転生勇者ユリウスが、王の策略によって、聖騎士に狙われることとなった。

數日後。

とある山中にて。

「くそっ！　なんて強さだ……桁外れだあの【騎士】！」

下級魔族オルカは、必死になって逃げていた。

「うわぁあああああん！　助けてぇええ！」

オルカの小脇には、人間のを抱えている。

村から食料として盜んだのだ。

しかし運の悪いことに、その村には【聖騎士】が逗留していたのである。

「ばかっ！　さわぐんじゃねえ！　見つかるだろうが！」

「いや、もう見つけている」

その瞬間……。

スパァアアアアアアアアン！

周囲にあった木々が、一斉になぎ倒されたのだ。

「なぁっ！？　なんだ今のは！？　斬撃か？」

オルカが見やる先には、ひとりの、黃金の騎士が立っていた。

若いだ。

「きれー……お日様みたい……」

騎士の鎧も、髪のも、剣も盾も。

すべてがしい、黃金のをしていた。

「その子を離せ」

「くっ！　來るなあぁあああああああ！」

オルカは口を大きく開き、高圧の水流を出した。

巨巖すら容易く切り裂く水流。

聖騎士は盾を構える。

バシュッ……！

「そんなばかなっ！？　びくともしないだとぉ！？」

「無駄だ、悪鬼よ。わが剣は【絶対切斷】の剣。そして盾は【絶対防】の盾。無雙の力を持つ私に、敗北の二文字はない」

金髪の騎士は、悠然とこちらに近づいてくる。

強者故の、余裕をじられ、オルカは恐怖した。

「近づくんじゃねえ！　この子供がどうなってもいいのかぁ！？」

「そんな子、どこにいるのだ？」

「なっ！？　い、いねえ！？　いつの間に！」

聖騎士の腕に、の子が抱かれていた。

「早すぎて見えなかった！　なんなんだよおまえは！？」

「私は【天導（てんどう）教會】の聖騎士【ヘンリエッタ】。悪鬼を討伐しにここへ來た」

ヘンリエッタはの子を下ろす。

「くっ……！　聞いたことがあるぞ……隠れ潛んでいる魔族を片端からぶっ殺してく殺人集団だってな！」

「世界平和のための必要な間引だ。魔なるものは悪。悪はいてはいけない。だから聖騎士が排除する」

「くだらん託を並べやがって！　死にやがれ！」

「いや、それは無理だ」

キンッ……と、ヘンリエッタが黃金の剣を鞘に仕舞う。

「ほへ？」

ばらっ……と、魔族のが、細切れになったのだ。

「ふぅ……脆い。なんて弱いんだ。……いや、私が強すぎるのか」

金髪の聖騎士は、ため息をつく。

「おばちゃんっ！　ありがとー！」

救い出したが、喜満面で聖騎士の腰にしがみつく。

ヘンリエッタは笑顔を保ったまま、こめかみをピクッ……とかした。

「む、無辜の民を守るのが騎士の【お姉さん】の勤めだ。禮など不要だ」

「わかった！　おばちゃん！」

むぐぐっ、とヘンリエッタは歯がみしながらも、しかし「相手は子供。２９はおばちゃんじゃない」と自分に言い聞かせる。

さておき。

聖騎士ヘンリエッタは、上層部からの依頼をけ、學園へと訪れた。

「ふむ、この學園に潛む悪魔の討伐か。容易い任務だ」

ヘンリエッタはを張り、學園を闊歩する。

「……なにあの綺麗なお姉さん」

「……鎧に書かれた星十字のマーク。あれ天道教會の聖騎士様よ」

學生達の注目を浴びながら、ヘンリエッタは長い金髪をさらっ……と手ですくう。

ほぅ……と學生達から、嘆の吐息がれた。

思わずにやけそうになるのを、必死に隠してヘンリエッタは進む。

「しかし上層部も無茶を言う。いくら私がエリートだからといって、學園に悪魔が居るという報だけを渡されても困るな」

ふぅ……とため息をつく。

「しかしない手がかりでも私ならばなんとかするという、最強の聖騎士たる私への信頼がじられる。……悪くないな」

そのときだった。

シュオンッ……！

突如として、目の前に誰かが出現したのだ。

「なっ！？　なんだ貴様ら！？」

ヘンリエッタは剣を抜き構える。

「え、誰？」

「あにうえ、どーしたです？」

「ちょっとミカエル！　兄さんにくっつくな！」

彼は息をのむ。

「白晝堂々と現れたな……この化け【ども】め！」

かつてない危機に、ヘンリエッタは直面していた。

「くそっ！　聞いてないぞ！　化けが３もいることなど！」

眼前の３人からは、それぞれ尋常ならざるプレッシャーをじる。

剣の達人たる彼だからこそ、見えるものがあるのだ。

特に黒髪の目つきの悪い年は、異常な強さをじる。

「ばけもの？　なにいってるですこの人？」

「さぁな。いこうぜ」

黒髪の年は、殘り２人を引き連れてヘンリエッタの前から立ち去ろうとする。

「最強の聖騎士たるこの私を無視するとは！　良い度だ！」

震えるに渇をれ、ヘンリエッタは斬りかかる。

「我が絶対切斷の寶剣！　けてみよ！」

神速の袈裟切りが、黒髪の年にぶつかる。

ぱきーん！

「へ！？」

黃金の剣が、半ばで折れたのだ。

「そ、そんな馬鹿な！？　絶対切斷の一撃をけて無傷だなんて！？」

「え、何かした？」

黒髪年は振り返り、とぼけた表で、ヘンリエッタを見やる。

ぞっ……！

まるで、巨大な猛獣を前にしたような、圧倒的なプレッシャーをじた。

「くっ……！　魔力放出による攻撃か！　だが、我が絶対防の盾と鎧があればそんなもの効かない！」

ぱりぃいいいいいいいん！

「へ……？」

ぽかん……とヘンリエッタは目を丸くする。

「わ、私の盾と……よ、鎧が……々に……？」

「あ、すまん。俺の魔力の鎧、攻撃を自で防するんだ」

先ほどの一撃を防いだカラクリはわかった。

だがなぜ盾と鎧は壊れたのか？

「え、魔力による自迎撃式って外出時に必須だよな？　無防備に歩いてりゃ暗殺されるの當たり前なんだし」

「修羅の國だった２０００年前の常識で語るなよ兄さん！」

ガクン……とヘンリエッタは膝をつく。

「なんて強さなんだ……桁がちがう……」

すると黒髪の年が、近づいてくる。

「くっ……！　殺せ！」

パサッ……と年が布を、ヘンリエッタにかけてくる。

「くっ！　敵の施しはけない！」

「え、だって今のアンタ、真っだぞ？」

そう、鎧だけでなく、アンダースーツすらも破けてしまっていたのだ。

「つ、つまり私は……す、素っでこんな、たくさんの學生の前でいたのか……？」

恥心で、顔が真っ赤になった。

「ひ、ひ、酷い辱めをけた……もうお嫁にいけないよぉ～……」

ぐすんぐすん、とヘンリエッタが泣き出す。

「大丈夫だって。あんた綺麗だし、引く手あまただろ？」

「えっ！？」

ヘンリエッタは目を丸くする。

「わ、私……人？」

「え、まあ普通に」

ボッ……とヘンリエッタの顔が真っ赤になる。

「……お」

「お？」

「覚えてろぉおおおおおおおお！」

最強の聖騎士はびながら、まるで三下のように走り去るのだった。

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