《【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、學園で無自覚に無雙する〜》109.勇者、霊王に會いに行く

俺たちは霊郷という、霊たちの住まう場所へと向かった。

そこは、極黒大陸とよばれる、未踏破の土地の片隅にあった。

勇者時代に訪れたことがあったので、転移魔法で一発でこれた次第だ。

「ここです? なーんにもないです?」

俺たちがいるのは、深いジャングルのなか。

そこかしこから、の鳴き聲が聞こえる。

「おう、ここが霊郷のり口だ」

口って……苔むした跡にしか見えないよ、兄さん」

あちこちに、石像や折れた石の柱などが転がっている。

そのなかのひとつに、石の扉があった。

「このドアの向こうが、霊の住む世界につながってるんだよ」

「わーい! ぼくがあけるでーす!」

ミカエルが扉に手をのせようとする。

俺は一瞬で義弟の背後に回り、首っこを摑んで、下がる。

バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!

突如として、ミカエルが立っていた場所に、落雷があった。

「なっ!? なんですこれー!」

「どうやら結界が張られてるようだな。前來たときはなかったんだけどな」

「さらっと雷より早くかないでよ、もう……」

「けどどないするん? 結界なんて」

俺は普通に歩いて近づき、扉に手を置く。

雷が落ちてくるが拳で弾く。

扉は、ごごご、と音を立てながら開いた。

「よし、いくか」

「「「いやちょっと待ってよ!」」」

「え、どうした?」

「結界どないなっとんねん!?」

「素手で砕いた」

「落雷は!?」

「素手で砕いた」

はぁ、と全員が嘆息する。

霊の張った結界を壊すなんて、すごいよユリウス君!」

「あんがと。さて、いくか」

扉の向こうは、真っ暗な通路になっていた。

俺の後ろに、縦一列になって歩く。

「なんでこの隊列なんだ?」

「兄さんに先頭を歩いてもらえば、トラップとかあっても余裕でしょ」

「なんか炭鉱のカナリアみたいになってるなぁ」

その後もいくつものトラップが仕掛けられていたが、特に問題なく全部砕して進む。

「即死魔法に致死毒……トラップの殺意が高すぎてやばいなぁ」

「それ全部払いのけてるんだもん。やっぱり兄さんはすごい。先頭を歩かせて良かった」

ややあって、通路を抜ける。

「おー! ちょーきれーです! キラキラしてるです!」

そこは緑かな森のなかだった。

空中には七の粒子が舞っている。

草木も空気にも、高度の霊が含まれており、それが発しているのだろう。

「まずは王様のところに挨拶しにいくか」

「王様? そんなのいるの?」

俺たちは木々の間を抜けながら、直進する。

「おう。霊王って言ってな。文字通り霊たちをとりまとめる王様だよ」

「ふーん……」

ガイアスがとたんに、不機嫌になる。

霊王と兄さんは、どういう関係なの?」

「お、始まったで」「浮気調査です?」「ほんま獨占強いやっちゃなぁ」「束縛する系カノジョはうとまれるです?」

「昔ちょっとな。一緒に仕事してた仲だよ。ただの友達」

勇者時代に、霊王には力を借りたことがある、というだけだ。

「ふーん……ただの友達。向こうは友達以上って思ってるんじゃないの?」

「めんどくさいやな」「がいあすメス化に歯止め効かないです?」

「うるさいよおまえら!」

ぐいにぐに、とガイアスが義弟のほっぺを引っ張る。

ややあって。

森を抜けた先に、石造りの神殿があった。

中にる。

そこまで広くないので、すぐに王の謁見の間に到著した。

『よくぞ來たな、わが盟友よ』

玉座に座っていたのは、1羽のしい炎の鳥だった。

煌煌と照り付けるのは業火。

存在しているだけですべてを焼き盡くすほどの熱を放っている。

「おっす、霊王。元気?」

『うむ、そなたも壯健のようで何よりじゃ』

にこりと笑う霊王に、俺が近づく。

「に、兄さん……」

「ん? どうした?」

全員が、苦しそうに膝をついていた。

「よく……この中で立ってられるね。すごい、プレッシャー……これが、霊の王の魔力なのか……」

ガイアスとミカエルは、かろうじてしゃべれる余裕があった。

けどエリーゼたちはつらそうにしている。

『おお、これは申し訳ないことをした。しばし待たれよ』

その瞬間、霊王のが激しく燃えあがる。

炎はやがて、人の形となる。

熱波が収まると、そこにいたのは、紅玉の髪がしいだった。

「これで多ましになったと思うが、どうか?」

「大丈夫みたいだ。相変わらずおまえは綺麗だな」

2000年ぶりにあう霊王は、そのしさをいっさい損なっていなかった。

「…………」

ぎゅ~~~~っと、ガイアスが俺の二の腕をつねる。

「え、どうしたのおまえ?」

「べつに! ふんだ! 兄さんのバカ! 息するようにを口説くんだもん!」

弟が不機嫌な理由がわからない。

「またやで」「がいあす別確認するです? ついてるです?」「ついてるよ!」

弟たちを見て、霊王はクスクスと笑う。

「愉快な友を得たようじゃな。して、何用かの?」

「力を貸してほしいんだ」

俺は軽く事を説明する。

対校戦のこと、そして対戦相手に異世界転生者や悪魔がいることを告げる。

「なるほど、學生レベルの小競り合いではないのぅ」

「學生レベルの話だったときってないよね、兄さんが來てからは特に……」

ふむ、と霊王は考え込む。

「そなたには世話になったからの。あいわかった。力を貸そうじゃあないか」

「あんがとな。恩に著るよ」

「なぁに、そなたにけた恩に比べたら、ちっぽけなものよ」

霊王は快活に笑う。

「さすがユリウスはんや。霊王にまで一目置かれてるやなんて」

うんうん、と子チームが心したようにうなずく。

「さて、ではまずそなたちの素質を調べようかのぅ」

は立ち上がり、まずはエリーゼの元へ行く。

「ふむ……おぬしは霊に好かれる魔力を備えておるな。【師】の素質がある」

霊……師ですか?」

「うむ、通常魔法はで生した魔力を魔法へ変換する。しかし師は自分の魔力ではなく、霊を直接魔法へと変える。通常よりもない力で、大きな魔法が使えるうようになるじゃろう」

霊王は右手に魔力を溜める。

霊の魔力をし流す。さすればおぬしにめた力を開放できるが、どうする?」

「お願いします!」

エリーゼのおなかにれ、魔力を流す。

その瞬間、彼が七出す。

「大気中の霊たちも、おぬしを祝福しておる。新たなる師の完じゃ」

次に、霊王は、サクラの元へ行く。

「そなたはもっと特殊じゃ。霊……否、霊獣を飼っておるな。そなた、極東の民じゃな?」

「せや。けど霊獣……? 聞いたことあらへんわ」

「先祖代々け継いできた、守護霊のような獣じゃ。それも複數飼っておる。じゃが鍵がかかっておるでな」

「鍵……じゃあ、封印を解けば、扱えるようになるん?」

「かもしれぬ。じゃが封じるということは、危険があると言うことと同義。それでもやるか?」

「たのむわ」

霊王が、サクラの眉間に指を置く。

「くっ……! なんや……すごい力が……!」

で霊獣とやらが暴れているのだろう。

を食い破ろうとしたので、俺は肩に手を置く。

「落ち著け、な?」

俺が言うと、サクラので暴れていた霊獣が、大人しくなる。

「なんと、霊獣がそなたに恐れをなしておる! さすがじゃな」

「ぜぇ……! はぁ……! た、助かったで……すまんなユリウスはん」

「気にすんな。力の制は、ゆっくり覚えていこうな」

次に、霊王はミカエルの元へ行く。

「そなたは大天使じゃな」

「そーです。よくわかったです?」

「天使と霊は近しい存在じゃからな。どれ、しわらわの力を分け與えよう」

霊の王の手のひらに、炎の羽が一枚出現する。

それは火のとなって、義弟に降り注ぐ。

「おー! やる気みなぎるです!」

「練習すれば霊裝も可能となるじゃろう。さて……」

最後に、霊王がガイアスの前にやって來る。

「そなたにしてやれることは……何もない」

「なっ!? ど、どういうことだよっ!」

霊の加護を必要としない、ということだ」

はガイアスの雙剣を見やる。

「すでに強大な力を持っている。だがそなたはその力を完全にはれておらぬな」

「無雙剣のこと? ……確かに、ボクはセイバーを、使いこなしてない」

以前ガイアスが霊裝をつかったとき、2割程度しかできていなかった。

それはまだ、無雙の力をコントロールできてないという証拠だった。

「力を授けるのではなく、制の方法を伝授しよう。特に、炎の扱いはわらわは得意じゃ」

「よろしく、お願いします!」

バッ、とガイアスが霊王に頭を下げる。

「うんうん、長したなぁ、弟よ」

前は素直に頭を下げなかった。

結構かたくななやつだったからな。

「最後に、ユリウスよ。そなたに渡すものがある」

「え、何かあったっけ?」

霊王は両手を広げる。

そこに激しい炎が吹きあがると、やがて1つの【鍵】へと変化する。

「ものすごい魔力だ……霊王、これはなんですか?」

「そなたの兄が、転生する前に使っていた【武】。それをしまっている寶庫の鍵じゃ」

俺は鍵をけ取る。

「もしかして、【アレ】か?」

「うむ、アレじゃ。そなたが転生した後、わらわが回収しておいたのじゃ」

鍵をけ取り、ポケットにしまう。

「拾ってくれててありがとな。けど……使うタイミングなんてあるかね?」

「わからぬ。ただこれの持ち主はそなたじゃ。そなたに返すのが道理じゃ」

ガイアスが首をかしげる。

「アレって、なんなの?」

「ま、切り札みたいなものだ」

「勇者神の切り札って……そうとうやばいものでしょこれ……絶対使わないでよ!」

「おうよ。わかった。絶対使わないよ」

まあ使うときって、世界崩壊レベルでやばい事態が起きた時だけだし、つかわないにこしたことはない。

「兄さん、今、大事な部分省略しなかった?」

「え、なんのこと?」

こうして、俺たちは霊王のもとで、修行を行った。

霊郷での修行は1年に及んだ。

しかし外界との時間の流れがことなるため、ここでの1年は、外での1日だ。

修行の果もあって、俺たちはかなり、レベルアップしたのだった。

【※お知らせ】

新連載、始めました!

「え、テイマーは使えないってパーティから追放したよね?~実は世界唯一の【霊使い】だと判明した途端に手のひらを返されても遅い。霊の王様にめちゃくちゃ溺されながら、僕はマイペースに最強を目指すので」

【作品URL】

https://ncode.syosetu.com/n2047gk/

頑張って書いたので、よろしければぜひご覧ください!

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