《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》16
エインズの通っていない右袖から青白い半明な右手が現れる。
エインズは右肩に留めた白手袋を右手に嵌め、目の前にかざす。
「今日はこれで二度目だな」
風になびいていた右袖を見て、その場にいた騎士たちもコルベッリも盜賊も、エインズが隻腕であることは分かっていた。
だからこそその現象は不気味すぎた。義手でもない、見たこともない腕。魔法の詠唱でもない聞いたこともない言葉。魔法士であれば『略式詠唱』は使える。現にコルベッリも使用していた。
『限定解除』という言葉はこの場にいる誰もが聞いたことがなかった。ソフィアであっても、自稱魔師のコルベッリにおいてもだ。
「ま、『魔法を使用することは損』!」
コルベッリは頭がまだ整理されていないが、言葉を紡ぐ。彼が一番得意とする『魔法』。相手のきを制限することを目的とした魔法。エインズに既に看破されている魔法である。
「この狀況においてその魔法は意味がないよ。対策を打つ必要もない」
エインズの右腕がコルベッリの詠唱によって解除されることはない。
コルベッリの魔法の効果は「対象者の損得の助長」であるが、コルベッリ自が対象者の制限対象である行を把握していなければならない。
コルベッリは真に魔を知らない。エインズの右腕の正が何なのかも分からない。正直なところ、コルベッリ自エインズの右腕が彼の知る魔法の領域外のものであると経験則で理解していた。
拘束されないエインズ。
エインズは何も発さずに前に構えた右手で何かを握りつぶす。
直後、得を構えていた盜賊たちが一斉に鼻や口からを吹き出し、その場で絶命した。
殘るのはやっと息を落ち著かせたコルベッリのみ。
「な、なんだその魔法は。詠唱もなしにあいつらに何をしたんだ!」
「詠唱はいらない。魔法じゃないんだから」
「じゃあどうして一瞬で全員を殺せたんだ! 魔法じゃなければなんなんだ!」
閉じた右手を戻し、白手袋をいじりながら答えるエインズ。
「これが魔だよ。僕の扱う魔の一(・)つ(・)『奇跡の右腕』。手にれられるものにおいて、僕がんだものは全て手にる、という魔」
の池が広がっていき、あたりを抜ける風に鼻をつく鉄の匂いが広がる。
「今僕は彼らの心臓をんだ。ひとまとまりに右手で摑み、そして握りつぶした」
平然と、ごくごく當たり前のように話すエインズ。
風になびく冷たい銀髪も相まって、コルベッリのじる寒気は計り知れないものとなった。
「……ば、ばけもの」
ふらつきながら後退していき、小さな石に躓いてをつく。手を使ってけすることもなくをついたため、ドスッと鈍い音がした。
「これが魔だよ。願いやを自然界の摂理からしたところまで昇華させ、世界に干渉する『』を持つ者を魔師と言うんだよ、——賢い魔法士くん?」
エインズはゆっくりとコルベッリに近づいていく。
「や、やめろ……、くるな!」
完全に腰を抜かしたコルベッリは立ち上がることも出來ずに後ずさりし、追い払うかのように激しく腕を振る。
周りの人間は、これまで傲慢な態度しか見せていないコルベッリの恐れ様を呆けたまま眺めていた。
しかし一つ言えることは、エインズのあの得の知れない右腕が自分に向かって翳されていないことだけを謝していた。
「っ! 待ってエインズ。コルベッリは殺さないで!」
「コルベッリ? ……ああ、君コルベッリって言うんだ」
コルベッリのすぐ目の前まで來ていたエインズのきを止めたのはライカである。
「そいつは『次代の明星』という魔法結社の一員だから厳しい尋問にかけないといけないの」
「なるほど。だけど、それがどうしたの? 曲がりなりにも彼は魔師を名乗ったんだ。名乗った上での決闘だ。その結末は一つしかないでしょ」
エインズはライカの言葉に一度きを止めたが、目を見開き涙と間からを垂れ流しているコルベッリの頭に今一度右手を置く。
「ゆるして……」
コルベッリが見つめるエインズの青い瞳と白い瞳に殺意のはなく、怒りのもなく、ただ目の前のコルベッリを映すだけだった。
エインズは恐らく止まらない。
コルベッリは『次代の明星』の一員だ。これまでまともにこの結社の人間を捕らえることが出來なかった。彼らはサンティア王國に甚大な被害を負わせている大罪人の集団だ。捕らえることはブランディ家の大きな功績となり、ひいてはライカ自の功績にもつながる。
その機會を恐らく目の前で潰されてしまうのだろう、と肩を落として半ば諦めた気持ちでライカはエインズとコルベッリを見た。
「お待ちくださいエインズ様」
そこで再度エインズのきを止めたのはソフィアである。
彼は顔を伏せながら口を開いた。
「どうしたのソフィア? これは魔師の問題だよ?」
「エインズ様、これから私達は王都キルクに向かいます。この男は大罪人の一人なのです。ここにいらっしゃるライカ様はブランディ侯爵のお嬢様です。ここはその男を手土産にしてはどうかと愚考致します」
ソフィアはライカに目配せをしながら続けた。
「エインズ様の王都キルクへの目的は魔學院での魔の探求。魔學院への融通もきっと利かせて下さるでしょう」
ソフィアの意図を理解したライカ。
これはソフィアに対し貸しを一つ作ってしまうが、それ以上の功績が手にると瞬時に判斷するライカ。
「ええ。この男が手土産ならば、王家への口添えもしてあげられるわよ?」
コルベッリの捕縛によって謁見の場が設けられるのは間違いない。その場においてエインズを紹介することも可能だとライカは言っているのだ。
「……なるほど。どうせこの場で消える命だ。それで僕の役に立つのなら、そのほうがいいかな」
エインズはし考えると、コルベッリの頭の上に載せていた右手を引っ込める。
「ありがとうソフィア。良いことを教えてくれた。それじゃこの魔法士はライカに任せよう。略式詠唱
『則事項。——、眠れ。僕がいいと言うまで起きることをずる』」
エインズの詠唱とともにコルベッリは眠りについた。
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