《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》02

「ほんっとに痛い」

エインズは頭をさすりながら呟く。

エインズの試合後も殘っていた生徒の試合が続き、全てが終わった頃ダースが解散をかけ、皆帰路についた。

シルベ村はそれほど大きくはないが、エインズの家はダースのもとへ通う子どもたちと距離が離れており、基本的に帰りは一人なのである。

しかしその帰路でもエインズの頭の中は魔法のことでいっぱいである。

を習いに行けば、いつものどこかが痛くなる。それはエインズのやる気のなさが生んだ注意力緩慢によるところが大きいのだが。

そんな狀況においてエインズは生活魔法の一部を変化させた。

痛みを和らげたい、その一心で、水の生魔法から氷を生み出し、患部を冷やす。

エインズは、水魔法から氷生の理論を理解していない。イメージを知らぬ間に現化できた、いや、出來てしまったというところか。

しかし、火魔法や風魔法の分野における生活魔法はいまだに発展させることは出來ていない。

「ただいま」

こぶによる痛みによって、ぶっきらぼうな言い方になる。

「あらおかえり。今日は早かったのね」

母親のリナが夕飯の準備をしていた。

「うん。今日は試合だったから、いつもの鍛錬よりも早めに解散だった」

「そうなの。それならすぐに手を洗いなさい。もうすぐ夕飯にするから」

エインズは洗面所に向かわず、テーブルの方へそのまま向かう。

しかし向かいながら、水を生し、手元に張り付けながら、水流を作り洗い流す。風魔法で手を乾かして完了だ。

これは、単純な生活魔法であるが、繊細な魔力作によって応用したものである。

エインズが椅子に座って間もなく、玄関ドアが開き、矢筒を肩にかけ、弓を手に持った男がってくる。

軀はを殘した付きをしており、剣よりも森をき回り獲を様々な態勢から止める弓に富んでいた。

「おっ、エインズ。今日は長がびたんじゃないか? 朝よりも頭のてっぺんが高くなってる気がするぞ?」

ニヤニヤと笑いながら弓と矢筒を片付けるのが、エインズの父であるキルザ。

「そうでしょ? 急激な長過程にあるからって、ぼくとしても朝と夕だけでこんなにも背が高くなるのはやめてほしいんだよね」

「今日は頭にこぶを作ったんだな、っていう皮だろうが。それを分かっているのにまったくお前は」

キルザは笑みを浮かばせながらエインズの頭を小突く。

軽くであっても、出來てほやほやのこぶがあるエインズにとっては、

「いっったぁ!」

激痛である。

氷で応急的に痛みを和らげても、小突かれればその努力も吹き飛ぶほどの鈍痛が頭全を襲う。

「二人とも、なに馬鹿なことやっているの? あなたもすぐに手を洗って席について?」

リナが呆れながら、サラダと鶏料理をテーブルに置く。

「エインズのせいでリナに怒られたじゃないか」

「なんでぼくのせいなんだよ」

また二人が軽く言い合う。

そして今度はリナの鬼のような形相で怒られるのであった。

三人が席について食事を始める。

ダースのもとで習っていた剣について、キルザに聞かれてその日一日あったことを話す。といっても興味関心が魔法にしかないため、その時々にこういった魔法があればいいのに、などの想像の話ばかりである。

キルザも同様に今日一日の狩りの様子について話す。

最近は冬が近くなってきたこともあり、や魔の數が減ってきたとのことだ。単純に冬に備え始めたこともあるが、ガイリーン帝國の村々の強引な狩りによってその數を減らしているのも要因だろうとキルザは話す。

リナは相槌を打ったり、途中で気になったことを聞いたりしながら基本的に二人の話を聞いて楽しんでいるようだ。

食事が終わると、キルザが今日見つけてきた山の果を、リナが切り分けて三人で食べながらゆったりとした時間を過ごす。

當たり前のこの一日を過ごして、布団で寢て起きれば明日が訪れる。

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