《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》104.勇者、他校の生徒(化)と顔を合わせる

晝休み。

學園の理事長室に、俺とガイアスが呼び出された。

長い廊下を歩きながら、俺は弟に尋ねる。

「何で呼び出されたんだろうな?」

「兄さん……今日は他校の生徒との顔合わせだって言ってただろ?」

「おお、そうだったな。さすがわが弟。しっかりしてるぜ」

隣を歩く弟の頭をなでる。

前は嫌がったが、最近はおとなしくしている。

ただし人目があると絶対にらせてくれない。

貓みたいで可いなと思う。

「ところで、兄さん。対校戦の主將(キャプテン)、本當にボクでいいの?」

対校戦は、各學園の代表選手5名で行われる。

となると必然的に、チームをまとめる主將が必要となる。

「もちろん、ミカたちも納得してただろ? おまえが主將(キャプテン)でいいって」

「ボクは兄さんが適任だって言ったのに……」

「いや、俺はお前に任せたいんだ」

「なんで?」

「その方がお前のためになるって、思ったからな」

今回は、冒険者パーティのリーダーのときよりも、重大な責任を負うことになる。

その重圧は、確かに苦しいし辛い。

けれどガイアスが【もっと上】へいくためには、その程度のプレッシャーをはねのけるだけの、神的な強さが必要となって來る。

今回の大會は、いい機會だと思った。

ガイアスに、より大きく強く長してもらうためのな。

「學園の代表のキャプテンなんて……責任が重すぎて、ボクには無理だよ」

「大丈夫、おまえなら立派に主將、やれるさ。俺を信じろ」

弟の肩に手を置いて、ニッ、と笑いかける。

ガイアスは俺を見上げて、淡く微笑む。

「うん。信じるよ」

と、そのときだ。

「おーやおやおや! そこにいるのは、萬年ビリの【王立學園】の生徒さんたちじゃあないかい!」

俺たちに近づいてきたのは、背の高い學生だ。

黒い學生服をにまとっている。

長い銀髪を、さらさらとたなびかせている。

「王立學園って?」

「ボクらの通う學園のことだよ」

「ふーん、あいつだれ? うちの生徒じゃないよな?」

「そう。黒い制服は、【帝國學園】の生徒」

帝國學園の男子生徒は、俺の目の前までやって來る。

「おや? おやおやおやぁ? 黒髪の君は、カーライル家の忌み子、ユリウスくんじゃあないかなぁ?」

なんか久しぶりに聞いたな、そのフレーズ。

「どうして落ちこぼれの君がここに? 理事長室に向かってるんだい? あ、わかったよ! 劣等生過ぎて退學になったんだね!」

ガイアスの眉間に、青筋が浮かぶ。

俺はぽんぽん、と弟の頭をなでる。

すぐに怒気をおさめる。

「で、おまえ誰?」

「おやおや、この僕を知らないとは……さては君、もぐりかな?」

ふんっ、と小馬鹿にしたように鼻を鳴らしていう。

「僕は誇り高き帝國學園の特待生! 【アンチ】! 【アンチ=フォン=マデューカス】! だよ!」

銀髪の男子學生、アンチきざっぽいポーズで言う。

「マデューカス……? どっかで聞いたな」

「あははっ! 本の阿呆がいるよ! 現【皇帝】の名前を忘れるなんてね!」

そう言えばそうだったな。

「つまり君は……マデューカス皇帝の息子ってこと?」

「その通り! 皇族さ! ふふっ、今のうちにびを売っておいた方が得だよきみぃ~?」

アンチがニヤニヤと笑う。

「え、なんで?」

「なっ……!? ぼ、僕は皇帝の息子だぞ! 知り合いになったほうが得だぞ!」

「え、だからなんで?」

ギリッ……! とアンチが歯がみする。

「……ふんっ! まあいいさ。後で【子分にしてください】って泣きついても許可しないからね!」

不機嫌な表を浮かべて、アンチが先に理事長室へ向かう。

「兄さんのなにに対しても怖じしないところ、素直にすごいと思うよ」

やれやれ、とため息をつきながら、ガイアスが苦笑する。

「なんか微妙にディスってない?」

「まさか。ないない。褒めてる褒めてる」

「ま、しの弟から褒められてるっていうなら、悪くないかな」

「なっ! ば、ばかぁ~……へんなこというなよ……こんな人通りのあるところで……誰かに聞かれたら、恥ずかしいじゃないか……」

顔を赤らめて、うつむきもじもじとするガイアス。

「ほら、いくぞ。他の學園の生徒も待ってるぜきっと」

ややあって。

俺たちは理事長室の前までやってきた。

「失禮しまーす」

「うひぃいいいいいいいいいい!」

ドアを開けると、何かがゴロゴロと転がってきた。

「なんだ、さっきの皇子さまじゃねえか。なにしてんのおまえ?」

「ゆゆゆゆゆ、ユリウス! やばい! 今年の対校戦は……とんでもないことになってる!」

なにを言ってるんだろうか?

俺は普通に、理事長室へとる。

ソファセットが置いてある。

そこには、すでに2人の生徒が座っていた。

ゴォオオオオオオオオオオオオオ!

生徒2名からは、【そこそこ】の闘気(オーラ)と魔力が、吹き荒れていた。

「なっ!? どうして君は、このプレッシャーの中、平然としてるのだね!?」

アンチが驚愕の表を、俺に向ける。

「え、これくらい普通だろ? なあ、弟よ」

「そうだね。兄さんと比べたら、全然まだまだだ」

涼しい顔をして、俺は2人の前に座る。

「俺、ユリウス。こっちは王立學園の主將(キャプテン)のガイアス。よろしくな」

前の前には、それぞれ別のの制服を著た生徒がいる。

ひとりは、青い制服を著た男。

ひとりは、赤い制服を著た

「うむ! 初めましてだな!」

男のほうがまず、手をばしてきた。

ガシッ! と強く手を握ってくる。

「おれは【テンリュー・カズマ】! カズマで良いぞ!」

「俺、ユリウス。へえ、変わった名前だなあんた」

ぎゅうぅううううううううう!

バキッ! バキバキバキバキッ!

「うぎゃっぁああああ! 地面が! 割れてる! なんだ!? なにがおきてるんだぁ!?」

アンチが大げさにぶ。

「ふたりとも闘気(オーラ)を手に込めて、強烈な握力でにぎりあってるんだ。その余波でものが壊れてるんだよ」

「なんだいそれは!? 握手でものを壊すとか聞いたことないよ!」

ガイアスの説明を聞いて、アンチが驚愕する。

「うむ! なかなか練られた闘気だ! やるな! ユリウス!」

「あんたも結構やるな、カズマ」

ニッ、と俺たちは笑い合う。

「す、すごい……あのカズマってひと、手加減していたとは言え、兄さんの握力に対抗していた。なんなの……?」

カズマはガイアスを見て、聲を張る。

「君が王立の主將か! おれはテンリュー・カズマ! よろしく!」

「う、うん……さっき聞いたよ。よろしく」

ガイアスは手を引っ込めた。

まあ握手はさっき俺がしたからな。

「なあカズマ。ちょっと聞いて良いか?」

「うむ! なんだ!」

「おまえ、この世界の人間じゃないだろ?」

俺の問いかけに、ガイアス達が目をむく。

「なっ!? なにをわけわからないこと言ってるんだね君ぃ!」

「この世界の人間じゃないって……どういうこと?」

「え、文字通りこの世界じゃない、別の世界から來た人間ってことだ。そうだろ?」

カズマは「ふふっ……」とうれしそうに笑う。

「見事! 見事! よくぞ見破った! 素晴らしい眼力だなっ!」

堂々とを張って、カズマが言う。

「おれは【転生者】だ! 正確に言えば、別の世界からやってきた、【異世界転生者】という!」

そんな重要なことをこの場でもらすとは。

バレても問題ないと自信があるのか、あるいは、なにも考えてないのか。

「い、異世界!? そんなものが存在するのかね!?」

驚愕するアンチに、カズマが大きくうなずく。

「ああっ! おれたちは別の世界から、神々の手引きで力を與えられ、この世界にやってきた存在だ!」

「え、それ言っていいの?」

「駄目だな! 上からは言うなと言われている!」

ガイアスがずっこけた。

「じゃ、じゃあなんで明かしたの? ばかなの?」

「ユリウス君に見破られてしまったからな! 隠していても仕方ないだろう!」

にかっ、とカズマが夏の太のように明るく笑う。

「ユリウス君! おれは君のような強者との戦いを待ちんでいたんだ!」

ガシッ! と俺の肩をたたく。

すると、ずぉっ! と大量の魔力と闘気が、彼から吹き荒れた。

「うぎゃぁあああああああああ!」

またもアンチが、部屋の隅へとぶっ飛んでいく。

「ひぃいいい! じ、地面が溶けてるぅ!? 魔法もなにもつかってにないのに!?」

ガイアスは座っていられたが、苦しそうに顔を歪めていた。

「なんてプレッシャー……まるで炎のように……暑い……!」

「うむ! この中で涼やかな顔をしている! やはりユリウス君! 君は素晴らしいな! 最高だ!」

「そりゃどうも」

俺は手を、軽く払う。

パァンッ……!

カズマの放つ灼熱のプレッシャーを、振り払う。

「すごい……あのプレッシャーをはねのけた……さすが兄さん……」

満足げに、カズマがうなずく。

「君も、その弟君も素晴らしいな! 君たちみたいな強いヤツらと戦えるなら、チームメイト達もさぞ満足するだろう!」

「おまえ以外の4人も、まさか異世界転生者なのか?」

「おうとも! 全員が【神々から貰ったチート能力】持ちだ! 今年の優勝はおれたち【神聖皇國】がもらう!」

挑むように、カズマが言い放つ。

「そりゃ無理だ。勝つのは俺たちだ」

ニッと笑い合って、俺はカズマと拳を打ち付ける。

「で、そっちのも、人間じゃないだろ?」

俺は赤い制服をに纏った、子生徒に言う。

「なぜ……そう、お思い……ですか……?」

言葉を発した、それだけだった。

「……………………」

ドサッ……! とアンチが倒れた。

「に、兄さん! アンチが! アンチが死んでるよッ!」

ぶくぶく、とアンチが口から泡を吹いて死んでいた。

「【呪言(じゅごん)】か。古典的な呪いを使うんだな」

「よく……ご存じで……」

「まあ、【おまえら】みたいなのも倒すのが、俺の仕事だったからな……」

うふふ、とが微笑む。

「おまえ、名前は?」

「【ダンタリオン】……と……申します……」

「ふーん。ダンタリオンか。俺、ユリウス。よろしく」

俺は彼に手を差し出す。

にちゃぁ……と彼が笑う。

「ユリウス……様。おうわさは……かねがね」

俺たちは握手をわす。

ジュォッ……!

「!? 兄さん!? 腕が! 腕が溶けてるよッ!」

俺の右手がドロドロに溶ける。

だが瞬時に魔法で再生させた。

「そんなばかな!? 兄さんは常に障壁を纏っている……! 兄さんの防を突破して攻撃するなんて! どんだけ強力な毒を使ってるんだ!?」

「え、呪毒だろ? 【悪魔】の?」

「あ、悪魔だって!?」

今度はアンチのかわりに、ガイアスが驚愕の表を浮かべる。

「ダンタリオンって言えばソロモンの悪魔の1柱って、え、常識だよな?」

「知らないよ! だから兄さんの常識は常識じゃないんだよッ!」

くっ、くっ、くっ……とダンタリオンが笑う。

「素晴らしい……です。ユリウス……様。悪魔の……呪毒。れた瞬間……魂まで一瞬で……溶ける。生きてる……あなた様は……最高……です」

「そりゃどうも。でも挨拶のときくらいは、呪いを相手にかけるの、マナー違反じゃないか?」

「申し訳……ございません……」

「ま、気をつければ良いさ」

「うむ! そうだな!」

俺たち3人は、朗らかに笑う。

その様子をガイアスと、そして起き上がったアンチが……青い顔をしてみていた。

「どうなってるんだい!? 去年の対校戦は、普通の人間の學生同士の戦いだったのに!?」

「ほんとだよ! 今年はどうなってるの!? 化けに、異世界転生者に、悪魔が戦い合い合うなんて!」

よくわからないが、アンチとガイアスが、仲よさそうだった。

「さっそく友達が増えたな、弟よ」

「うむ! しい友だな!」

「男同士の……熱い友……良いですね」

「「化け同士で意気投合するなよ!」」

「「「化け? だれ?」」」

「「おまえらだよぉおおおおおおお!」」

かくして、

王立學園→ガイアス(人間)。

帝國學園→アンチ(人間)。

東部連邦→ダンタリオン(悪魔)。

神聖皇國→カズマ(異世界転生者)。

以上4校。

今回の対校戦に參加するメンバーの主將達が、集結したのだった。

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