《【書籍化!】【最強ギフトで領地経営スローライフ】ハズレギフトと実家追放されましたが、『見るだけでどんな魔法でもコピー』できるので辺境開拓していたら…伝説の村が出來ていた~うちの村人、剣聖より強くね?~》第1話 ギフト【源魔法】を授かった年、追放される
「メルキス様の才能(ギフト)は――【源魔法】です」
鑑定士さんの言葉に、室の空気が凍りついた。
「【源魔法】、だと? なんだそれは? メルキス、聞いたことがあるか?」
「いえ、僕も初めて聞きました」
父上の疑問に、僕はそう答えるしかなかった。
――この世界では、15歳になると才能(ギフト)を使えるようになる。
15歳の誕生日を迎えた僕は、今後の人生を大きく左右する才能(ギフト)を授かることになっていた。
今は授かったギフトを、鑑定士さんに鑑定してもらっている最中である。
「鑑定士さん、【源魔法】とはどのようなギフトなのですか?」
「存じませんな。全く聞いたことのないギフトでございます」
鑑定士さんまでもが首を橫に振った。
僕の生まれたロードベルグ伯爵家は、騎士の名家である。
父上の期待に応え最強の戦闘ギフト【剣聖】を授かるために、僕はこれまで厳しい修行に耐えてきた。
それなのに聞こえてきたギフト名は、聞いたこともないもの。
「メルキス、才能(ギフト)を使ってみろ」
「はい、父上」
僕はスキルの発を念じた。すると、
『【源魔法】
全ての魔法の源。見たことのある全ての魔法の効果を再現して自由に扱うことができる』
というメッセージが頭に響いた。
――聞いたことがある。
遙か昔、魔法は1種類しかなかったという。しかし、あまりに扱いが難しく、使える者もほとんどいなかった。それを、パワーダウンする代わりに誰でも扱えるよう改造し、種類を増やしていったのが今の魔法なのだという。
これはきっと、凄く強い才能(ギフト)に違いない。
「父上、【源魔法】は、見た魔法を全て完全な狀態にしてコピーすることができる才能(ギフト)だそうです。きっとこれは、使いこなせば強力な才能(ギフト)ですよ!」
僕は興を抑えきれず父上に報告する。
――しかし。
「ハズレ才能(ギフト)だな」
父上は舌打ちして、そう切り捨てた。
「で、ですが見たすべての魔法をコピーできるというのは強力で……」
「黙れ! 俺が【剣聖】の才能(ギフト)を授かれといったのを忘れたか! 我が一族は剣を磨き続けてきた! 剣に関わる才能(ギフト)以外は不要だ! そんなことも分からんのか!」
父上が思い切り拳を振りかぶって、僕の顔を毆り飛ばした。
僕はたまらず床に倒れ込む。毆られたダメージより、優しかった父上の変わりようが衝撃だった。
「さ、さて次にカストル様の鑑定に移らせていただきたいのですが、よろしいですかな?」
気まずそうに鑑定士さんがそう言った。
目線は僕の後ろに立つカストル──僕の弟に向けられていた。
「そうだカストル、お前がいる! メルキスがハズレ才能(ギフト)を引いた以上、お前だけが頼りだ」
「分かりました」
父上の期待とともに、カストルが鑑定士さんの前に立った。
「……鑑定結果、出ました! カストル様のギフトは【剣聖】でございます!」
「でかした! よくやったぞ、カストルよ! お前こそがロードベルグ伯爵家の跡継ぎに相応しい!」
「へ?」
思わず聞き返してしまったのは僕だけではない。
言われたカストルすら、驚いた表で父上を見返してた。
この家でカストルの評判は、お世辭にも良いものではなかった。カストルは訓練から逃げ出して、最近はずっと遊び歩いている。
父上はそんな弟のことを見捨てていたのか、最近では居ないものとして扱っていた。それなのに、いきなり跡継ぎだなんて──?
父上からの言葉にカストルは驚き口をパクパクさせていたが、
「へへへ……! 俺がメルキス兄貴よりも上。俺はメルキス兄貴を超えたんだ……!」
そう言うカストルの目は、これまで見たことないほどギラついていた。
「早速【剣聖】の才能(ギフト)を試させて貰うぜ。構えろよ、メルキス兄貴」
カストルが腰の剣を抜く。剣聖のギフトを発し、剣を黃金のオーラが包む。
「喰らえ!」
そんな言葉とともに、カストルが斬りかかってきた!
僕は反的に剣を抜いてけたが、衝撃を殺しきれない。思いっきり、壁に叩きつけられた。
衝撃で僕は激しく咳き込む。大事に使っていた剣も折れてしまった。
「すげぇ、これが【剣聖】の威力か! これまで一度も勝てなかったメルキス兄貴が、ゴミみたいだぜ!」
カストルが、興した聲を上げながら剣を振り回している。
だめだ、今のカストルは力に溺れている。僕が兄として止めてあげなくては……!
「素晴らしい! 素晴らしいぞカストル!」
父上が喜満面でカストルを抱きしめた。
「父上、カストルは力におぼれています。このままでは──」
「黙れ、このハズレギフト持ちが! 【剣聖】を授かったカストルに比べておまえは──よくもロードベルグ伯爵家の名に泥を塗りよって!」
ゴミでも見るような蔑みの目線が向けられた。
父上が本気で僕を蹴り飛ばす。
こうもギフト1つで扱いが変わるなんて……。
あんなにやさしかった父上が、僕がハズレギフトを授かった途端に、ここまで冷たくなるなんて。
「お前のようなゴミは出ていけ! どこぞの路地裏で野垂れ死んでしまえ!」
父上は倒れた僕を踏みつける。
ダメージと神的ショックでに力がらない。もはや立ち上がることすら難しいほどだ。
「ふん、クズめ。セバス、そのゴミを外に捨てて來い」
「お言葉ですが父上。仮にもロードベルグ伯爵家だったメルキス兄貴が乞いでもしたら、更に家の名前に傷がつくことになりますよ?」
「……確かにな。そうだ、東のド田舎に、領主代理に任せきりにしていた小さな領地があった。メルキス、そこをくれてやるから、せいぜいそこで領主の真似事でもして、おとなしく暮らしていろ。二度と顔を見せるな!」
父上が何を言っているのか、理解できなかった。
あんなにやさしくて聡明だった父上が、僕を追放する?
訳も分からぬまま、僕は伯爵家を追い出された。
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