《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》0.5
誰でもいい。誰でもいいから助けてしい、と憔悴しきった年が膝をついて祈っていた。年の腕の中には徐々に溫を失いつつある年よりもいがあった。
年は涙を流し切った後で、涙はすでに止まっており、頬には乾いた跡、目元は赤く腫れていた。
「だれか……。だれか、いもうとを」
枯らしつつある聲を必死に絞りだしながら年は救いを求める。
腕の中のの服は赤く染まっていた。地面の土はのであろう、赤黒く濁った泥をしている。
しかし誰も來ない。近くで爭いがあり、領地の騎士や魔法士たちが出払っているからである。
年の村は貧しく、ポーションなんかは村長の村で1本あるくらいだ。それも、使わずに長い間保管していたのだろう、中は変していて効果があるのかも怪しい代となっていた。
年はなんとなくだが、理解している。妹の傷やこの生死の境はそこらのポーションでは治らない。ハイポーションと呼ばれるものが必要だろうことを。
ポーションがほしい。
ないなら治癒魔法をかけてほしい。
出來ないなら治癒魔法を教えてしい。
どんなことでもいい。たとえ自分が犠牲になろうとも、それで妹が救えるのであれば。
そんな時、年の目の前を3人の男が通り過ぎる。2人に、恐らく男だろう。外見では判斷し辛いが聲でなんとなく男と思われた。
2人の方は、服裝からしてそれなりの分か裕福な生まれだろう。その佇まい、生気が凜としていた。
男の方は、分からない。
「どうか、どうか……。いもうとを助けて下さい!」
もう流れない涙を流しながら年は懇願した。
の一人が年と腕の中のを見やる。すぐに狀況を理解したのだろうか、を噛んで黙る。
「……ごめんね。今は、助けられない。でも! 向こうの爭いから戻ってきたら……」
戻ってきたら助けてあげられる。そう続けたかったのだろう。
ただし、それまでに命が殘っていれば。
「で、でしたら、ポーションを! 治癒魔法だけでも!」
年は膝を地面にらせて3人ににじり寄る。
「ポーションは、あるには、あるんだけど……」
「どうか、その1本を! ……半分! ひ、ひとくち分だけでも!」
「それは……」
「でしたら治癒魔法を!」
「……この傷からすると、かなり高度な治癒魔法じゃないと助けられない。それができるのはサンティア王國でも數人で、ここには……」
年は分かっている。何ももらえない。助けをここで得られているのであれば、それまでに既に助けてもらっている。
「ぼ、ぼくは? 僕が魔法をやってみるから! その魔法を教えて下さい!」
「わ、私には」
2人が苦悩の表を浮かべていると、橫から男が聲をかけてくる。
「君はその妹を助けたいの?」
「は、はい!」
「どうしても?」
「はい!」
そう聞くと、男は碧眼の左目と白く濁った右目で年をじっと見つめた後、口を開いた。
「2人は先に行ってて。ポーションはソフィアに任せるよ」
男は小さな革袋を取り出し、の1人に渡した。
「で、でもそれだと、向こうが」
「僕が行くまで持たせてよ」
「そんなの……」
「それができないとしても僕はこの年の相手をしてからじゃないとそちらには『行けない』。ソフィア、任せるよ?」
「承知しました」
そう言って、の1人がもう一方の腕をつかみ、離れていった。
改めて男が年に向き直る。
年も男を観察する。
中的な顔立ちに冷たい銀の髪が腰のあたりまでびている。黒いジャケット、パンツをに纏い、右腕は袖を通っていない。細部にまで裝飾されたジャケットの右肩には何のためか白手袋が留めてある。左腳は膝から先がなく、木の棒で作ったであろう簡素な義足がなされていた。
率直に言って、不気味だった。
その外見と獨特な雰囲気。まるで幽鬼。
「あなたは、魔法士なのですか?」
「いや、違う。魔法は得意だけど、魔法士じゃない」
「えっと……」
「魔法士じゃなくて、魔師をやっているよ」
年は聞き覚えのない言葉に困しながらも、助けてもらえるのであればなんでもいいとすぐに切り替える。
「それでポーションをくれるんですか? それとも治癒魔法を?」
「いや、ポーションはもう全部渡したし、持っていない。治癒魔法も使えるけど、この後爭いの中心に行くから魔力を殘しておきたい。だからその子には使えない」
「えっ? じゃあ、なにを……?」
「君は魔法の知識を求めたね? それも、自分を犠牲にしてでもその子を助けられるのなら、と懇願したね? 僕は知識を求める者に手を差しべるのがモットーでね」
心の底から、この得の知れない『まじゅつし』に謝した。
「お、教えてくれるんですか? 治癒魔法!」
「教えられるよ。でも、君には教えても意味がない」
「どういうこと?」
「魔法というのはね、に持っている魔力を作——魔力作することで、現実世界に姿形を顕現させることなんだよ」
男は手のひらに水の玉を出現させながら続ける。
「つまり、顕現させるにも作する魔力がなければ、形に現せられないんだ。そして、君の保有魔力総量は、かなりない。この水の玉ですら作れないほどだ」
男は表を変えずに、聲を変えずに「魔法のセンスがない。魔法士にも魔法使いにすらなれないほどだ」と言い放つ。
「それじゃあ、どうしたら! 僕はどうなったっていい! いもうとが助かるなら死んでもいい!」
「もちろん。誓(・)約(・)は守ろう。君には『魔法』のセンスが絶的なくらいにないようだ。ただ、『魔』を扱う素質はいくらかある。だから君に、魔の知識を授けよう」
「それでいもうとは助かる?」
「助けるのは君だ。ただ、助けられるほどの知識と力を與えることを約束しよう」
「ぜひ! いますぐに!」
「この狀況を見る限り、きっと君の妹は死に逝く運命なんだろうね。君はその運命を、その世界に干渉して歪ませることになる。そこには対価が必要だ」
「たいか……」
年は暗い表で呟く。
自分の命なのだろう、と年は考えつく。だが、それでも妹が救えるのならそれでいい。
「ちがうちがう。対価に君の命をもらおう! とか言わないよ。悪魔じゃないんだから」
男は「悪魔っぽいってよく言われるけど」と笑いながら否定する。
「それじゃなにを?」
「君がこれから扱う代は『魔法』ではなく『魔』だ。誓約を立ててもらう。魔法的センスを持ち合わせない君が立てる誓約はかなり厳しいものになるけど、やめるかい?」
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