《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》55.勇者、理事長に會いに行く

翌日の放課後。

俺は地下ダンジョンのり口にいた。

「兄さん、どうしても、ついて行っちゃだめ……?」

ガイアスは不安げに俺を見上げる。

「駄目だ。敵は天使を使役してきた。今のお前じゃ荷が重い」

「そう……だよね。ボクがいちゃ、足手まといだよね……これから敵かも知れない、理事長に會いに行くんだから」

理事長は學園に、魔族を斡旋している疑いがある。

俺は真相を明らかにするため、理事長に直接會いに行こうとしていた。

「おまえを足手まといなんて、思ったことは一度もないさ。ただ相手は未知數だ。お前のに何かあったら大変だろ?」

俺は弟の頭をなでる。

「……それは、兄さんにも言えることじゃないか。何かあったらどうすんだよ?」

「え、なに心配してくれるの?」

「ち、ちが………………そうだよ」

珍しくガイアスが、反論しなかった。

「心配すんな。大丈夫、何事もなく帰ってくるから」

ガイアスは俺を見上げていう。

「いってらっしゃい」

「おう、いってきます」

ややあって。

「なあ學園長さんよ、理事長は本當に、地下ダンジョンにいるのか?」

俺の後ろを、學園長アリシアが歩いている。

「本當ですよ。理事長室は學園長(わたし)しか場所を知らされていません」

「ふーん……俺に場所を教えて良いの?」

「もちろん。あなたは特待生ですからね」

そのときだった。

「ブモォオオオオオオオオオオ!」

『ミノタウロス。頭が牛のSランクモンスターだな』

魔王の解説が終わると同時に、ミノタウロスは塊となって、その場に崩れ落ちた。

「素晴らしい……! 剎那の瞬間に剣を作り細切れにしたのですね! さすが勇者神さまです!」

「……あんた、今のき見えていたんだな」

「ええ、バッチリと! 勇者神の剣を生で見ることができて、激です!」

學園長は、俺が勇者(ユージーン)であることを知っているのだ。

「先進むか」

學園長に道案して貰い、ダンジョンを歩く。

この學園は魔王城の跡地ということもあり、出てくる敵は【まあまあ】だ。

ズバンッ!

しゅこんっ……!

ドガアアアアアアアアン!

「出てくる強敵をすべて瞬殺! さすが勇者神! 強すぎます!」

キラキラとした目を、學園長が向けてくる。

「え、こんなの強敵じゃないだろ?」

「まさか! この衰退した世界において、Sランクモンスターを倒せるものなどおりません。ただひとり、あなた様を除いて」

うっとりとした表で、アリシアが俺の後をついてくる。

「……おまえも、倒せるんじゃないか?」

「そんなまさか。あり得ません」

「でも、そうじゃなきゃ理事長室へいけないだろ?」

「普段【隠蔽】魔法を使い、敵から姿を消してこっそりと地下に潛っています」

俺はサクサクと進んでいく。

「ところでユリウス君。あなたに聞きたいことがあります」

俺は出てくる無數のSランクモンスター達を蹴散らす。

「あなたから見て、この世界……どう見えていますか?」

振り返ると、アリシアが真剣な表で俺を見やる。

「平和で良い世界じゃないか。人間達が魔王や魔族たちに怯えずに、穏やかに暮らせている」

「でもそれは、人間にとってはですよね? 滅ぼされた魔族たちにとって、果たしてこの世界は平和と言えるでしょうか?」

アリシアは、無機質な聲音で俺に問いかける。

「……さぁな。俺は人間だから、魔族の気持ちはよくわからん」

「いいえ、あなた様ならわかりますよね? 異端者の気持ちが」

學園長は俺のそばまでやってきて、真っ直ぐに見てくる。

「あなたは史上最強の魔王すら凌駕する超越者です。その強大な力故に、周囲から孤立していたことは、容易に想像できます」

まるで見てきたかのように、學園長が言う。

「平和のためににしているのに、守るべき人間達から恐れられ、憎くはありませんでしたか?」

「いいや、ぜーんぜん。全く気にならなかったね」

本心で、俺は彼に返す。

「……そう、ですか」

やや落膽したように、學園長が言う。

「無駄な時間を取らせてしまいました。まもなく理事長室です」

何もない壁の前にたどり著いた。

「この向こうに部屋があります。行くためにはこの特別な鍵を……」

俺は壁に向かって、普通に進む。

ドガァアアアアアアアン!

「え、鍵あるの?」

「この堅牢な壁を、ただ進むだけで壊すとは! さすがは勇者神!」

さっきと打って変わって、學園長はキラキラした目を向けてくる。

「で、あの扉の向こうが、理事長室なわけね?」

壁の向こうには、廊下が広がっている。

最奧に、鉄の扉があった。

「いくか」

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