がついたのは次の瞬間だった。
「〈巨大火球《エノルメ・ファイアボール》〉!!」
オーロイアさんの杖の先端から、無人の駆騎士(リビングメイル)の全を包むほどの巨大な火の球が放れた。
すごい……っ!
こんな魔法を使えるなんて。
「やったか……!」
業火に包まれる無人の駆騎士(リビングメイル)を見て、冒険者たちは安堵していた。
これだけ強力な攻撃をけたのだ。いくら隠しボスとはいえ助かるわけがない。
ゴロンッ。
と、足元になにが転がってきた。
自然な作で僕はそれを確認して――
「ひぐぅッ!」
甲高いび聲を上げてしまった。
「アンリ、どうし――」
僕のび聲を聞いたオーロイアさんが問いかけようとして、口を閉ざす。
なぜ僕がんだか、わかったからだ。
足元に転がってきたのは冒険者の生首だった。
「うがぁっ!」「がはっ!?」「お、おい! どうしたんだ!」
次々と他の冒険者たちもび聲をあげる。
中にはを流しながら倒れる者や、首を落とされる者たちがいた。
「な、なにが起きているの……?」
オーロイアさんは戸っていた。なにが起きているのか、見當もついていない様子だ。
そう、さっきから無人の駆騎士(リビングメイル)は業火に包まれたままで、特にきをみせていない。
なのに、なんでさっきから人が殺されていく……?
「影……?」
ふと、僕はそう口にしていた。
そう、さっきから影のような黒いなにかが部屋を縦橫無盡に駆け回りながら冒険者たちを殺し回っている。
無人の駆騎士(リビングメイル)をっていた本が中から飛び出してきた?
モンスターの中には第二形態を持つものもいる。だから、そうなんじゃないか思ったのだ。〈鑑定〉スキルがあれば、より詳しいことがわかるんだろうけど。
「危ない!」
僕はオーロイアさんを押し倒す。
すると、頭上を影が通り抜けていった。
影は巨大なカマのようなものを振り回しており、あれに斬られたら他の冒険者のように首が飛ぶに違いない。
「早くっ!」
僕は彼の手をひっぱり早く立つように急かす。
影は明らかにオーロイアさんを狙っている。
遅い……っ!
彼の立ち上がる作が遅すぎる。このままだと殺される。
「ちょ、ちょっと……っ!」
困するオーロイアさんをよそに、僕は彼を擔ぎ上げる。
そして――
「〈回避〉!!」
瞬間、のきが早くなり向かってきた影の攻撃を寸前でかわす。
僕の腕にはお姫様抱っこの狀態で抱えられているオーロイアさんの姿が。
誰かを抱えた狀態で〈回避〉を使ったのは初めてだけど、功してよかった。
「な、なによ、あれ……?」
初めて影の存在を認識したオーロイアさんがそう口にする。
今から、あれと戦うのか。
すでに僕たち以外の冒険者は全員死んでいるようだった。
勝てるわけがない……。
僕より強い冒険者たちを一瞬で葬ってきたモンスター相手に僕がどうこうできるわけがない。
でも――。
今までだって、何度も死ぬ思いしてきたじゃないか……。
人狼(ウェアウルフ)や巨大王蟻《ジャイアント・クイーン・アント》と戦ったとき。それにギジェルモのパーティーに所屬していたときも何度も危険な目にあった。
それでも僕は今までこうして生き延びることができた。
そう、僕にとって格上のモンスターと戦うのは珍しいことなんかじゃない。
「エレレート、僕に力を貸してくれ」
小聲で妹の名前を呼ぶ。
それだけで恐怖がいくらか和らいでいくようだった。
骸街SS
ーーこれは復習だ、手段を選ぶ理由は無い。ーー ○概要 "骸街SS(ムクロマチエスエス)"、略して"むくえす"は、歪められた近未來の日本を舞臺として、終わらない少年青年達の悲劇と戦いと成長、それの原動力である苦悩と決斷と復讐心、そしてその向こうにある虛構と現実、それら描かれた作者オリジナル世界観ダークファンタジーです。 ※小説としては処女作なので、もしも設定の矛盾や面白さの不足などを発見しても、どうか溫かい目で見てください。設定の矛盾やアドバイスなどがあれば、コメント欄で教えていただけると嬉しいです。 ※なろう・アルファポリスでも投稿しています! ○あらすじ それは日本から三権分立が廃止された2005年から150年後の話。政府や日本國軍に対する復讐を「生きる意味」と考える少年・隅川孤白や、人身売買サイトに売られていた記憶喪失の少年・松江織、スラム街に1人彷徨っていたステルス少女・谷川獨歌などの人生を中心としてストーリーが進んでいく、長編パラレルワールドダークファンタジー!
8 55引きこもりLv.999の國づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
毎日引きこもっていただけでLv.999になっていた―― ちょっと前まで引きこもりだったのに、王女様やら幼女やらが近寄ってきてハーレムも起きてしまう。 成り行きで勇者をぶっ飛ばし、代わりに魔王の娘、ロニンを助けることになった主人公・シュン。 みなが驚く。 引きこもっていたくせにこんなに強いなんてありえないと―― 魔王の娘と関わっていくうち、シュンはすこしずつ変わっていく。 ――平和な國を作るとか、そんなめんどくせえことやりたくねえ。 ――でも誰かがやらないと、またロニンが不幸な目に遭う。だったら、俺が…… いつまでも自分の世界にこもっていられない。 引きこもりによる國づくりである。 皇女セレスティアとの爭い、國王エルノスとの政治的駆け引きなど、さまざまな試練を乗り越えながら、シュンは自分の國を育てていく―― 全力で書いております。 読んで後悔はさせません。 ぜひお立ち寄りくださいませ。 *キャラクター人気投票を実施しております。よりよい作品にするため、ぜひご協力をお願い致します。リンクは目次と各話の一番下にございます。 *アルファポリスにも掲載しております。
8 122ただの世界最強の村人と雙子の弟子
とある村にある森に、世界最強の大英雄が村人として生活していた。 そこにある雙子の姉妹がやってきて弟子入りを志願する! 主人公は姉妹、大英雄です。 學生なので投稿ペースは一応20時を目安に毎日投稿する予定ですが確実ではありません。 本編は完結しました。 次回作は公開しているので、そちらも是非 誤字・誤用等があったらお知らせ下さい。 初心者なので訂正することが多くなります。 気軽に感想・アドバイスを頂けると有難いです。 Twitterもありますので、そちらでも感想等を受け付けてます @hi_rosyumi
8 189VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい
これは、剣道の個人戦の県大會で三連覇した猿渡 龍が、ある日の部活からの帰り道、偶々助けたラストックというゲーム會社の御曹司遠山速人に誘われて始めてみたVRMMOのゲーム『Together Partners Online』(通稱TPO)での生活を描いた物語である。 作者はこういったVR系の小説やネット等にある掲示板がどういうものかわかってないので、書き方を知りません。故に掲示板なしとなっておりますので、それを踏まえた上でお読みください。
8 140光と壁と
高校體育教師の小川恵子と、東大卒でありながら冴えない著物の仕立て屋として活動する結城裕康の戀愛、結婚生活を描く。著任した高校になじめず、ノイローゼとなった恵子は靜養のため、茨城県の結城市にやってくる。偶然行った展示會で、裕康と出會い、彼の経歴に感激してしまって強引に結婚し、、、。 自己犠牲者とそれを理解できない女性との衝突を読んでいただけたら幸いです。 老荘思想とか、仏法の影響も強いお話。 とりあえず長いだけが取り柄のお話ですが、読んでみてください。
8 172受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
受験を間近に控えた高3の正月。 過労により死んでしまった。 ところがある神様の手伝いがてら異世界に転生することに!? とある商人のもとに生まれ変わったライヤは受験生時代に培った勉強法と、粘り強さを武器に王國でも屈指の人物へと成長する。 前世からの夢であった教師となるという夢を葉えたライヤだったが、周りは貴族出身のエリートばかりで平民であるライヤは煙たがられる。 そんな中、學生時代に築いた唯一のつながり、王國第一王女アンに振り回される日々を送る。 貴族出身のエリートしかいないS級の教師に命じられ、その中に第3王女もいたのだが生徒には舐められるばかり。 平民で、特別な才能もないライヤに彼らの教師が務まるのか……!? 努力型主人公を書いて見たくて挑戦してみました! 前作の「戦力より戦略。」よりは文章も見やすく、內容も統一できているのかなと感じます。 是非今後の勵みにしたいのでブックマークや評価、感想もお願いします!
8 83