《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》101.勇者、夏の終わりに星を見る

転生ユリウスと弟によって、神々が討伐された、數日後。

學園長室に、來客があった。

「おやぁ? これは珍しいお客様だ。フェレス嬢……それに、ヒストリア嬢も」

學園長ルシフェルのまえに現れたのは、悪魔メフィスト・フェレス。

その後ろには、王ヒストリアが続く。

「ワタシに何か用ですか?」

「舊友に會うのに、理由がありますの? 久しいわね【サタン】」

ルシフェルはニコニコと張り付いた笑みを浮かべながら言う。

「サタン……懐かしい名前ですが、しかし今ワタシはルシフェルです。お間違いなきよう……」

「あらそう。で、ルシフェル。客人にお茶すら出さないのかしら?」

「あいかわらずフェレス嬢は人使いが荒いですねぇ」

ソファに、ふたりが相対する。

ヒストリアは部屋の隅に追いやられている。

「ねえルシフェル。あなたよね。反勇者神派の神々に、結界を提供したのは?」

ユリウスを閉じ込めた、究極の結界。

神ですら作るのが困難なほど、高度な式であった。

「初めて聞きましたねぇ。そんなことがあったとは! いやいや、ワタシはこの夏は大忙しでしてね、世間のことを何も知らないのですよ」

「ふーん……なんで忙しかったのかしら?」

「秋に行われる【対校戦】の準備があったのですよぉ」

「対校戦……ふーん、面白そうなこと企畫するのね。わたくしも一枚かませてもらえないかしら?」

「おぉ! あなたが協力してくださるのなら百人力だ! 是非ともお力をお貸しください」

お互い笑みを一切崩さないまま、ルシフェルとフェレスは握手をわす。

その様子を、ヒストリアは震えながら見ていた。

悪魔と契約したからこそ、フェレスとルシフェルの異常が、視認できる。

「……化けがふたり、手を組んだ……恐ろしいことになるわ……」

ヒストリアは逃げたくてしかたなかった。

けれど大悪魔(フェレス)に魂を握られている以上、逃れることはできない。

「もちろん、あなたにも働いて貰うわよ、下僕♡」

「は、はい……」

がくりとヒストリアはうつむく。

フェレスはクスクス笑いながら、窓の外を見やる。

夕立が、ざぁざぁと降っている。

「夏休み最終日だというのに、嫌な天気ねぇ」

「まあすぐにやむでしょう。やまない雨はないといいますしねぇ」

ルシフェルもまた窓の外を見やる。

「しかしまぁ……すぐ次の嵐がきますけどねぇ」

理事長は、口の端をつり上げて笑う。

窓ガラスに映っているのは、まさしく悪魔のような、邪悪な笑みだった。

★☆★

俺とガイアスが神々を倒してから、數日後。

今日は8月31日。

つまり、夏休み最終日だ。

休みの終わりと言うことで、同好會(サークル)メンバー達と天観測に來ていた。

「おー! 星空がやべーです! キラキラですげー! 星の海みたいですー!」

俺たちがいるのは、遙か上空だ。

遮蔽は一切なく、絶好の観測スポットだ。

「「はぁ……」」

子チームが、呆れたようにため息をつく。

「え、どうしたふたりとも?」

「いや……星見に行くっちゅーから、てっきり山の中でやるって思ってたんやけど……」

「まさか地面を重力魔法で持ち上げて、上空まで持ってくるなんてね」

裏庭に集まった俺たちは、魔法で上空へとやってきたのだ。

「さすがユリウスはん。こない上空まで大地持ってくるなんて」

「地面全然ゆれてないし、すごく繊細な重力作だよね。それに上空なのに寒くないし呼吸も普通にできる……空気の結界で調整してるのかな」

子チームが心する。

「ユリウスはんはすごいわ。桁外れやで」

「見ただけで解説できる、えりちゃんたちも、大概です?」

俺たちは夜空を見上げて、星々を眺めていた。

レジャーシートを広げ、そこに座っている。

星座の位置は2000年前とあまり変わっていないので、ひとつひとつ説明していく。

「ユリウスはんって、星まで詳しいんやな」

「回復の先生が星マニアでさ。々教えて貰ったんだよ」

「あにうえすごいです! 何でも知ってるです!」

膝上に座るミカエルが、俺に背中を預けていう。

「そんなことないよ。知らないことも多いさ」

「加減とか常識とかでしょ」

「「「あー……」」」

ガイアスが言うと、全員が苦笑する。

「そうか? ここ最近で隨分と、常識と加減をにつけたつもりだぜ?」

「「「…………」」」

「え、無言? なんで?」

ややあって。

「あにうえー……眠くなってきたぁー……」

ごしごし、とミカエルが目をこする。

「そろそろお開きかいな?」

「だね。明日から學校だし……ふぁああ……」

子チームも眠そうにしていた。

「ボクはもうし星観てこうかな」

「じゃ俺もし付き合うよ」

「そっか。うちら帰るわ」

「ミカちゃんはわたしが送ってくね」

エリーゼがミカエルを抱きかかえる。

「ほな、ふたりとも。またな」

「また明日學校で! バイバイ!」

転移魔法を使って、エリーゼ達が地上へと帰還する。

後には俺と、ガイアスの2人が殘された。

しばし俺たちは、まばゆく輝く星々を無言で観ていた。

ふいに、弟が口を開いた。

「ありがとう、兄さん」

「え、どうした急に?」

「兄さんのおかげで、今年の夏は……とっても楽しかった。あっという間だったよ」

楽しそうに笑いながら、ガイアスが言う。

「合宿したり、冒険者になったりで……今年の夏は……盛りだくさんだったよ」

「そっか。そりゃ良かった」

「去年の夏はもう苦痛でしょうがなかったよね。雨が多かったじゃない? だから退屈で…………あっ」

ガイアスが、しまった、みたいな顔になる。

「ごめんね……兄さん」

俺は今年の春、転生してきた。

去年の思い出は、存在しない。

「なにそんな顔してるんだよ。謝るなって」

弟の頭をなでながら……しかし心のどこかで、悔しかった。

やっぱり、共通の思い出がないってのは、ちょっとキツいものがあるな。

「ねえ兄さん」

ガイアスは俺の手を握る。

「これからいっぱい、思い出を作ってこうよ。この夏みたいにさ」

「ガイアス……」

「秋は山にピクニックにいこう。冬はスキーがしたいかな。春はお花見がしたいな」

ねえ、と弟が続ける。

「今まで思い出がないからって落ち込む必要ないよ。これからいくらでも、楽しい思い出、作れるってことじゃない?」

「そう……だな。おまえの言うとおりだ」

依然、俺と弟の間には、共有してきた時間に差がある。

俺の知らないこと、弟だけが知っていること、たくさんある。

けれど……だからなんだ。

これから積み重ねていけば良い。

「明日から學園か。2學期も兄さんの巻き起こす騒にまた振り回されるんだろうなぁ」

「それも良い思い出だろ?」

「兄さんが言うなよ、もうっ」

俺たちは並んで星を見上げる。

いつの間にか夜空は朝日に変わっていた。

「二學期もよろしくな、弟よ」

「これからもよろしくね、兄さん」

かくして、長いようで短かった、夏休みが終わったのだった。

【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】

この話で第7章終了。

次回から第8章に突、また新しい展開へと突します。

「面白い!」

「続きが気になる!」

「ガイアスもっともっとイチャイチャしろ!」

と思ったら、

下の【☆☆☆☆☆】から作品への応援おねがいいたします!

面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、素直にじた気持ちで全然かまいません!!!!!!!!

なにとぞ、よろしくお願いします!

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